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英国の花~英国切手の魅力シリーズ81~



 2023年3月23日に発行された英国の花10種の記念切手は、花の図柄よりも、左上隅のシルエットが注目を集めた。1968年以来永年にわたって親しまれてきたエリザベス女王が姿を消し、チャールズ新国王のシルエットをあしらった第1号となったからである。

 国際条約により切手には国名を表記することとなっているが、英国には国王のシルエットを以て国名に替えることが認められている。

 新しい国王チャールズ 3 世のシルエットの作成は、ロイヤル・メールのデザインおよび編集責任者であるイラストレーターのアンドリュー・デビッドソン氏、マーカス・ジェームス氏およびデザイン会社アトリエのイアン・チルバース氏の共同作業によって行われた。

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 デザイナーのチャリ・スミス氏がデザインした英国の代表的な花10種の記念切手(額面はすべて1st)は、上段左から、スイートピー、アイリス、ユリ、ヒマワリ、フクシアが描かれ、下段には左側からチューリップ、牡丹、キンレンカ、バラ、ダリアが描かれている。

 ロイヤル・メールの広報担当ディレクター、デビッド・ゴールド氏は「英国は庭師の国であり、花への愛情は私たちの集合意識の奥深くに浸透しています。チャールズ新国王は情熱的な庭師としても知られており、国王のシルエットをフィーチャーした初の記念切手が英国の庭園で最も人気のある花のいくつかで祝うものとなったことを嬉しく思う」と述べている。

 ロイヤル・メールは、切手の10個の花はそれぞれ「英国人にとって長い付き合いの親しみやすさが染み込んでいる」としているが、原種の多くは世界中から英国に持ち込まれたものである。華麗なバラにしても、チベット周辺に自生していた野生の花が英国に渡り、交配によって改良に改良を重ねて洗練されてきたものである。

 英国の国花は赤いバラであるが、これは歴史上有名な戦いであった「バラ戦争」に由来する。15世紀に白バラをシンボルとするヨーク家と赤バラをシンボルとするランカスター家が王位継承をめぐって激しい戦いを繰り広げた結果、ランカスター家が勝利したので、この赤いバラが国花になったと言われている。英国にとってバラの花は激しい争いを経て国が一つに纏まったことの象徴と解釈できる。

 数ある植物の中でも、英国人のバラへの愛着は深く、ロンドンで最大規模と言われるクイーン・メアリー・ローズ・ガーデンやサリー州にあるハンプトン・コート宮殿のローズ・ガーデンなど、シーズンには色とりどりのバラを楽しめる庭園がたくさんある。

 しかしながら、他の9種が英国の代表的な花として選ばれた根拠は定かではない。筆者には違和感のあるヒマワリ、フクシア、キンッレンカなどが入っており、ロンドンのどこにでも見られる水仙(Daffodils)、ブルーベル(Blue bells)、スノー・ドロップ(Snow Drop)などが入っていないのは何故か、理由は分からない。







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