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住友VISAと外貨両替

 8月初めに届いた「住友銀行百年史」を紐解いて住銀インターナショナル・ビジネス・サービス(株)(略称 SIBUS)設立のくだりを読んでいたところへ、加州住友銀行での大任を終えた恩田新社長が、タイミングよく着任してくれました。在任3ヶ月のリリーフ社長兼任を大過なく勤めました私から新社長に引き継ぐことは何もございませんので、「丁度よいところへ帰ってきてくれた、来月の30日がSIBUS創立15周年記念日なので、この機会に何か考えてくれては」とだけ申し上げました。

 ところが、アイディア豊富で行動力抜群の恩田社長は直ちに社内に記念行事委員会を設け、「記念パーティーなどは一切自粛して、お客様に喜ばれる実用的な"世界地図帳"をお配りする」、「20周年に向けて当社で手掛けるべき新種業務の提案を全社員から募り、優秀なアイディア提案者を表彰する」といった厳しい環境下に相応しくかつ斬新な記念イベントがいくつかあっという間に出来上がりました。この「15周年記念誌を社内でのデスクトップ・プリンティングで発行する」という企画もその目玉の一つです。この企画の意を体しまして、VISAマークと外貨両替業務の重要性について、私が日頃考えておりますことの一端をご披露申し上げます。

 私と住友VISAとの関わり合いは古く、丁度30年前の1968年9月にシカゴで開催されましたVISAインターナショナルの前身、IBANCOの創立総会に住友銀行を代表して出席したのが最初です。その時の記憶が今でも鮮明に残っております。住友銀行はその年の3月に英国、カナダ、メキシコの銀行に次いでBOAカードのメンバーとなり、このイニシャル・メンバー5行で将来の戦略を話し合った記念すべき会合であったのですが、偶々その時にもぐりでシカゴに駐在しておりました私が参加できたのは幸いでした。

 最近の関わりは、銀行退任直前の1992年に外国業務部を担当しておりました時です。VISAインターナショナル本部がBCCIやインドネシアの小体銀行などVISAブランドのT/C発行銀行破綻が相次いで多大の損失を蒙った事態を問題視して、もともとカード専用のVISAマークをT/Cには使わせないという強硬方針を打ち出して来ました。その対応には苦慮しましたが、幸いにして反論が奏効して、VISA本部がこの方針を撤回してくれましたので、住友VISA T/CとSIBUSの今日もあるわけです。

 外貨両替業務との私の関わり合いはもっと古く、入行4年目に備後町支店に転勤した途端に、大阪国際見本市会場に臨時に設けられた住友銀行の両替ブースに交代で詰めて出張両替に携わったのが最初です。その後3年間の加州住友銀行勤務を挟んで、通算10年間ほど外国部、東京外国部、外国業務部と部の名称は変わりましたが、私の担当は一貫して外国為替業務の支店指導でした。

 この間、外貨両替では東京オリンピックで来日の外人客に対処すべく、店頭での外貨両替用英会話ガイドを作成し、英国総領事に吹き込んで貰った会話テープを全取扱店に配布したりしました。大阪万国博の両替出張所も企画段階から担当して、万博会場へ足繁く通いました。当時は手間は掛るものの、外貨両替は一弗当たりの収益性が高く、個人取引増強の面からも重要な業務と位置づけて、何の疑いもなく積極推進を図りました。もちろん効率化の見地からT/Cのパック化に続いて、外貨キャッシュのパック化も他行に先駆けて実施しました。

 ところが、その後2回通算で13年余りのロンドン勤務を終えて、再び外国業務を担当致しました時には、外貨両替は支店での非効率業務の最右翼に位置づけられ、これを如何にして減らすかが重要な課題となっておりました。

 このように銀行はもちろんのこと、旅行会社も手前勝手で海外旅行者の外貨ニーズにお応えしておりません。この顧客軽視の営業姿勢を一刻も早く改めて貰わなければとSIBUSに参りましてから痛感しております。旅行者のニーズを充足するには、T/C、外貨キャッシュ、クレジット・カード、銀行のキャッシュ・カード、さらにはプリペイド方式のトラベル・カードと多様化した携行外貨の中から行き先にマッチした最適の組合わせをのアドバイスし、ワン・ストップで何時にでもすべての旅行マネーを供給できる外貨ショップが必要不可欠です。ニューヨークやロンドンの街角にはこのような外貨両替ショップが夜遅くまで店を開いておりますが、東京や大阪の繁華街ではお目に掛りません。外国の実例を見るにつけ、外貨両替も業務のやり方次第では、十分採算が採れ、お客様にも喜ばれる商売になるとの確信を強めております。

 本年4月から両替業務が全面自由化され、誰でも自由に手掛けられるようになりました。それにも拘わらず、以前と何も変わらないのでは金融ビッグバンも全く無意味です。我がSIBUSの使命は、お客様に喜ばれる外貨両替の総合サービスを業務として採算に乗るかたちで供給できるシステムを開発し、それを親銀行だけでなくすべての金融機関や旅行会社に採用して頂くことではないでしょうか。これが21世紀へ向けての私の夢です。しかも、恩田新社長の統率のもとに全社員が力を合わせれば成就できる極めて現実的な夢であると思います。

(住友インターナショナル・ビジネス・サービス㈱ 会長 岡部陽二)

 (1998年10月、住銀インターナショナル・ビジネス・サービス(株)発行、「21世紀に向かって~シーバス15周年記念誌~)

 

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