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<Book Review、書評>  「山中iPS細胞・ノーベル賞受賞論文を読もう」

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  「山中iPS細胞・ノーベル賞受賞論文を読もう」

山中iPS2つの論文(マウスとヒト)の英和対訳
解説及び将来の実用化展望
西川伸一監修・監訳、ニシカワ・アソシエイツ訳

  
  山中伸弥教授が渾身の力をふり絞って書いた英文のノーベル医学・生理学賞受賞論文の原文を素人の私が読んで多少とも理解することができるとは、本書を手にするまで夢思わなかった。山中教授のノーベル賞受賞以降、多くの解説記事がメディアに掲載され,書店にはiPS細胞関係の本が平積みで並んでいるが、原論文を邦訳付き・解説付きの本書で読めるのは、何と素晴らしいアイデアであろうか。

本書には、20068月に発表されたマウスiPS論文、200711月のヒト1PS論文、そしてノーベル財団が発表した受賞理由の3編の英文・完璧な邦訳文が収録され、理化学研究所の西川伸一博士の解説「iPSを考える」、さらに「iPSの実用化、現在の状況と将来の見通し」などが盛り込まれている。

  ヒトを形作る60兆個の細胞に
何万とある遺伝子には、特定の細胞を作り続ける遺伝子、それをストップさせる遺伝子、原点に戻す遺伝子などが多様にあることが判明したことから、がんの細胞を初期化すると、がんがなくなることも将来考えられる。このように万能なiPS細胞は、網膜の再生、心筋の再生、その他多くの器官の再生のほかiPS細胞で作製した難病患者の細胞組織に効く薬品の開発(創薬)がテストできる。一例として、2012年に達成された科学分野の重大成果の一つに、米科学誌「サイエンス」は「マウスのiPS細胞から卵子を作った斉藤通紀京大教授の研究を選んでいる。

  20世紀前半までの支配的な見方は、成熟した細胞は分化した状態に永遠に固定されており、完全に未成熟な多能性幹細胞に戻ることはできないという不可逆論であった。この見方を根本的に変えたのは、山中教授と同時に同じテーマでノーベル賞を受賞したジョン・B・ガードン博士であった。博士は核を取り除いた卵に分化したカエルの小腸の上皮細胞の核を移植する方法で、完全な機能を持ったオタマジャクシを1962年に作り出した。この成功から、マウスやヒトが持っている原点に戻す4つの遺伝子を山中教授が特定するまでに、じつに45年を要したのである。

  この間の「世界iPS戦争」にはすさまじいものがあり、ドイツの研究者に先を越されたのではないかと、二本目の山中論文は出張時の飛行機の中で仕上げられたといったエピソードも紹介されている。

山中教授は「原理さえ分かれば、高校生でもiPS細胞を作ることができる」と言っておられるが、高校生や大学生が集まってこのオリジナル論文を輪読すれば、山中教授の仕事が次世代の若者に実感され、将来の糧となることは間違いない。

山中教授からも「たくさんの失敗がiPS細胞樹立につながりました。失敗を恐れず、いろいろなことに挑戦してください」とのメッセージを本書に寄せていただいている。 

■一灯社刊、定価;本体1,800円+税 

(評者;医療経済研究機構副所長 岡部陽二)

(2013114日、㈱法研発行「週刊・社会保障」No.2710114日号 p61所収)  

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