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平成4年、故岡部利良の著作「旧中国の紡績労働研究」

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Prof. Toshiyoshi Okabe's publication


岡部利良著 「旧中国の紡績労動研究」
ー旧中国の近代近代工業労働の一分析ー

021214toshiyoshi_1%5B1%5D.gif 岡部利良著 「旧中国の紡績労動研究」
ー旧中国の近代近代工業労働の一分析ー

体裁: B5判 525頁
定価: 8,000円
(税込、本体価格 7,767円)

ISBN 4-87378-326-7
発刊: 1992年 11月 23日
発行所: (財)九州大学出版会


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本書「旧中国の紡績労動研究」は父・故岡部利良が1943年に執筆を終えた旧稿 を、爾来49年を経過した1992年に、しかも著者が故人となった翌年に遺族の手で出版した異例づくしの書物である。

全文525頁に上る本書の内容紹介は困難であるが、校閲頂いた九州大学の西村教授によれば、解放前の中国における主要な近代工業である紡績業の労働とその管理を総合的に分析したものである。著者は中国での中国人紡績企業と日本人紡績企業とを比較検討しながら、日中戦争(1937-1945年)終結以前の中国紡績企業の労働および経営の後進性・非近代性とその根拠を多くの文献・データを渉猟し、また自らの現地調査を踏まえて具体的に描き出している。この後進性・非近代性は、中国資本主義の未発達と資本家的経営の後進性との対置において分析されており、それぞれの章において、労働生産性の低さ、知的教育水準の低位、雇用における間接的契約制度、労働過程・管理における無規律、管理者の無責任・寄生性、経済外強制などの問題を取り上げ、具体的に考察されている。

本書の対象は何しろ大戦前の旧中国の紡績労働慣行であり、日中関係が大きく変化した今日の時点で出版することについては、父の生前から友人の方々はもとより家族の間でも異論のあるところであった。しかしながら、この「旧中国における紡績労働の慣行調査」は父が一旦就職した東洋経済新報社を辞め、30歳にして再び学問の世界へ戻っての初仕事であっただけに、これに打込んだ情熱とエネルギーには相当なものがあったものと想像された。

このような経緯から、父自身も亡くなった前年の10月に入院してからも、まさか還らぬ人になるとは思ってもいなかったらしく、退院してしばらく休養の後、既に数年を費やして書き直し終えた原稿に今一度目を通して出版するつもりであったものと想像された。現にその後病状が容易でないことを悟ってからは、最期まで本書の出版のことのみ心に掛けていた。

したがって、本書を出版することが故人への何よりの供養と思い、没後直ちに京大の高寺貞男先生にご相談のうえ、中国経済にご造詣が深い九州大学の西村明先生に出版の企画・監修等一切を全面的にお願いした。もっとも、本書の校正は相続人である私の責務とされ、ロンドンの地で一夏の間これに没頭、何とか故人の一周忌に上梓の運びとなった。

西村先生にはご自身のご研究でご多忙中のところ大変なご無理を強いる結果となったが、細部に亙る綿密なご校閲に加えて、ご懇切な「解題」を賜わることが出来たのは望外の幸せであった。これもひとえに西村先生の献身的なご尽力と九州大学出版会藤木雅幸様はじめ関係各位のご協力の賜物であり、感謝の念に耐えない。

本書は60年以上前の中国旧体制下の実態調査ではあるが、現在の労働事情に通ずるところも多く、中国での工場経営などに当たっておられる方々には参考となる点を多々含んでいるので、本書をご希望の向きは九州大学出版会(092-641-0515)または私までご連絡ください。

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