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英国に学ぶ行財政改革~2005年4月20日、浦安市公金管理協議会でのプレゼンテーション・スライド

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 2005年4月から4年間浦安市長の要請で同市の専門委員(財務アドバイザー)を務めました。毎回経済情勢などについての解説を同市の幹部に行ないましたが、その中での一つ「英国に学ぶ行財政改革」のスライドを下に掲げます。

⇒ スライドを見る(PDFファイル)

 サッチャー改革に次いでメージャー首相の時代に始められましたPrivate Finance Initiative(PFI)と労働党のブレア政権がそれを発展的に改造しましたPublic Private Partnership(PPP)について、医療分野を中心に若干説明を加えます。

 PFIは保守党メージャー政権下の1992年に導入されました公営企業の経営に民間の資金と経営力を導入するための手法です。公共サービス部門では、施設建設時に大幅なコスト・オーバーランや完工の遅延が相次ぎ、建設後の公営事業の管理運営にも非効率が蔓延していましたため、これを一括して管理能力の面で優れている民間企業に委託する方式として考え出されたのが、PFIです。

 1997に誕生しました労働党ブレア政権もPFI路線を継承し、その推進を徹底する目的で政府の調達手続き全般の近代化を推進する独立行政法人Office of Government Commerce(OGC)を設置、公共プロジェクトへの助言機能を担当する組織として民間との共同出資でPartners UK(PUK)という株式会社を設立しました。また、従来公営であった事業の民間への移籍に伴う公共職員の雇用につきましては、移籍ならびに雇用保護法(TUPE)により雇用条件の維持を図りました。この立法より現実に民間への実質的な移籍が急スピードで進んでいます。

 このような施策を踏まえて、1998年に出された政府白書では、民営化、アウトソーシング、民間とのジョイント・ベンチャーなどのさまざまな民間活力活用方策を含めた官民のパートナーシップ(Public Private Partnership、PPP)という新しい官民協調の多様な進め方を示し、これを「第三の道」と位置づけました。これにより、PFIもPPPの概念に包含されましたが、医療分野におきましてはPFIが依然主体で、PPPもPFIの同義語として使用されています。

 PFIは民間企業が100%出資の特別目的会社 (Special Purpose Company, SPC)を設立し、事業遂行の責任はSPCへの出資母体企業が負います。PFIはファイナンスの一形態でありまして、これまで国債発行や地方公共団体の借入れで賄われていました公共施設の建設資金を民間の金融市場からプロジェクト・ファイナンスの形で調達し、返済は公共サービスの代行業務から得られる収益で行われる仕組みです。

 PFIでは、公共施設の建設工事と完工後の30年から50年という長期間にわたる設備の維持管理サービスの受託が一つの契約にセットされています。このため、PFIにおきましては、建設請負以上に完工後の維持・管理サービスの提供が重要となり、英国ではサービス・マネジメント専業者の起業増に加えて、建設業者が施設の維持・管理サービスを主体とするサービス・マネジメント業に業種転換する例が増加しております。

 PFIの総案件数は、2004年末までの契約ベースで件数677件、契約額で427億ポンド(約10兆円)に達しています。これを事業分野別に見ますと、件数の構成比で病院が28.2%、学校が19.1%と両者で全体のほぼ1/2を占めています。NHSでは、PFI導入の当初からNHS Trust病院の建替などは原則としてPFI方式を採用する方針で臨んでいます。

 病院PFI第一号のNHS Trustとなりましたダートフォード病院は、三つの病院を400床の一病院に統合して2000年2月に完成し、すでに期間32年の長期社債への乗り換えに成功、財務面を含む総合評価で最高の三ツ星を取得しています。医療サービス面でも、平均在院日数を4日に短縮し、長期の待機患者もほぼ解消して、患者満足度も大幅に向上しています。

 2004年末で新規開業に漕ぎつけましたPFI病院数は20軒ほどですが、PFI手法による建替えが決定され、建設中のものが54病院存在します。このような実績を踏まえて、医療福祉分野におけるPFIは次のような第二段階に入っています。

1、信用保証財務手法(Credit Guarantee Finance、CGF)の導入;投資額全額を民間資金に依存するのではなく、政府(大蔵省)がPFI導入病院に建設資金を直接融資する方式を実験的に開始しました。ただし、その返済保証は民間の第三者機関が行なうので、融資リスクは全面的に民間負担となりますが、借入コストの軽減に繋がります。

2、PFI病院の財団病院(Foundation Hospital)化推進;NHS Trust病院のうち、三ツ星レベルを獲得した病院から順次財団に移行させる計画です。2007年から2008年ごろまでに全248のNHS Trustに属する全病院を財団病院化できる水準にまで財務状況などの改善を実現するとしています。実際にはPFIにより財務内容が大幅に改善した病院が先行する見込みです。

3、近代化庁(Modernization Agency)の設立;2001年4月にNHS内にNHS Trust病院の経営支援を行なう目的で設立された機構で、一つ星や零評価の病院の経営改善に取り組みます。PFIによる建替えが可能なレベルにまで経営水準を引上げるための企業の再生機構に類似した組織です。

4、プライマリー・ケア機能の強化;プライマリー・ケア分野の組織化による効率運営を促進する目的で設立されたプライマリー・ケア・トラスト(PCT)の数は2004年3月末で305に達しています。ブレア政権は入院患者を極力減らす目的でプライマリー・ケアの充実を進めてきましたが、そのハード面はPFIの派生的手法であるLIFT(Local Improvement Finance Trust(地方改善財務信託)で施設・機器の建設・改修を行い、ソフト面はクリニカル・ガバナンスの導入によるTQCの徹底で対応しています。

 

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