岡部利良先生は、北海道函館市で１９０５年に出生。５歳のとき父が亡くなり、母、姉弟とともに本籍地たる郷里・山陰但馬の美方郡西浜村（現新温泉町）諸寄に帰り、尋常高等小学校を終え、１５才の時勤労学生として、上京され、苦学・苦渋の人生を歩まれた後、京都大学教授になられ、１９９１年に他界されました。
私の大学時代に師事した教授から、「私の京都大学時代の先生は岡部教授で、山陰の旧浜坂町出身と言っておられたよ」と聞き、ものすごく気になったので、諸寄の岡部という苗字の方を諸寄公民館長に捜していただきました。酒店岡部敏雄さん宅が郷里でした。
岡部教授の素晴らしいところは、苦学力行の人で、夜間中学をへて、高等学校入学資格の検定試験に合格され、旧制第四高等学校に入学するという異例のコースを経て、京都大学経済学部に入学されたということです。卒業後も、東洋経済新聞社・大学院・建国大学・シベリア抑留という変化にとんだ苦しい人生行路を歩まれ、会計学の分野で才能を発揮され、五十五歳で教授になられました。
経歴が示すように勤労者の立場に立った啓蒙書である「勤労者のための会計学」や戦後民主主義の息吹のなかで結集した経営・会計研究者の戦後総括とも言われる「現代経営会計講座」がある。遺作となった「現代会計学批判」は批判会計学の指導的地位を占め、多くの研究者を育てられた集大成であった。
新温泉町出身として、苦学・苦渋の人生を歩まれ、京都大学教授となられ、数々の著書を残された岡部教授の功績を評価し、新温泉町の先人として名を連ねることができれば幸いだと思います。青少年の座右銘として、現代兵庫の百人の中で「不撓（ふとう）の精神」について、本人にやる気さえあれば人並みのことはできるだろうと語っておられます。
＜岡部陽二追記＞
浜坂公民館長・岡坂康正氏から頂戴しましたこの「先人を尋ねて・岡部利良教授」は、2013年11月9日と10日の週末に、兵庫県美方郡新温泉町の浜坂公民館で開催されました「諸寄文化祭」パネル展示での紹介文で、公民館文化協会の会報に掲出されます。
父は1991年11月27日に86歳で永眠しましたので、今年の11月3日に京都の圓光寺にて23回忌の法要を営みました直後に、岡坂様からこの催しについてお連絡頂き、驚きました。
岡坂館長が立命館大学で師事されましたのは津守常弘先生で、現在は九州大学名誉教授です。津守先生は父のゼミで会計学を学ばれ、その繋がりからこの父の顕彰事業が実現したものです。また、父の没後に企てました「旧中国における紡績労働の研究」の出版も、当時九州大学出版会の代表を務めておられました津守先生にお世話になりました。まさに奇しきご縁です。
パネル展示の父の小文「不撓の精神ということ」は、別途「昭和53年、岡部利良から青少年へのメッセージ（「現代兵庫の百人」https://www.y-okabe.org/parents/post_27.html）に入れてあります。 その他のパネルは下掲のPDFファイルで添付しました。
京都大学経済学会刊行の「経済論叢」第103号第2号「1969年2月号・岡部利良教授記念号」に所収の「略歴」と「著作目録」
