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邦銀の欧州新戦略~駐在トップに聞く   住友銀行 岡部陽二専務

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 市場は「2眼レフ」に 

大陸で客つかみ」、英で戦略的取引

 

--今後の欧州金融市場の展開をどう見ていますか。

「欧州市場の特徴は主にマーケット性のプロダクト(商品)取引にある。資金・為替、先物、円債、ドル債などの債券ディーリング。これらは今までロンドン中心に展開してきたが、92年の欧州共同体(EC)市場統合に向けて、パリ、マドリード、ミラノといった他の欧州市場にも広がっていく。つまり、市場統合の効果としてこれまでのロンドン集中型から大陸に拡散し、欧州市場はロンドンと大陸との一種の二眼レフ構造になっていくだろう」

「すでに米銀のバンカースー・トラストなどは本部機構もロンとパリの両方に置いている。ただ、各市場のどこが大陸の中心になるかは微妙。当行はすでに欧州各地に、東京銀行を除けば都銀中最高の8支店を持つており、先行メリットは大きい。今後この各拠点をそれぞれ強化して欧州市場の変化に対応していきたい」


--事務処理面で住友はロンドン集中体制をとっていますが。

88年夏以来、欧州各拠点の決済事務などはロンドンで一括コンピューター処理しており、その効率化効果は大きい。ただ、バックアップの必要性や処理量の膨張などから、欧州のどこかにもう1ヵ所センターを作る方向で検討中だ。業務面よりも、インフラ面からまず二眼レフ体制への対応を進めることになるだろう。

--EC第二次銀行指令に基づいた新たな業務展開の可能性はあるのですか。

「母国主義で域内での支店設置が自由になるという第二次銀行指令の趣旨は、邦銀など非EC企業にとっては絵に描いたモチに終わる懸念がある。EC委員会は差別しないというが、もともとEC市場統合はEC企業の活性化のためのもので、非EC企業が域内に現地法人を設立したからといって、同じ恩恵を当然受けると考えるのはどうか。むしろ市場統合でマーケットが広がるという程度に考えておくほうがいい」

--EC市場でのM&A(合併・買収)事業などの見通しは。

「当行は米国市場では日本企業側に立つという基本方針がある。米インベストメントバンクが強過ぎるというのがその理由だ。ただ、欧州市場では必ずしもそうではない。例えば英企業とフランス企業を仲介することもあり得るし、実際に「外-外」M&Aも手がけている。欧州各拠点はリレーションシップ・バンキングで客をつかみ、M&Aなどの戦略的取引はプロダクト本部であるロンドンの専門M&Aチームがさばくという形。これからが楽しみだ」

--東欧対策はどうですか。

「かなり長期的視野で見なければならない。今まで東欧は国が債券を発行したり、貸金を受け入れるなどのソプリンものが大半。その意味ではリスケジュール国はポーランドとユーゴスラビアだけ。だが、ここにきて東欧のソブリンものには意味がなくなってきた。経済改革の見通しはいい国とそうでない国にはっきりと分かれている。しかも東独などに対してこれから必要なのは貸金を増やすことより、むしろ緊縮政策の行方を見定めること。資本市場の整備や合弁企業設立などにどう絡んでいくかが銀行にとっての課題だ」

--ライバルはどこですか。

「モルガンやバンカースのようにホールセールに特化してやっているところを見習う必要がある。邦銀他行はその点では参考にならない。強いていえぱ、三菱銀行は理論的分析を先行させて、実際にその分析に基づいた手の打ち方をする。あまりもうかってはいないと思うが、よく勉強している」


(ロンドン=藤井良記者)

 

199032日付「日本経済新聞」所収)

 

 

 

 

 

 

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