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「国際金融人・岡部陽二の軌跡」書評③~勇気をもって挑戦する姿勢

        大和みどり

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 さまざまな苦難を乗り越え、こんなにも熱く色濃く生きて来られた岡部陽二氏の栄光の軌跡を読了し、感動のあまりしばらくは茫然といたしました。

     トンネルの灼熱地獄無蓋貨車

     疎開貨車降りて捕虜たり敗戦日

 ご母堂のこの二句からも察せられる通り、終戦間際に侵攻してきたソ連からの満州逃避行の序章は息つく間もなく読み継ぎました。

 その過酷な日々は当時十一歳の岡部少年にして、誰にも頼れない、何でも自分でやるという意識が育ったと述懐しておられます。思えば岡部氏の原点はここにあったのかもしれません。

 ロスアンゼルスをふり出しに国際金融分野に総力を発揮された長き歳月、激務の中を越えて来られた、その体力、精神力、探求心、好奇心には感服するばかりです。 

 時あたかもノーベル医学生理学賞に本庶先生が受賞されました。本庶先生は既存に甘んずることなく絶えず好奇心を持ち、勇気をもって挑戦する心を語られました。

 まさしくそれは岡部陽二氏の生き方そのままと重なりまして、私の心を熱く震わせました。 

 ことに嫌なことに背を向けず、何事にも邁進されることに教えられます。

 船酔いを解消するため京大ヨット部に入部され、配属の部署に面白さを感じられないときは、英語検定に挑戦、日米会話学院へ留学の道を自ら切り拓かれるなど、枚挙にいとまありません。

 中でも若くして、住友銀行七十五周年記念の懸賞論文に最高賞受賞。これは規制に対する挑戦であり、住友銀行の国際化はここに始まり、いよいよ岡部氏の活躍のスタートが切られたのでした。

 鉱物採集、ゴルフ、囲碁、真向法、水泳、切手収集など、超人的趣味の多彩には絶句です。仕事一途に自分を追いやらず、心を遊ばせるという英智あればこそ。

     自分史にひらく一輪梅の花   陽二

 あとがきの一句に心打たれつつ、陰になり日向になり岡部氏を支えてこられた賢明なるご令室のすばらしさを思うばかりです。

(2018年10月18日付け、Amazon電子書籍:Kindle版、定価:500円(税込み):カスタマーレビューへの一読者からの投稿)








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