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ラグビー・ワールドカップ 2015 ~英国切手の魅力シリーズ(1)~



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本年9月に発行された"Rugby World Cup 2015"(W杯)のイングランド開催記念切手は白黒写真8種で構成されている。カラーではなく、あえて白黒で断定的に表現する手法は昨今では珍しい。

図案は通常は観られない角度から写したタックル、スクラムやゴールキックといった典型的なラグビー技を浮彫りにしている。特定のチームや選手、競技場ではなく、無名の群像イメージで表現、背景を明るく近くを濃く描いて躍動感を醸し出す工夫も凝らされている。

切手左上の"1st"は封書の第1種(国内翌日配達、現在63ペンス、約117円)、"2nd"は第2種(国内3営業日内配達、現在54ペンス、約100円)である。毎年変更される郵便料金に対応すべく、英国では1989年にこの無額面切手が初めて発行された。無額面切手にも有効期限は定めれれていない。

8回となった今年のW杯ではニュージーランドが前回2011年に続いての連覇で終わり、開催地のイングランドは準々決勝にも進めなかった。日本は予選で3勝しながら本戦に進めなかったものの、前々回優勝の南アを破る快挙を遂げたのは記憶に新しい。

ラグビーのW杯は1987年にニュージーランドで開催されたのが最初で、第2回の1991年は欧州5か国で開催、その後4年ごとに南ア、オーストラリア、フランスなどの持ち回りとなった。今回のW杯は、総観客数222万人、世界40億人が試合を視聴し、その経済効果は最大で22億ポンド(約4,000億円)と試算されている。次回の2019年は日本での開催が決まっている。

筆者は第2回大会で宿沢監督率いる全日本とアイルランドとの予選マッチを北アイルランドンドのベルファスト・キングストン球場で宿沢監督と並んで観戦した。ラグビーではゲームの指揮はキャプテンに任せて、監督は観客席から選手交代といった重要な指示を出すだけという慣例をその時に知った。全日本はこの試合では完敗したが、その直後の対ジンバウエ戦でW杯初の一勝を挙げた。

ラグビーの歴史は比較的新しく「1823年にこのグラウンドでウイリアム・ウエッブ・エリスが開発したラグビーが誕生しました」と刻した銘板がイングランド中部に位するラグビー校の校庭に掲げられている(下掲)。ラグビー校はイートン校などと並ぶパブリック・スクールの名門である。筆者は30年ほど前にこの碑を見るためだけにロンドンから北へ2時間ほどのドライブでラグビー市を訪れた。この銘板の前には当時16歳であったエリス少年がボールを抱えて走っている銅像も建てられている。

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世紀から英国で普及していたフットボールには確たるルールはなかった。試合ごとにルールを話し合いで決めていたところ、ボールを蹴るだけではなく,持って走って争奪戦を行なうと面白いというエリス少年の発想が採り入れられて1823年に新しいルールが定められた。これがラグビーの起源と言い伝えられている。エリス少年の故事が実話かどうかは分からないものの、ラグビーがこの地で始まったことは間違いない。

エリス少年はラグビー校からオクスフォード大学を卒業し、フランスで宣教師になった。このエピソードが広く喧伝されたのは彼が65歳で亡くなった後のことながら、ラグビーを普及させるために作られたこのロマンティックな物語は実によくできている。W杯も正式には"William Webb Ellis Cup"と称されている。

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