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『<回想>エルエフ会』の刊行

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 42年間続いてきた異業種交流会「エルエフ会」の勉強会形式での会合を昨年末に終結しました。これを機に、文集の刊行を企画し、発足時当初の幹事・小林功氏のご協力を得て実現しました。

 筆者の執筆個所のみ下掲します。

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筆谷尚弘君のこと

岡部陽二

 私がエルエフ会に入れていただいたのは平成14年で、50年の伝統を誇るこの会では新参者である。もっとも、入会前に2回ほど講師として招かれ、証券市場などの話をしたことはあった。

 エルエフ会に凄まじい熱意でもって誘ってくれたのは、京大同期の筆谷尚弘君であった。

 彼との出会いは昭和28年に京大ヨット部に一緒に入部した時に遡る。この年には同期4人が入部、彼と私の二人が法学部生であった。大学のキャンパスで出会うことはほとんどなかったが、シーズン中は毎月琵琶湖畔柳ヶ崎での1週間の合宿で仲間ともども議論を戦わせていた。

 昭和29年の8月に5日間の琵琶湖周航で青春を謳歌した時も、彼と一緒であった。この周航の後に、彼自らが作詞・作曲し、ウクレレを弾いて歌ってくれた「別れの歌」を掲出する。この歌は今でも京大ヨット部で歌い継がれている。

別れの歌 (ヨット部愛唱歌)

   S32年卒筆谷尚弘君 作詞作曲

1、四年の冬の めぐり来て  ああ我 友と別れゆく

  潮に風に たわむれし  すごせし良き日 遠き夢

2、勝ちて 杯酌み交わし  敗れて 泣きし友なれば

  流れる水に 船浮かべ  去り行く心 詫びしけれ

3、海の彼方は 海なれば  また会うことも いつの日か

  されど思いは 海越えて 水に結ぱん汝と我 水に結ばん汝と我

 残念ながら、私は肋膜炎を患って2年間でヨット部を退部したが、筆谷君は一段とヨットにのめり込んで、競技を続けるために1年留年したほどである。昭和33年に卒業して三菱商事に入社した。

ところが、入社7年後にサラリーマンに見切りをつけて退職、昭和40年に設立された「ISS」という通訳・翻訳のサービス会社 の起業に参画してすぐに社長となり、20年後には業界大手に成長させた。その間、日本青年商業会議所や日本翻訳連盟などの業界団体での活動にも精励した。

 小林功さん、野々内隆さんと意気投合して、エルエフ会を異業種交流の勉強会として発足させたのも、彼の幅広い人脈と類稀な世話好きの為せる業であった。発足当初の会合はISSの事務所で開かれていたと聞いている。

 私は昭和32年に住友銀行に入行、16年余の海外勤務を終えて平成4年末に帰国、京大ヨット部のOB会で35年ぶりに彼と再会した。たちまち碁の好敵手にもなり、当時帝国ホテルにあった囲碁クラブ「石壽会」で毎週対局、その後には銀座や赤坂をはしごして賢い呑み方を教えてくれもした。さらに、私と別れてから彼一人でもう一、二軒訪ねるのが常であった。

 当時帝国ホテルに朝8時から集まっていた「八〇会」という勉強会に誘ってくれたのも筆谷君であったが、この会が無くなるや、エルエフ会への入会を薦められ、いつの間にか会員になっていた。

 エルエフ会の幹事は平成2年に東京電力副社長に就任された川崎弘さんにお願いし、会員への連絡などの事務はすべて東電の秘書に担当していただいていた。平成19年に川崎さんが東電を退職された際に、会の事務面は東電秘書に代わって根来さん、西岡さんとともに私が担当して継続することになった。結果的には、私一人が生き残って現在に至っている。

 筆谷君も平成24年8月14日に、79歳で一足先に逝ってしまった。お通夜に伺った8月16日は奇しくも私の誕生日であり、これも彼との強い縁の証しかと懐かしんでいる。

編集後記

 エルエフ会は1975年9月11日に第一回会合を開いて発足、2017年12月15日に勉強会形式での会合を終結するまで、じつに42年3か月にわたり406回に及ぶ会合を重ねてきた。

 第3回会合以降、開催日は毎月の最終金曜日の夕刻と定め、この原則をおおむね貫いてきたのが、継続の力となったのであろうか。

 メンバーは当初の6名からピーク時には20名を超えたが、現在は18名。物故者13名と中途退会者20名を含め累計51名が会員となっていた。初回と最終回ともに出席は野々内隆さんお一人のみながら、会員の出入りは少なく、30年以上の永年勤続者が現会員の過半数を占める。

 この会は創設当初から様々なバックグラウンドを持つ同世代が集まって、多岐にわたるテーマの楽しい勉強の場にしようという合意のもと、企業人だけではなく、官界、法曹界、マスコミなど幅広い分野の異業種交流を図ってきた。

 この由緒あるエルエフ会の活動を振り返って文集を出してはとの提案がありイニシャル・メンバーの小林功さんから提供いただいたお手持ちの資料を基に活動年譜「エルエフ会の歩み」と「エルエフ会会員異動」を加えることができたのは幸いであった。

岡部陽二 記

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