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ローマ時代の英国(Roman Britain)~英国切手の魅力シリーズ60~


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 2020年6月29日に古代ローマ帝国が2,000年前に英国に侵攻した時代に造られた建造物や芸術的な作品8点を掲げた記念切手が発行された。

切手シート上段、左上から右へ順に

1、額面;2nd、ドーバー灯台

 ドーバー城の敷地内にある聖マリア教会に隣接するローマ侵攻時に建造されたドーバー灯台は、高さ約24m。英国で現存するローマ時代に建造された中で一番高い建物である。おそらくエジプトのアレクサンドリアにあったファロス灯台をモデルにしている。

2、額面;2nd、ビッグナー・モザイク

 ウエスト・サセックス州のビッグナーにあるローマ時代の別荘には、ローマ時代から保存されてきたモザイクがいくつかある。ヴィラの北側にある後陣の部屋に置かれていた切手に描かれている女神ヴィーナスのモザイクは、1811年に発見された。おそらく西暦4世紀初頭に作成されたもの。

3、額面;1st、カーリーアン円形劇場

 ウェールズ南東部、ニューポート市北部カーリーアンにある円形劇場は、英国に残るローマ時代からの完成度の高い構築物。西暦80年頃に建てられた。

4、額面;1st、リブチェスター・ヘルメット

1796年にランカシャーのリブチェスターで発見されたヘルメットは、美しい原形を留めている。このヘルメットはローマ人騎兵隊のスポーツ・イベントで着用された。大英博物館に展示されている。 

切手シート下段、左上から右へ順に

5、額面;£1.63、ブリッジネス距離測定用スラブ

 アントニヌス城壁の東端ブリッジネスに残る距離測定用のスラブ(一枚岩)には、ローマ第2軍団アウグスタにより建設された建物間の距離が記録されている。このスラブはエジンバラのスコットランド国立博物館に展示されている。
 アントニヌスの長城は、スコットランドの中央部に残る石と土で作られた古代ローマ時代の防塁。 2008年に「ローマ帝国の国境線」に含まれる形で世界遺産に登録された。 この城壁は西暦138年にアントニヌスピウスによって構築され、フォース湾からクライド湾まで続いていた。

6、額面;£1.63、ケンブリッジシャーで発見された「戦士の神」の銅合金小像

 ヘルメットを被り馬に跨って、おそらく手に槍を持っていたであろうローマ人の軍神像。大英博物館蔵。

7、額面;£1.68、パースの古代ローマ浴場の壁面を飾っていたゴルゴン・ヘッドの彫刻

 パースのスリス・ミネルヴァ寺院の神聖な温泉の破風に彫られていたゴルゴン(ギリシャ神話に出てくる怪物)の頭髪像

8、額面;£1.68、ハドリアヌスの長城

 紀元80年に、当時はまだヨーロッパの辺境の島国でしかなかったイギリスにもローマ軍が上陸し、ブリテン島を南端から徐々にローマ帝国領として掌握していった。古代ローマ帝国最大の版図を実現したのは、第13代皇帝トラヤヌス帝。その後を継いだ第14代皇帝ハドリアヌス帝は、さらなる領土拡大政策をとるよりは広大化した帝国の領土保全と安定に力を注ぐことにした。こうした目的で、紀元122年に古代ローマ帝国の北限の国境としてイギリス本島ブリテン島西端Bowness-on-Solwayから東端のWallsendまで東西130キロに及ぶ城壁が築かれた。これがハドリアヌスの長城と呼ばれている。建設当時は、幅3メートル、高さ5〜6メートルの石積みの城壁が小高い丘の稜線に築かれ、中国の万里の長城同様、北方民族の侵入を防ぐ役割を担っていた。

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 ハドリアヌスの長城はイギリス最大の古代ローマ遺跡であり、世界遺産にも登録されている。内陸部の田舎では、小高い丘の上を蛇行しながら伸びる長城の遺跡が広々とした緑の景色の中に視界の彼方まで続いている。都市部に残されている長城の遺跡は、ごく一部になっている。








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