<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<feed xmlns="http://www.w3.org/2005/Atom">
   <title>1.作品用管理画面</title>
   <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.y-okabe.org/" />
   <link rel="self" type="application/atom+xml" href="http://www.y-okabe.org/atom.xml" />
   <id>tag:www.y-okabe.org,2012://1</id>
   <updated>2012-01-15T12:19:57Z</updated>
   <subtitle>岡部陽二のホームページ - Official Website by Yoji Okabe</subtitle>
   <generator uri="http://www.sixapart.com/movabletype/">Movable Type 3.34</generator>

<entry>
   <title>＜投資教室＞独立取締役と独立監査役の必置実現を</title>
   <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.y-okabe.org/market/post_228.html" />
   <id>tag:www.y-okabe.org,2012://1.413</id>
   
   <published>2012-01-15T15:00:00Z</published>
   <updated>2012-01-15T12:19:57Z</updated>
   
   <summary><![CDATA[ &nbsp; &nbsp; &nbsp; 　 　2011年年末の日経平均株価は...]]></summary>
   <author>
      <name>okabe</name>
      
   </author>
         <category term="007証券市場論集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.y-okabe.org/">
      <![CDATA[<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/120116IndependentDirectorsLogo.jpg" alt="120116IndependentDirectorsLogo.jpg" width="250" height="159" align="right" />
&nbsp;
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
<strong><br />
</strong>&nbsp;
</p>
<p>
<strong>　<br />
<br />
　</strong>2011年年末の日経平均株価は8,455円と年間で17%下落、29年振りの安値となった。年間5.5%高となったNY株のダウ平均の動きとは対称的である。年後半の日本株売りが、東電、大王製紙、オリンパスと続いたガバナンス欠如に起因する有力企業の株価崩落が日本企業全般に広がるのではという疑念に触発されたことは間違いない。
</p>
<p>
　外国人投資家にことさら根強いこのようなガバナンス欠如に対する疑念を払拭して、日本企業の国際信用を取り戻す方策は、企業ガバナンスの基本である経営の透明性を確保するための独立取締役と独立監査役の必置を早急に実現する以外にない。上場企業に独立取締役選任を義務付けているのは、米・英・欧州諸国だけではなく、中国（2005年）、韓国（2003年）・インド（2007年）・シンガポール（2005年）などアジアでも主要10ヵ国以上に上っているからである。<br />
<br />
　わが国でも、ガバナンスの向上に向けた環境整備と銘打って、2010年に東証が全上場企業に対し、「独立役員」最低1名の選任を義務づけた。しかしながら、肝心の「独立取締役」必置は求めておらず、独立性の定義も緩やかである。この結果、昨年末には3月期決算会社全社が届出を行なったが、独立役員のうち、独立社外取締役を選任した会社は全体の25.4%に過ぎず、74.6%は社外監査役のみの選任である。トヨタなど時価総額1兆円超の大会社61社について見ても、社外監査役のみの選任会社が32.8%を占めている。社外監査役については、すでに会社法で「監査役会を設置する会社は、監査役が3名以上で、その過半数が社外監査役でなければならない」と定められており、この東証の新規制はほとんど意味を成さない現状追認的なものである。<br />
<br />
　そこで、昨年12月に法務省から出された「会社法制の見直しに関する中間試案」では、「監査役会設置会社（公開会社であり、かつ大会社に限る）においては、一人以上の社外取締役の選任を義務づける」という案が、一つの選択肢として提案された。これが実現すれば、大いに評価される。このような動きの背景には、表１に見られるような上場会社の株主構造の変化がある。　
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/120116IndependentDirectorsHyou1.jpg" alt="120116IndependentDirectorsHyou1.jpg" width="600" height="237" />
</div>
<p>
　
</p>
<p>
　この表で明らかなように、1990年代には株価以外の関心から株式を保有するインサイダーが、株主の60%以上を占めていたが、最近時では逆に投資収益を目的に株式を保有する外国人や機関投資家のアウトサイダーが60%以上を占める状況に変化した。時価総額の大きい大会社については、この傾向が一段と顕著である。アウトサイダー優位の株主構造となれば、独立社外取締役を積極活用して、外部からの意見を経営に反映させるようにガバナンスの構造も必然的に変化せざるを得ない。
</p>
<p>
　この法務省試案には、財界の反対が根強く、独立取締役必置の実現は予断を許さないが、上場企業の中には、独立社外取締役をガバナンスの中核と位置付けているエーザイのような先進的な会社も現れている。エーザイは「取締役会は専門知識や経験が異なる多様な取締役で構成し、その過半数を社外取締役とする」「取締役会の議長は原則として社外取締役の中から選定し、代表執行社長と分離する」｢社外取締役は会社法に定める要件を充足するだけではなく、当社から独立していなければならない」「指名委員会と報酬員会はすべて社外取締役で構成する」「社外取締役のみの会合を年1回開催する」などと明確に規定して現に実行し、公表もしている。すべての上場企業が自発的にエーザイに倣えば、法規制は要らない。
</p>
<p>
　ほかにも、たとえば、日立は現在取締役12名中、4名が社外であるが、昨年末に行なわれた日経紙でのインタビュー記事で、近い将来にこの割合を逆転させて、社外を過半数とする旨、社長が表明している。社内英語化を実現した楽天でも、取締役16名中4名が独立社外で、うち2名は外国人である。<br />
<br />
　オリンパスのケースでは、社外取締役が主幹事野村証券の元担当者で、悪事の首謀者であったというのは論外であるが、英国子会社に入ったウッドフォード前社長が英国人故の正義感から不正の隠蔽を暴いたのは、彼が実質的に社内ながら独立役員の役割を果たした結果となり、怪我の功名とも言える。<br />
<br />
　このように見てくると、独立社外取締役のルール化に当っては、社外であれば誰でもよいというのではなく、自身の利害関係を度外視して大局的に判断のできる「独立性」の担保が重要となる。そもそも英語には｢社外取締役」という用語は無く、Independent Director一本である。わが国でも、「社外取締役」という用語は廃して、｢独立取締役」に一本化するべきであろう。
</p>
<p>
　独立取締役の独立要件の整備に当っては、表２に掲げたような欧米での基準が参考となる。株式持合いの関係ある企業や重要な取引先、取引金融機関役職員・OBなどからの独立取締役起用は全面的に禁止されなければならない。過去の雇用関係については、欧米には終身雇用の慣行がないので、退社後の経過期間についての縛りは緩やかであるが、わが国では退社後10年以上の長期に設定すべきであろう。
</p>
<p>
　独立取締役の役割は企業の社会からの遊離を防ぎ、外部の目で新鮮な考え方を示すことで、企業活動を活性化することにあり、そのためには、数の要件も不可欠である。一人の独立役員が多数の社内役員に押し潰されてしまうようでは、機能しないので、会社法の最低基準はともかくとして、時価総額が1,000億円を超えるような東証一部クラスの大企業につては、過半数の独立取締役必置を義務付けるべきである。
</p>
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/120116IndependentDirectorsHyou2.jpg" alt="120116IndependentDirectorsHyou2.jpg" width="600" height="174" />
<p align="right">
<strong><br />
（</strong><strong>日本個人投資家協会理事</strong><strong>　岡部陽二）</strong>
</p>
<p align="left">
（2012年1月16日、日本個人投資家協会発行月刊紙「きらめき」1月号所収）
</p>
]]>
      
   </content>
</entry>
<entry>
   <title>＜投資教室＞今こそ高い電力料金の大幅引下げを</title>
   <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.y-okabe.org/market/post_227.html" />
   <id>tag:www.y-okabe.org,2011://1.411</id>
   
   <published>2011-12-14T15:00:00Z</published>
   <updated>2011-12-17T04:26:40Z</updated>
   
   <summary><![CDATA[ &nbsp; &nbsp; 　 &nbsp; 　12月8日付けの毎日新聞朝刊は...]]></summary>
   <author>
      <name>okabe</name>
      
   </author>
         <category term="007証券市場論集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.y-okabe.org/">
      <![CDATA[<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/111215TakaiDenryokuryouLogo.jpg" alt="111215TakaiDenryokuryouLogo.jpg" width="250" height="165" align="right" />
&nbsp;
<p>
<strong><br />
<br />
</strong>&nbsp;
</p>
<p>
<strong>　</strong>
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
<strong>　</strong>12月8日付けの毎日新聞朝刊は「東電：実質国有化へ、政府、公的資金1兆円注入」と一面トップで大きく報じた。東電は否定しているが、このような成り行きがきわめて現実性の高いシナリオであることは疑いの余地がない。原発事故にかかる災害補償の資金は「原子力損害賠償支援機構」からの支援で何とか目途が付くとしても、廃炉処理に要する1兆円を超える資金は電気料金の大幅値上げをしない限り賄いきれないからである。<br />
<br />
　時を同じくして、今年度の東洋経済「高橋亀吉記念賞」が長山浩章京都大学教授の論文「日本型電力事業再編の提案」に授与された。この研究は、①発送電分離、②地域分割の廃止、③全面小売自由化の施策を3段階に分けて電力再編の工程表を具体的に提示し、この電力再編が経済成長の起動力になるとする意欲的な提言である。<br />
<br />
　電力業界再編の大前提として、わが国の電力料金は、原発事故前においてすでに米国の2倍、韓国の3倍と高い水準にある原因を詳しく分析し、国際競争力のある産業に転換する方策を打ち出すことが肝要である。電力料金値下げの目標値を示すことで消費者の理解が得られ、電力株への投資家にも投資判断の材料となるからである。
</p>
<p>
<strong><br />
</strong><strong>１、高い電力料金</strong>
</p>
<p>
<strong>　</strong>まず、東電をはじめとするわが国の電力料金は他国に比べてどれくらい高いのであろうか。本年8月に資源エネルギー庁が公表した｢電気料金の各国比較について｣から米・英・韓国との2009年度の比較を図１として転載した。<br />
<br />
　これによると、日本の１ｋW時の家庭用電力料金は22.8セント（26.2円、同年の平均相場1ドル＝93.57円で換算）と米国の約2倍、韓国の3倍となっている。価格の国際比較は為替相場の変動に大きく左右されるが、その後の円高により、現在ではこの格差はさらに拡大している。<br />
<br />
　韓国については10月24日付けの「日経ビジネス」が「電力料3分の1の秘密」と題した特集記事で詳細に分析している。韓国では官営の電力公社が統括しているが、発送電は2001年に分離、発電は6社の子会社と独立系を含む民間発電会社から電力取引所を通じて競争入札で調達している。
</p>
<p>
<strong>　</strong>東電の経常経費を分解すると、総経費約5兆円（平成22年度、単独）のうち、人件費は4,300億円と総経費の9％を占めるに過ぎない。石炭・ガス・原子力などの燃料費は、近年の価格高騰により1.5兆円に膨らんでいるが、それでも30%を占めるに過ぎない（かつては15%程度であった）。残りの60%強が償却を含む設備関係費(33%)とその他経費(28%)で、これが極端に高い電力料金の元凶となっている。<br />
<br />
　設備の購入に競争入札はほとんど行なわれていないうえ、下請け業者への支払いなどもきわめて寛大と推測される。原発立地確保のための1件数十億円もするサッカー場や文化施設の寄付、オール電化推進の広告代、ワシントン・ロンドン・北京事務所の経費などなど、この膨大な｢その他経費｣の中身まさに伏魔殿である。これは、使った費用はすべて消費者に転嫁できる「総原価方式」の当然の帰結である。<strong><br />
<br />
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/111215DenkiRyoukinZu1.jpg" alt="111215DenkiRyoukinZu1.jpg" width="603" height="261" />
</div>
<br />
<br />
２、電力会社の高給与<br />
</strong>
</p>
　枝野経済産業相は9月26日に行なわれた原子力損害賠償支援機構の開所式で、「東電の役員報酬や社員の給与について、公務員や独立行政法人と横並びで当たり前」と述べ、徹底的なリストラが不可欠との認識を示した。
<p>
　至極当たり前の発言と受け止めたが、米倉経団連会長が直ちに「要求があまりにも一方的だ」と枝野大臣を強く非難したのには違和感を覚えた。経団連としても、国際的に見て法外に高い電力料金の大幅引下げと、その一助としての人件費カットを電力会社に要求するのが筋である。<br />
<strong><br />
　</strong>電力会社の月間平均給与は表１のとおり男性は金融業に次いで高く、女性は全産業のなかで際立って高い。平均給与は職種により勤続年限や平均年齢によって差がつくものの、電力は全産業平均より3割ほど高く、国家公務員の340万円、地方公務員の346万円よりも3割以上高い。
</p>
<p>
　電力会社のように公益性が高く、販売価格が公定されている企業の給与をどのように考えるべきか。参考となるのは、同様に公益性が高く診療報酬(医療費)が公定されている病院の給与である。全国公私病院連盟の統計（2010年）によれば、自治体病院の常勤職員の月間給与457百万円に対し、民間病院は380百万円と公的病院よりもかなり低い。病院業界とは逆に、民間電力会社の給与が国家公務員や独立行政法人よりも3割も高いのは、やはりどこかおかしい。<br />
<br />
　診療報酬の総額は内閣府で決定され、細目は中医協の審議を経て、厚労省で公定される仕組みとなっている。この中医協の場では医療提供側と消費者(患者)側を代表する同数の委員間で激しい論議の応酬が展開されている。これに対し、電力料金などについて経産省からの諮問に応えて審議をする電気事業審議会の委員は、20名中消費者代表は主婦連合会代表1名のみで、有識者も2名と少ない。残りは東電や関電の会長、これを支える産業界の代表が大多数を占めており、被告が裁判官を務めている観である。公定電力料金の決定に当っては、せめて診療報酬並みの客観的で公平な審議システムが確立されなければならない。審議に当っては、費用の中身をすべて吟味し、審議内容を国民に公開することが最低限必要である。
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/111215TakaiDenryokuryouHyou1.jpg" alt="111215TakaiDenryokuryouHyou1.jpg" width="600" height="206" />
</div>
<p align="right">
&nbsp;
</p>
<p align="right">
（<strong>日本個人投資家協会理事</strong><strong>　岡部陽二）</strong>
</p>
<p>
（2011年12月15日発行、日本個人投資家協会月刊紙「きらめき」2011年12月号所収）
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
]]>
      
   </content>
</entry>
<entry>
   <title>オリンパス財テク損失隠ぺい事件を踏まえての提言</title>
   <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.y-okabe.org/market/post_226.html" />
   <id>tag:www.y-okabe.org,2011://1.410</id>
   
   <published>2011-11-13T15:00:00Z</published>
   <updated>2012-01-22T01:03:03Z</updated>
   
   <summary><![CDATA[ &nbsp; &nbsp; &nbsp; 〇財テク損失隠ぺい事件の概要 　光学...]]></summary>
   <author>
      <name>okabe</name>
      
   </author>
         <category term="007証券市場論集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.y-okabe.org/">
      <![CDATA[<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/111115OlympusLogo.jpg" alt="111115OlympusLogo.jpg" width="200" height="150" align="right" />
&nbsp;
<p>
&nbsp;
</p>
<p align="center">
&nbsp;
</p>
<p>
<strong><br />
<br />
<br />
〇財テク損失隠ぺい事件の概要</strong>
</p>
<p>
　光学機器大手「オリンパス」の財テク失敗による損失補填工作に使われた複数のM&amp;A取引は、不正に関与したとみられる菊川剛前会長ら3人が主導していた。<br />
<br />
　同社は1980年代から日本株を中心とした財テクによる利益計上を続けてきたが、日経平均が1989年末につけた38,915円をピークに暴落に転じて以来、巨額の含み損を抱えるに至った。1990年代には、財テク投資残高を簿価(投資時の価格)評価で保有してきたものの、2001年3月期決算から、この種の投資金融商品は時価で計上するよう会計制度が変更され、含み損を一括計上する必要に迫られた。<br />
<br />
　同社は、損失を一括計上すれば「会社の決算や株価に影響を与える」と判断し、時価会計導入前の2000年3月期に金融資産整理損として約170億円を計上しただけで、大半を証券会社などからの入れ知恵により「飛ばし」として処理し、1,250億円に上る損失計上を先送りした。飛ばしの手法としては、含み損を抱えた不良資産をタックへヴンに設立した複数のファンド会社に簿価で売却、これらのファンドに対する出資金として計上するほか、銀行などを介在させたユーロ預金や外債の形で本社のB/Sに計上して時価評価を免れてきた。<br />
<br />
　この飛ばし不良債権を処理すべく、同社は英医療機器メーカー「ジャイラス」の買収を2008年2月に実施した際に、2006年6月にファイナンシャル・アドバイザー契約を締結した米投資助言会社アクシーズなどに約660億円もの過大な報酬を支払った。契約締結は、当時経営企画本部長の森久志前副社長と担当役員の山田秀雄常務（現監査役)の2人が審議し、菊川社長に報告して決定していたとされる。
</p>
<p>
　また、2006～08年に買収した環境リサイクルのアルティスなど売上合計が54億円程度の国内での中小企業3社の買収に734億円が投じられた。ほかにもITX社への投資など同様の取引がなされた疑惑も残っている。これらのM&amp;A取引に投入した資金の過半も巧妙に迂回させて1990年代に発生した有価証券投資などの損失約1,350億円の穴埋めに流用されていたことが判明している。<br />
<br />
　今回の不正経理問題のポイントは、①1990年代から続けられてきた有価証券投資（財テク）で出した損失計上の先送り（飛ばし）、②2008年の英医療機器メーカー「ジャイラス」買収で投資助言会社側に支払った巨額報酬などM&amp;A関連で捻出した資金で巨額の含み損を極秘裡に穴埋めした経理操作の2点である。<br />
<br />
　損失計上を意図的に先送りし、業績を良好に見せかけていたとすれば、違法な粉飾決算に当たる可能性がある。投資助言会社への巨額報酬などは、簿外で隠し続けてきた損失を表面に出さずに水面下で処理した偽装工作で、虚偽開示との見方が強い。
</p>
<p>
　この事件を一般のメディアが報じたのは、同社の2度にわたる社長交代のあと、高山新社長が10月27日に記者会見で情報の一部開示に踏み切った時点からである。ところが、7月20日に発行された阿部重夫氏が主宰する会員制総合情報誌&quot;FACTA&quot;8月号は「オリンパス無謀M＆A～巨額損失の怪、菊川体制の仮面を剥ぐ」と題して本件疑惑を詳細に分析、6月29日に開かれた株主総会に先立って同社に公開質問状を送りつけていた。10月14日に解任されたウッドフォード社長もこの記事の英訳を読んだとされており、本件の表面化にFACTA誌の告発が果たした役割には大きなものがある。
</p>
<p>
<strong>〇オリンパスの企業ガバナンス</strong>
</p>
<p>
<strong>　</strong>オリンパスの経営陣構成で異常なのは、一握りの財務マンが経営の中枢を占め、会長・社長・副社長などのポジションを独占してきた体制である。高山新社長の発言どおりとすれば、一般の社員だけではなく取締役会メンバーでもごく一部の関係者を除いて本件隠蔽の事実を知らなかったわけである。
</p>
<p>
　これは事件が発覚した場合に少数の個人に責任をとらせて「会社ぐるみ」ではなかったと主張するには都合のよい体制である。しかしながら、上場会社において、このように内部者までも容易に欺くことができる組織体制が許されてはならない。<br />
<br />
　当社の役員構成を見ると、取締役15名のうち社外取締役3名、監査役4名中社外2名と形の上では外部からの牽制機能も働くようになっている。また、外国人を社長にまで登用するといった国際化も進んでいる。<br />
<br />
　問題は社外役員人選のあり方にある。社外取締役3名のうち、一人は医師、一人はジャーナリスト出身で、もう一人は野村證券出身の林純一氏である。同氏は社外取締役就任前からオリンパスが子会社化したITX社の監査役も兼任しており、損失隠しの手法について種々助言をしてきたとも言われている。<br />
<br />
　2005年には、同年にノーベル経済学賞を受賞したロバート・マンデル氏を最初の社外取締役として迎え入れたが、同氏は上述の助言会社アクシーズのアドバイザーも務めており、その関係から紹介されたものと見られている。<br />
　<br />
　オリンパスにおいて社外取締役による経営監視がまったく機能しなかったのは、社外取締役も社長のお友達などの身内で固められているためである。社外監査役は一流会社の社長など経験者であるが、株式の持合い同様、監査役自ら経営内容のチェックをできる体制にはなっていない。
</p>
<p>
<strong>〇企業ガバナンス強化へ向けての提言</strong>
</p>
<p>
<strong>　</strong>今回の事件で、海外からも日本市場の透明性について疑念が寄せられているので、再発防止の観点から、最低限次のような法改正や東証規則の強化を求めたい。民主党の大久保議員が提唱している「公開会社法」の制定も一案である。
</p>
<p>
<strong>１、社外取締役については、人数を増やすことも必要ではあるが、「独立性」の担保が何にもまして重要である。<br />
<br />
　上場会社については欧米並みに過半数を社外とするのが理想であるが、過渡的には社外取締役の選任を義務化し、最低でも取締役5名に1人は社外独立(Independent)とすることが望ましい。<br />
<br />
　独立性については、上場会社の役員は除外するなど具体的な選定規準を設けて、事前に東証などに設置する審査委員会での承認を条件とすべきである。選定基準としては、利害関係者、とりわけ取引関係のあった銀行・証券の関係者は徹底排除するものでなければならない。</strong>
</p>
<p>
<strong><br />
</strong><strong>２、</strong><strong>監査役設置の公開会社においては、</strong><strong>3</strong><strong>名以上の監査役のうち半数以上を社外監査役とするように定められている。監査役についても取締役同様に独立性についての選定基準を強化すべきである。</strong><strong><br />
</strong><strong><br />
　具体的には、①最低</strong><strong>1</strong><strong>名の監査役は公認会計士の資格保持者であることを必須要件とする、②同一会社での財務担当の取締役経験者は不適格とするといった基準を導入すべきである。また、現在は取締役会の承認事項となっている会計監査法人選任の権限を監査役会に移すべきと考える。</strong>
</p>
<p align="right">
<strong>（</strong><strong>日本個人投資家協会理事</strong><strong>　岡部陽二）</strong>
</p>
<p align="left">
（2011年11月14日、日本個人投資家協会発行「きらめき」2011年11月号所収）
</p>
<p align="left">
&nbsp;
</p>
]]>
      
   </content>
</entry>
<entry>
   <title>レアメタルとレアアース</title>
   <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.y-okabe.org/stone/post_225.html" />
   <id>tag:www.y-okabe.org,2011://1.407</id>
   
   <published>2011-10-14T15:00:01Z</published>
   <updated>2011-10-21T04:33:57Z</updated>
   
   <summary><![CDATA[ &nbsp; 　10月15日(土)に銀行のOB会「井華会」にて「レアメタルとレ...]]></summary>
   <author>
      <name>okabe</name>
      
   </author>
         <category term="002石の趣味" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
         <category term="005雑文集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.y-okabe.org/">
      <![CDATA[<p align="right">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/111015RareMetal%26RareEarthLogo1.jpg" alt="111015RareMetal%26RareEarthLogo1.jpg" width="300" height="300" />
&nbsp;
</p>
<p>
　10月15日(土)に銀行のOB会「井華会」にて「レアメタルとレアアース」についての卓話をしました。その要旨をレジュメのスライドとともに掲載します。</p>
<a href="/pdf/111015.pdf" target="_blank">&rArr; スライドを見る(PDFファイル)</a>
</p>
<p>
　息子の岡部徹が執筆しました『高校生のための東大授業ライブ学問の入口』収録予定の「未来材料：チタン・レアメタル」の20ページの原稿（別刷としてスライドに引用）も配布しましたが、添付は省略します。チタン製品、リチウムの原石と純金属地金、最強力なネオジム磁石、ネオジム・ジスプロシウムの地金などの標本などをじかに見ていただきました。
</p>
<p>
１、卓話の前置き<br />
<br />
　金属資源の世界では、最近20年ほどの間に劇的な変化がいくつか起こっている。<br />
<br />
　一つは産業界で必要とされる金属材料の種類がきわめて多様化してきたことである。ことに、レアメタルの白金族、リチウム、インジウム、ネオジム、ジスプロシウムなどの需要が急増し、レアメタルの業界規模は世界で約20兆円、うち日本が3兆円程度を占める（鉄鋼は13兆円規模）までに急成長した。<br />
<br />
　二つ目は、金属資源の枯渇の可能性が高まってきたことである。ただし、枯渇の懸念はレアメタルではなく、銅・亜鉛・鉛などのベースメタルの方が大きい。ことに、銅の耐用年数は20～30年程度と推定されている。米国や日本では、現在年間一人当り10Kgの銅を消費しているが、中国では1.4Kg程度と少ない。これが先進国並みに増えると地球上に採掘可能な銅資源が枯渇する懸念が現実味を帯びてくる。<br />
<br />
　三つ目は、枯渇とも関連するが、供給面での安定性に疑問符がつけられたことである。レアアースについて見れば、昨年（2010年）９月に起こった中国との尖閣諸島での中国漁船衝突事件に端を発したレアアースの輸出停止問題は、広く一般社会に対しても、レアメタルなどの鉱物資源の安定供給確保が技術立国日本にとって不可欠であり、産業上、経済安全保障上も極めて重要であることを強く印象づける歴史的な出来事であった。需要増に加え、供給面での枯渇懸念と供給不安から、金属資源の価格はすべてが乱高下を繰り返しながらも長期的には高騰を続けるものと予想される。<br />
<br />
　四つ目は、地球規模での環境破壊問題に正面から取り組まなければならない状況になってきたことである。たとえば、白金族金属の鉱石から得られるプラチナやロジウムは、自動車の排ガス浄化に不可欠な触媒材料で、平均して1台に5グラム程度は必要である。ところが、プラチナは南アのもっとも含有量が豊かな鉱山でも1トン当り0.1グラムも含まれていない。したがって、自動車一台に必要なプラチナを鉱石から生産するには、自動車一台の自重よりも遥かに重い多量の鉱石が採掘して処理されているという事実は知られていない。東京の空気はきれいになるものの、他方南アではわずかに含まれている貴重な鉱石を選別するために大量の不要な脈石が処理されて膨大な量の廃棄物となって処分されているのである。<br />
<br />
　同様の事態は中国のレアアースについても起こっている。世界有数のレアアース鉱山であった米国のマウンテンパス鉱山が、2002年に閉山に追い込まれたのは、環境規制の厳しい米国で採掘・製錬する場合に発生する環境コストの負担が大きな要因であった。一方、経済的な成長戦略を優先した中国は、環境コストを度外視して、極めて低いコストでレアアースを生産し輸出し続けた。その結果、世界市場を独占することに成功したのである。本来価格に反映されるべき、環境保全コストを無視したのは中国の身勝手ではあるが、見かけ上のコストでの価格競争力という指標のみで供給者の優劣が決定される競争原理至上の考え方だけで対応してよいものであろうか。自分の庭先だけをきれいにするのではなく、地球規模での全体の環境保全を考えなければならない段階に差し掛かっているのではなかろうか。
</p>
<p>
２、スライドの目次
</p>
<p>
１、鉱物資源の概況<br />
（１）高騰する資源価格　①中国の爆食、②投機マネーの流入、③開発コストの増大<br />
（２）中国の粗鋼生産量・鉄鉱石・原料炭輸出入推移　生産量；10年間で6倍増<br />
（３）分野別金属素材の市況変動（2003～2009）　6年間でほぼ3倍<br />
（４）鉄鉱石～海上輸送の急増　95%が鉄鉱石（豪州-中国間）<br />
（５）金属材料の世界市場規模（重量では9割強、価格では8割弱が鉄）<br />
（６）鉄鉱石価格の推移(1)2009年まで、(2)2010年　2005年以降、過去のレベルの5倍弱に<br />
（７）銅～中長期的には需給逼迫　可採埋蔵量は30年<br />
（８）アルミニウム～電力価格高騰の影響大<br />
<br />
２、レアメタル<br />
（１）レアメタル（Specialty Metal、Minor Metal）の概要　71の金属元素のうち47～57<br />
（２）主要レアメタル17鉱種（重要性・希少性に基づく経産省の定義）<br />
（３）レアメタルの中国への依存比率　アンチモン、レアアース、タングステンの中国依存大<br />
（４）レメタルの特質　①産業のビタミン　②輸出入産業の活力源　③情報社会の落とし子<br />
（５）レアメタルの取引分類と市況の関係<br />
（６）１Kgの素材製造で発生する廃棄物とCo2の量　鉄が最小、金の廃棄物は2,000倍<br />
（７）レアメタルの王様；チタン　資源的には無尽蔵、トン当たりの製錬コスト100万円以上<br />
（８）地殻に存在する元素の量　チタンは9番目に多い元素金属、ニッケル、銅は希少<br />
（９）リチウム　イオン化傾向最大、金属中で最軽量<br />
<br />
３、　レアアース<br />
（１）レアアース（希土類）の概要　埋蔵量は豊富、中・露・米・豪に分布<br />
（２）レアアース17元素　ネオジム、ジスプロシウムはEVのモーター用永久磁石として不可欠<br />
（３）レアアース鉱床の種類　<br />
（４）希土類元素供給上の中国一国集中の実態　重希土類は中国のイオン吸着鉱に偏在<br />
（５）中国2大鉱床の代表的な希土類鉱物の組成（2007）<br />
（６）レアアースの中国依存を解決する方策　①新鉱山の開発　②代替資源の開発　<br />
　　③リサイクルによる都市鉱山の活用　④戦略的な備蓄など資源政策の確立　⑤研究者の人材養成
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/111015RareMetalLast%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%BC.jpg" alt="111015RareMetalLast%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%BC.jpg" width="274" height="209" />
</div>
]]>
      
   </content>
</entry>
<entry>
   <title><![CDATA[&lt;投資教室＞日本のソブリンリスク]]></title>
   <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.y-okabe.org/market/post_224.html" />
   <id>tag:www.y-okabe.org,2011://1.406</id>
   
   <published>2011-10-14T15:00:00Z</published>
   <updated>2011-10-17T00:07:20Z</updated>
   
   <summary><![CDATA[ &nbsp; &nbsp; 　 　8月6日に発表された米国の格付け会社スタンダ...]]></summary>
   <author>
      <name>okabe</name>
      
   </author>
         <category term="006国際金融論集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
         <category term="007証券市場論集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.y-okabe.org/">
      <![CDATA[<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/111015NihonnoSovereinRiskLogo.jpg" alt="111015NihonnoSovereinRiskLogo.jpg" width="240" height="240" align="right" />
&nbsp;
<p>
<strong><br />
<br />
</strong>&nbsp;
</p>
<p>
<strong>　<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
　</strong>8月6日に発表された米国の格付け会社スタンダード＆プアーズ社（S&amp;P）による米国国債のAAA最高格付けはく奪に続いて、8月24日にはムーディーズ社が日本国債の格付けをAa2からAa3（最上位から4番目）へ引下げた。
</p>
<p>
　ところが、両国の国債価格は図１に見られるように格下げ後に値上がりに転じ、10年物日本国債の利回りは9月以降も1%を割り込んだ史上最低に近い水準で推移している。10年物米国債利回りも2%を割り込む史上最低水準に下がっている。
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/111015Zu1Kokusai%20Rimawari.jpg" alt="111015Zu1Kokusai%20Rimawari.jpg" width="600" height="214" />
</div>
<p>
　<br />
　信用格付けの引下げを市場が好感するというのはおかしな現象であるが、これをメディアや市場関係者は次のような要因によるものと解説してくれている。
</p>
<p>
①ギリシャの債務危機の深刻化により、アイルランドや南欧諸国の国債が売られて軒並み10%を超える利回りでも買手がつかない状況が続いている。ユ－ロ建て債券売りの反動として、安全資産として円建てや米ドル建て債券が買われている。
</p>
<p>
②ギリシャ救済のもたつきに加え、米国の景気悪化を懸念した大量の資金が株売り、商品売りに転じ、流動性の高い日本や米国の国債買いに走っている。
</p>
<p>
③中国をはじめとする新興国を中心に世界各国が保有する外貨準備が本年6月末には10兆ドルに達したが、その運用先として日本国債が買増された。6月末時点での日本国債の外国人保有額は67兆円と保有比率7.4%に留まっていたが、8月の外国人買越し額は6.4兆円にのぼり、外国人保有比率はすでに8%を超えている。<br />
<br />
　最近の市場分析としてはいずれも的確であろうが、それにしても、先進国の中で最悪とされる財政状況のもとで、安定資産として円と日本国債が買われ、長期金利が低位安定を続けているのは何としても魔訶不思議な現象である。<br />
<br />
　日本の国内要因としても、長期デフレ経済のもとでは、実物資産の価値は下がる一方であるから、家計も企業もとりあえず流動預金として銀行に預けておくことが常態化し、行き場のない銀行の金融資産が、企業の資金需要低迷と相まって、国債の円滑な消化を支えてきたことは事実である。<br />
　<br />
　問題は、高齢化に伴う社会保障費に対する適切な政策対応がなされないまま、このような状況が何時まで持続可能かということである。　
</p>
<p>
　昨今のグローバル金融危機は、金融機関の損失に始まり、実体経済の後退を経て、先進国のソブリン危機に集約されつつある。EU諸国のソブリンリスク問題が一段落した後の市場で売り浴びせられるターゲットは間違いなく日本国債と米国債であろう。<br />
<br />
　日本国債が今のところ安泰である理由として挙げられているのは、ギリシャは70%、スペイン国債は50%以上が本国外の投資家(おもにEU各国の金融機関)によって保有されており、安定的な保有構造になっていないのに対し、日本国債は90%以上を国内投資家が保有しており、国内問題として処理可能であるとする楽観論である。<br />
<br />
　しかしながら、上述のとおり、外国人の保有比率はすでに8%を超えている。また、国債先物市場では30%程度のシェアを外国人が占めていることからしても、70兆円を超える外国人保有の国債が一斉に売り浴びせられた場合のインパクトには測り知れないほど大きなものがあろう。<br />
<br />
　日本の巨大な政府債務の背景については、さまざまな説明がなされているが、マクロ的な経済指標の国際比較から見るかぎり、急速な高齢化進展に伴う社会保障の巨額な出費を増税ではなく、国債発行によって賄ってきたため、低成長とデフレ下において歳入と歳出のギャップ拡大の基調が定着してしまったことに主因がある。<br />
<br />
　2005～09年5年間の一般会計における社会保障費の平均増加率は7.6%である一方、同期間の税収の伸びは平均▲2.8%であった。この税収減を国債で穴埋めしてきたため、急増する社会保障費を支えるために国債への依存度が急速に高まり、09年度以降は税収よりも多額の国債が発行されている。この結果、表1のとおり2010～11年度では国債費を除く一般歳出のじつに53%強を社会保障費が占めるに至っている。<br />
<br />
　国民の多くは「国民年金の国庫負担を1/3から1/2に引上げる」とか「高齢者医療制度では財源の1/2を国庫負担とする」と聞けば、当然にその原資は税金で賄われるものと理解しているが、現実には国債が増発されて政府債務が増えるだけのことである。9月6日付けの日経紙「経済教室」の解説によると、表2に掲げたとおり「2009年度の試算では、社会保障費の40%超を赤字国債に依存、国民負担を先送りしているだけ」との実態が明らかにされている。
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/111015NihonnoSovereinRiskHyou1%262.jpg" alt="111015NihonnoSovereinRiskHyou1%262.jpg" width="600" height="279" />
</div>
<p>
　<br />
　政府債務がGDPの200%を超えて今後も増え続けるという異常事態は永続し得ないことは誰の目にも明らかである。日本国債の価格暴落を回避する手段を講ずるとすれば、円への信認が強いこの2～3年のうちにプライマリー・バランスの均衡を実現する以外に手立てはない。
</p>
<p>
　　「社会保障と税の一体改革」は遅きに失した恨みはあるものの、幸い野田総理は増税路線一本槍を明確に打ち出しており、その貫徹に期待したい。何はともあれ、「現在世代の受益分は将来世代の負担にしない」という原則の確立を政府に要請したい。
</p>
<p align="right">
<strong>（</strong><strong>日本個人投資家協会理事</strong><strong>　岡部陽二）</strong>
</p>
<p align="left">
（2011年10月15日、特定非営利活動法人日本個人投資家協会発行「きらめき」所収）
</p>
]]>
      
   </content>
</entry>
<entry>
   <title>＜投資教室＞米国債格下げは銀行リスクを増大</title>
   <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.y-okabe.org/market/post_223.html" />
   <id>tag:www.y-okabe.org,2011://1.405</id>
   
   <published>2011-09-14T15:00:00Z</published>
   <updated>2011-09-15T23:09:42Z</updated>
   
   <summary><![CDATA[ 　 &nbsp; &nbsp; &nbsp; 　先月6日に米国の格付け会社スタ...]]></summary>
   <author>
      <name>okabe</name>
      
   </author>
         <category term="006国際金融論集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
         <category term="007証券市場論集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.y-okabe.org/">
      <![CDATA[<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110915BeikokusaiLogoUSAflag-thumbnail2.jpg" alt="110915BeikokusaiLogoUSAflag-thumbnail2.jpg" width="200" height="145" align="right" />
<p>
　
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
　先月6日に米国の格付け会社スタンダード＆プアーズ社（S&amp;P）が米国国債のAAA最高格付けはく奪を発表するや、世界の株式市場が乱高下し、金やスイス・フラン、日本円が買い上げられた。株式の中でも、欧米では銀行株の下げが大きく、米国最大の銀行であるバンク・オブ・アメリカの株価が下図1のように急落、年初の最高値$15.31から$6.01まで6割強下落した。その後、バンカメは従業員3万人の削減を発表、ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハザウェイから50億ドルの出資を引き出して、とりあえずは苦境から脱している。
</p>
<p style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110915Zu1bankofAmericaKabuka2.jpg" alt="110915Zu1bankofAmericaKabuka2.jpg" width="300" height="192" />
</p>
<p>
<br />
　欧州でも、たとえばフランス5大銀行の一つであるソシエテ・ジェネラルの株価は、下図2のとおり8月10日に22%安と、20年振りの大幅下落となった。本年3月の高値&euro;52.2から8月の安値&euro;20.2までやはり6割強下落し、9月14日には同行株のムーディーズ格付けがAa3に引下げされた。欧州の銀行株はムーディーズが3月にスペイン、7月にポルトガルとアイルランドの国債挌付けを引下げたことを受けて軟調に推移していたが、直接的にはほとんど関係のない米国債の格付引下げにこれほど大きく影響を受けたのは何故であろうか。
</p>
<p style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110915Zu2SogenKabuka2.jpg" alt="110915Zu2SogenKabuka2.jpg" width="300" height="192" />
</p>
<p>
　<br />
　米国国債格下げと銀行株の株価崩落の因果関係を紐解くのは難しい。米国国債の価格自体は、格下げにもかかわらず、強い買い需要に支えられて値を上げており、米国国債を保有している銀行の収益圧迫要因にはなっていない。<br />
<br />
　銀行収益への悪影響として考えられるのは、第一に今後の国債増発が抑えられるため、実体経済が一段と悪化する懸念、第二に財政悪化から住宅市場への刺激策が期待できず、劣化している銀行の住宅ローンがさらに劣化して損失計上を強いられる懸念である。さらに、第三には長短金利差が急速に縮小してきたために、短期資金を長期債に運用して利益を上げることが困難になってきたことにより、銀行の収益が悪化する懸念といった連想から、市場は株売り、米ドル売りに走ったものと分析されている。<br />
<br />
　2年前のリーマン・ショック時に米政府が大型財政出動を決めた際に、あるコラムニストは「政府がわれわれを世界大不況から救済することにより、わが国を破産させた」と喝破した。米政府は、それまで年間4,000億ドルであった財政赤字を1兆8,000億ドルに引上げ、連銀もバランス・シートを8,000億ドルから一挙に3兆ドルに膨らませた。まさに、銀行やGMの民間債務が政府債務に切り替わっただけで、雇用は増えず、景気は低迷したままで、このコラムニストの予言が現実のもとなったのである。<br />
<br />
　先進国政府が発行する国債は、民間債のようにデフォールト（公的債務不履行）する懸念のない無リスクの優良資産であると喧伝されているが、実際には国債の歴史はデフォールトの歴史そのものである。<br />
<br />
　ほとんどの主権国家は、これまで210年間に少なくとも一回はデフォールトを起こしている。1800年から2010年までの間に対外デフォールトは250回、国内デフォールトは68回も起こっている。この間にドイツとポルトガルは3回、スペインとギリシャは6回デフォールトしている。この210年間に一度もデフォールトを起こしたことのない欧米先進国は、米英とイタリア、スウェーデンの4カ国のみである（ジャック・アタリ著「国家債務危機」より）。<br />
<br />
　以前は新興国の財政を先進国がファイナンスしてきたが、現在では中国をはじめとする新興国が米国などの先進国の財政を支える構図に状況に変わってきた。国債格付けにおいても、下表1に見られるように、8月24日に発表されたムーディーズによる日本国債格下げの結果、日本と中国が並んでいるが、何れは逆転しよう。<br />
<br />
　もっとも、国債の発行規模がどこまで膨れ上がれば、デフォールトするかを予測することは、きわめて難しい。多くのエコノミストは「このレベルを超えると問題が起こる」という理論値の根拠として「国家債務の対GDP比」を主張し、投資家もこれに過剰反応しているが、フローの概念であるGDPとストックの債務を対比することにはあまり意味がない。ギリシャはこの対GDP比率が150%を超えた段階で破綻したが、200%に近い日本はまだ破綻していない。英国の国家債務は19世紀初と第二次世界大戦の1945年に対GDP比で250%まで増大したものの、何とか凌いだ前例もある。<br />
<br />
　国債デフォールトの可能性は、その保有構造にかかっている。海外投資家の保有比率が高ければ、海外からの売りを国内で吸収できずに破たんする。また、国債はデフォールトしなくても、銀行の保有比率が高いと、国債価格が1割も下がれば、ほとんどの銀行が破綻する。一般の銀行貸出については、自己資本の5%以内といった一社貸出限度が設けられているが、国債消化を阻害するような規制を政府が行なう謂れはなく、国債保有は青天井で認められているからである。日本の場合、全国銀行の国債保有高は本年6月末で150兆円を超え、自己資本(純資産)合計38.4兆円のじつに400%となっている。この大量保有リスクこそが国債の格下げが銀行の株価下落に繋がる所以である。<br />
<br />
　一橋大学の小黒一正准教授が8月16日付けの日経「経済教室」で解説されている下図3の｢国民総所得（GNI）に対する国民貯蓄｣のトレンド推移による見分けは分かり易い。図3によると、90年代以降、高齢化の進展で国民貯蓄は減少に転じ、2009年にはマイナスとなった。これは、政府貯蓄の赤字幅が民間貯蓄の黒字を上回ってしまった結果である。この傾向が続けば、この比率が2020年には日本・米国ともに現在のギリシャ並みとなり、両国国債のデフォールト・リスクが高まることは間違いない。英・独・仏や韓国にはこの懸念は今のところ存在しない。<br />
<br />
　日本国債のデフォールトを回避するには、大幅増税と社会保障の抑制で国家のあり方を根本から改める以外にない。これについては号を改めて論じたい。
</p>
<div style="text-align: center">
<img style="width: 593px; height: 245px" src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110915Hyou1%26Zu3Kokusaikakusage.jpg" alt="110915Hyou1%26Zu3Kokusaikakusage.jpg" width="595" height="207" />
</div>
<p align="right">
<br />
<br />
（日本個人投資家協会理事　岡部陽二）
</p>
<p>
（2011年9月15日、日本個人投資家協会発行月刊紙「きらめき」2011年9月号所収）
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
]]>
      
   </content>
</entry>
<entry>
   <title>＜書評＞慶應義塾大学教授印南一路、東海大学准教授堀真奈美、自治医科大学助教古城隆雄著「生命と自由を守る医療施策」　</title>
   <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.y-okabe.org/medical/post_222.html" />
   <id>tag:www.y-okabe.org,2011://1.404</id>
   
   <published>2011-08-28T15:00:00Z</published>
   <updated>2011-09-06T11:12:28Z</updated>
   
   <summary><![CDATA[ &nbsp; 　今なぜ医療に「理念」が必要か。何が医療の理念であるべきか。多く...]]></summary>
   <author>
      <name>okabe</name>
      
   </author>
         <category term="008医療経済論集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.y-okabe.org/">
      <![CDATA[<p align="right">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110829ShohyouIryouseisakuLogo.jpg" alt="110829ShohyouIryouseisakuLogo.jpg" width="240" height="353" />
&nbsp;
</p>
<p>
　今なぜ医療に「理念」が必要か。何が医療の理念であるべきか。多くの時間や労力を政治的な利害調整に費やすよりも、医療保障のあり方そのものについて議論をし、「理念に基づく創造的な問題解決」がなされるべきではないか。<br />
<br />
　このような問題意識に立脚して、著者らは、医療保障制度の歴史的展開を回顧し、医療提供体制と医療費保障制度にまたがる理念としての二段階理念の根拠を憲法論と現代正義論の立場に求めている。この理念を踏まえて、現在の医療保障制度改善に向けての具体的な政策提言を行なった500ページを超える重量感ある力作である。<br />
<br />
　ある物事についてのこうあるべきだという根本の考えである理念は、基本法には通例盛り込まれている。昭和23年に制定された医療法にはこれが欠けていたが、平成4年の改正で「医療は生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし～～」とする理念規定が第1条の2として追加された。
</p>
<p>
　これは憲法13条の「すべて国民は個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については（中略）最大の尊重を必要とする」との規定から導き出されたものと考えられ、医療における生命と人権擁護の必要性・自己決定権の尊重を促す趣旨と解釈されている。<br />
<br />
　しかしながら、その後の医療政策の展開は、関係者間の利害調整に終始した感が強く、理念に基づいた議論は為されていないのではないかというのが、著者らが共有している危機意識である。
</p>
<p>
　著者らの提言の骨子は、国が関与して保障すべき医療は、万人の生命保持と幸福追求といったそれぞれの目的に即した救命医療と自立医療の二つであるとしている。制度改革に伴う利害対立の厳しさと「実務的に機能する理念」を前提にしているので、提言の内容は一見常識的なものばかりに見える可能性があるが、救命医療と自立医療を定義する医療分類は大胆で、異論が出るかもしれない。極論を求める改革論者にはもの足りないかも知れないが、実際に保険給付範囲の見直し(拡大と縮小)の議論が出れば、関係者には大きな影響を与えるであろう。<br />
<br />
　本書では、理念に関連した歴史的な出来事などが24のコラムで懇切に解説されている。たとえば、「医療費亡国論の真相」では、医療費が膨張すると国が潰れるという議論はそもそも根拠希薄であることに加え、吉村仁氏(元厚生省事務次官)が医療費亡国論を主唱したという事実はないと検証している。同氏が昭和58年(保険局長時代)に社会保険旬報1424号に投稿した論文では、当時の医療費をめぐる情勢に関する視点として、①医療費亡国論(医療費増大&rarr;社会の活カ低下)、②医療費効率逓減論(医療費増大&rarr;投入される医療費の効率が逓減)、③医療費需給過剰論(需要・供給両面に無秩序な過剰かある)という三つの考え方かあると整理し、それぞれへの対応をまとめているだけである。もっとも、評者はこの当時から「医療費は財政問題である」と喝破された吉村氏の先見性は高く評価されて然るべきと考えている。<br />
<br />
　とまれ、本書の時宜を得た問題提起は貴重であり、これを契機に理念論を軸とした医療改革論争が活発に展開されることを期待したい。
</p>
<p align="right">
（評者；医療刑事研究機構　副所長　岡部陽二）
</p>
<p>
■東洋経済新報社刊、定価；本体3,800円＋税
</p>
<p>
（2011年8月29日、㈱法研発行「週刊社会保障」第65卷2642号p34所収）
</p>
]]>
      
   </content>
</entry>
<entry>
   <title>＜投資教室＞今こそ規制改革に火を再び</title>
   <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.y-okabe.org/market/post_220.html" />
   <id>tag:www.y-okabe.org,2011://1.402</id>
   
   <published>2011-08-14T15:00:00Z</published>
   <updated>2011-08-18T00:07:25Z</updated>
   
   <summary><![CDATA[ &nbsp; &nbsp; &nbsp; 　 &nbsp; &nbsp; &n...]]></summary>
   <author>
      <name>okabe</name>
      
   </author>
         <category term="005雑文集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
         <category term="007証券市場論集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.y-okabe.org/">
      <![CDATA[<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110815KiseikaikakuLogo.jpg" alt="110815KiseikaikakuLogo.jpg" width="240" height="317" align="right" />
&nbsp;
<p>
&nbsp;
</p>
<p align="center">
&nbsp;
</p>
<p>
　
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
　『私たちは今、長い衰退のトンネルの中にいる。90年代初頭のバブル崩壊から約20年、日本の経済は低迷を続けている。成長度合いでは、アジア各国、アメリカをはじめ欧米諸国にも大きく遅れをとった。経済は閉塞感に見舞われ、国民はかつての自信を失い、将来への漠たる不安に萎縮している。国全体が輝きを失いつつある。（中略）
</p>
<p>
　失敗の本質は何か。それは政治のリーダーシップ、実行カの欠如だ。過去10年間だけでも、旧政権において1O本を優に越える「戦略」が世に送り出され、実行されないままに葬り去られてきた。その一方で、政官業の癒着構造の中で、対症療法的な対策が続いてきた。
</p>
<p>
　今、最も必要なのは、日本の将来ビジョンを明確に国民に示した上で国民的合意を形成し、その目標に向かって政策を推し進めることのできる政治的リーダーシップだ。1OO年に一度といわれる経済危機の中で、国民は旧来の「しがらみ」を脱ぎ捨て、自らの投票行動で民主党政権を選んだ。新政権の誕生は、国民のための経済の実現に向けて舵を切る、100年に一度のチャンスである。』
</p>
<p>
　これは、一昨年12月に政府が「新成長峨略」として打ち出した諸施策の基本となる現状認識と新需要創造に向けてのリーダーシップ宣言であり、正鵠を得ている。
</p>
<p>
　日本経済の低迷振りを一人当りGDP（購買力平価による米ドル換算、2010年）で見ると、日本は33.8千ドルと、IMF統計による先進国34ヵ国中21位にまで下がり、シンガポール56.5千ドル、香港45.7千ドル、オーストラリア39.6千ドル、台湾35.2千ドルの後塵を拝している。先進34カ国平均との対比でも、下図に示したとおり日本が平均値を上回っていたのは1990年から96年までの7年間のみで、その後は平均値を大きく下回っている。IMFはこの下方格差の拡大が続くものと予測している。
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110815KiseikaikakuZu.jpg" alt="110815KiseikaikakuZu.jpg" width="600" height="302" />
</div>
<p>
　<br />
　菅総理が掲げた「強い経済、強い財政、強い社会保障」といった欲張った目標を一体的に実現するためには、いかなるプロセスで、いかなる優先順位で、いかなる課題を解決していくべきであろうか。菅総理は、まず「強い社会保障」をまず作る必要があるという立場で、まず「税と社会保障の一体改革」で消費税率を引上げるべきとの方針を鮮明に打ち出した。消費費税率引上げによる財源を、高齢者中心の社会保障拡大・充実に振り向けるとすると、財政健全化や経済成長には結びつかない。
</p>
<p>
　過去10年間年平均2.8%と日本の2倍のペースで実質GDPを伸ばし、一人当りGDP38.0千ドル（2010年）を実現したスウェーデンが採ってきた政策は、高福祉や社会保障は、「強い経済」すなわち高い労働生産性や国際競争力の果実としての高成長が実現できて初めて持続可能になるという考え方に立脚している。優先順位は、「強い社会保障」や「強い財政」ではなく、まず「強い経済」を作ることにある。
</p>
<p>
　「強い経済」を作るためにスウェーデンが基本としてきた政策は、規制改革によるビジネス・インフラの競争力強化とイノベーションの促進である。スウェーデンは労働者の再教育とIT基盤の整備を梃子として、新規起業の奨励と非効率企業の淘汰とを通じ、産業構成を大きく変換してきた。社会保障はそのために必要なインフラとの考え方が基本で、失業保障や労働者の再教育、子育て支援などに過半が使われ、高齢者向けは5割以下となっている。こうしたスウェーデンの魅力に世界中からヒト、モノ、カネが引きつけられて、外国からの投資も盛んである。
</p>
<p>
　日本が学ぶべきことは、参入規制を大幅に撤廃し、ビジネス・コストを徹底的に引下げることである。これをやらないと、日本のグローバル企業もますます海外シフトを加速させざるを得ない。
</p>
<p>
　深尾京司一橋大学教授の研究「日本経済再生の原動力を求めて」によれば、雇用創出の原動力は、サービス産業を中心とした成長産業における若い独立系企業や外資系企業である。要するに、雇用創出の決定要因として企業の年齢が若いことが決定的に重要である。通信・金融・その他サービスといった産業では、若い企業の雇用シェアが高い。したがって、農業・医療・介護・エネルギーといった既得権益保護一辺倒の産業分野で、規制緩和、ことに安全性担保に名をかりた新規参入規制を撤廃する政策で、若い優良企業が成長できるような環境を作ることが必須である。
</p>
<p>
　「いま、農家の大半は兼業でしよう。農業をやっているのは、じいちゃん・ばあちゃん・おかあちゃんで、一家の大黒柱のご主人は、みな外に働きに出ている。農家の家計を支えているのは、工場やわれわれの会杜に働きに来ている大黒柱ですよ。
</p>
<p>
　でも、日本がFTAに躊躇していると、われわれ中小企業は韓国など他のアジアの国々の企業に国際競争力で大きく水をあけられ、倒産に追い込まれる。潰れなくとも、中国などに海外移転して、安い労働力を活用して生き残りをはかるしかなくなる。そうなれば、家計を支える大黒柱の収入も入ってこなくなり、政府から戸別所得補償をもらっても農家の実質的な収入は減り、FTAに加わった場合より、むしろ、農家の疲弊につながりかねません。どうして、こんな簡単な道理を中央では分かっていただけないのか、不想議です」（古賀茂明著「日本中枢の崩壊」p121より引用）<br />
<br />
　「FTAに参加して農産物の関税を全廃されれば、農家は大損を蒙り、輸出産業は中小でも恩恵に浴する」といった議論がまことしやかに行なわれているが、古賀氏によれば、農家の7割を占める兼業農家は民主党の戸別所得補償政策によって職を失い、却って損をするのが、現実である。彼らを雇用している中小企業経営者は「なぜ、農家だけを助け、中小企業の利益は考えないのか」と憤っている。彼らは、身勝手で不服を洩らしているわけでない。兼業農家の保護政策が間違っているのである。
</p>
<p>
　菅政権の後に、どのような首相が誕生するにせよ、今こそあらゆる産業分野について新規参入規制を撤廃し、震災特区のような規制緩和は直ちに恒久的に全国に拡大するといった抜本策を講じて、活力のある経済再生に取り組んでもらいたい。
</p>
<p align="right">
<strong>（</strong><strong>日本個人投資家協会理事</strong><strong>　岡部陽二）</strong>
</p>
<p align="left">
（2011年8月15日発行、日本個人投資家協会月刊誌「きらめき」所収）
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110815KIseikaikaku.jpg" alt="110815KIseikaikaku.jpg" width="240" height="339" />
</div>
]]>
      
   </content>
</entry>
<entry>
   <title><![CDATA[&lt;投資教室＞TPP・FTAの締結を急げ]]></title>
   <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.y-okabe.org/finance/tppfta.html" />
   <id>tag:www.y-okabe.org,2011://1.401</id>
   
   <published>2011-07-14T15:00:00Z</published>
   <updated>2011-08-16T13:00:45Z</updated>
   
   <summary><![CDATA[ &nbsp; &nbsp; 　 　TPP（Trans-Pacific Stra...]]></summary>
   <author>
      <name>okabe</name>
      
   </author>
         <category term="006国際金融論集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
         <category term="007証券市場論集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.y-okabe.org/">
      <![CDATA[<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110715FTATPPLogo.jpg" alt="110715FTATPPLogo.jpg" width="320" height="207" align="right" />
&nbsp;
<p align="center">
&nbsp;
</p>
<p>
　<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
　TPP（Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement、環太平洋戦略的経済連携協定）はブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポールの4カ国が参加して2006年5月に発足した自由貿易協定であり、この協定はAPEC加盟国に開放されているため、当初参加国に加え、米国、豪州、ペルー、ベトナム、マレーシアの5カ国が新規参加を表明し、本年6月15日に交渉を開始、11月までの妥結を目指している。TPPは関税については例外品目なく100%自由化を実現した質の高いFTAである。
</p>
<p>
　FTA（Free Trade Agreement）は2国間ないしは地域包括的な多国間の関税相互撤廃協定である。現在､世界で170を超えるFTAが結ばれている。
</p>
<p>
　菅政権はTPP参加を「平成の開国」とぶちあげて前向きの取り組みを表明したが、党内外の反発に逢い、大震災後はTPP参加先送りを表明している。わが国はすでにアセアン諸国とは2国間協定を締結しているので、米国と豪州との新規協定に大きな意味がある。2国間のFTAでは表１で3番目に大きな貿易相手国であるEUが最重要国である。
</p>
<p>
　日本は従来、WTOでの多数国の枠組みを重視し、2国間での関税同盟には否定的であったため、他国に比べても大きく出遅れている。しかしながら、FTAはWTOのマルチ交渉に比べ合意形成が容易なことやWTOの農業協定と比べると格段に自由度が高いことから、WTO交渉が停滞気味である一方、先進国や中韓は表1に見られるように合意の容易なFTA締結に傾斜する方向に急速に進んでいる。<br />
　<br />
　FTA交渉においては、今月1日にEUとの契約が発効した韓国が日本に２廻りほど先行している。韓国は最近2年ほどでFTA網の拡充を着々と進め、今年の貿易額は、昨年比1割以上増えて、1兆ドル（約80兆円）の大台に乗る見込みである。中でもFTAを締結した国・地域との貿易額は、FTA締結前より7割増加した。
</p>
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110715FTATPPHyou1.jpg" alt="110715FTATPPHyou1.jpg" width="600" height="285" />
<p>
　
</p>
<p>
　わが国は2002年1月にシンガポールと結んだFTAが第1号であるが、シンガポールは農業セクターがほとんどないことから、農業産品についての実質的な関税撤廃を伴うFTAとしては､2005年4月に発効したメキシコが第1号となった。次いでアセアン7ヵ国と、チリ、スイスとFTAを締結済みながら、FTAの貿易カバー率は表1にあるとおり16%と、米、EU、韓国に比して極端に低い。
</p>
<p>
　政治家の多数も、財界の一部を除いて世論も、TPPやFTAに消極的であるのは、わが国は輸出入貿易をこれ以上増やす必要はないという内向き志向の強まりと農業など規制で保護されてきた既得権益死守のキャンペーンが奏功してきた結果である。
</p>
<p>
　菅総理の「第三の開国」論に対しても、時代錯誤ではないかといった批判的なコメントが目立ったが、菅総理の焦燥感は決してそう大袈裟ではない。筆者としては、貿易を増やさなければ、わが国はますます世界から取り残されて孤立した「ガラパゴス化」に向かうしかないという危機意識の喚起を促したい。
</p>
<p>
　わが国の輸出額は着実に伸長し、対GDPの輸出比率も1990年代には一時10%を割り込んだものの、その後回復して近年は12～14%台で推移している。しかしながら、世界全体の輸出依存度は1990年までは18～20%で推移してきたところ、表2に示したとおり、2000年代初には25%を超え、2007～2008年には30%に近づいている。輸出入の絶対額の伸びが世界全体の平均では6%程度に対し、日本の伸びは精々3%程度であるため、全世界と日本の貿易（輸出）依存度の格差は2000年までは年々開く一方であった。その後、この格差は若干縮小したが、日本の名目GDPがほとんど増えないので、世界貿易に占める日本のシェアは減少の一途を辿っている。
</p>
<p>
　この結果、マクロデータで見る限り、最近の日本は世界の中でもっとも貿易に依存する比率の低い内需型国家となり、国際的には非貿易立国の国と見られている。国連統計「名目財貨・サービス輸出の対GDP比」によれば、2009年の日本の輸出依存度は12.5%（表2の13.8%は会計年度）で、219の国・地域の中で195位である。下から数えて26位であるが、この中に入っている大国はブラジル（11.3%、202位）、米国（11.1%、203位）だけである。韓国は49.9%、中国は39.2%と対GDP比では日本の3～4倍の輸出をしている。経済制裁を受け続けてきたキューバでも19.9%と高い。
</p>
<p>
　ところが、6月18日付けの日経「こどもニュース」での｢日本は資源が少ないから、海外から原料を輸入して、その原料で作った輸出する加工貿易が得意で、1960年代半ば以降はずっと輸出が盛んであった｣との解説記事に、わが目を疑った。
</p>
<p>
　日本はすでに世界の中で貿易依存最低の国であるという厳然たる事実を無視して、マスコミまでが「日本は貿易立国である」と誤った認識を持っているようでは、TPPやFTAの推進派は多勢に無勢で苦戦を免れない。
</p>
<p>
　日本からの輸出が世界平均に比して伸びない理由には、種々の事情があるものの、その中では輸出相手国が課している関税障壁が大きい。EUは家電製品の輸入に対し14%、乗用車には10%の関税を課している。FTAを締結してこれを撤回して貰うには、コンニャクイモ1,706%、コメ778%、小豆403%、バター360%といった法外に高いわが国の農産品に対する輸入関税を縮減・撤廃するしかない。TPPに参加すれば、農業生産額8.5兆円のうち、4.1兆円を失うと農水省は予測しているが、これが事実とすれば、国民一人当り3万円の補助金を現に農家に差し上げていると言うことである。
</p>
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110715FTATPPHyou2.jpg" alt="110715FTATPPHyou2.jpg" width="600" height="112" />
<p align="right">
<strong><br />
（</strong><strong>日本個人投資家協会理事</strong><strong>　岡部陽二）</strong>
</p>
<p align="left">
（2011年7月15日、日本個人投資家協会発行「きらめき」2011年7月号所収）
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
]]>
      
   </content>
</entry>
<entry>
   <title>＜書評＞デイヴィッド・マーシュ著・田村勝省訳「ユーロ～統一通貨への道のり、その歴史的・政治的背景と展望」</title>
   <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.y-okabe.org/finance/post_218.html" />
   <id>tag:www.y-okabe.org,2011://1.399</id>
   
   <published>2011-06-30T15:00:00Z</published>
   <updated>2011-07-03T08:24:55Z</updated>
   
   <summary><![CDATA[ &nbsp; &nbsp; &nbsp; &nbsp; &nbsp; &nbs...]]></summary>
   <author>
      <name>okabe</name>
      
   </author>
         <category term="006国際金融論集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.y-okabe.org/">
      <![CDATA[<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110701EuroLogo.gif" alt="110701EuroLogo.gif" width="240" height="361" align="right" />
&nbsp;
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
　　｢序文｣の冒頭に、通貨統合を含む欧州連合（EU）の創設を定めたマーストリヒト条約協議が1991年12月にまとまった後の記者会見で、当時のヘルムート・コール独首相が「英国も新通貨ユーロに当初から参加するであろう」と述べたこと対し、著者が疑義を挟み、コール首相と賭けをしてワイン6本をせしめたという実話が出てくる。この年の9月にジョージ・ソロスが英ポンドを売り浴びせ、英国はかなり長期にわたって欧州通貨間の相場を固定してきたEMS離脱を余儀なくされ、ユーロには参加しなかったからである。<br />
<br />
　ソロスを中心とする投機筋は、これに勢いを得て、リラやペセタも切下げに追い込んだが、フランス・フランはドイツの断固たる決意で守り抜かれた。本書に詳しく描かれているこの時のミッテラン仏大統領とコール独首相間の虚々実々のやり取りは、じつに興味深い。
</p>
<p>
　著者自身も述べているように、本書は難解な金融問題を扱った本ではない。ユーロが誕生する過程からその将来について、政治的・歴史的な側面を幅広い視点から描いている。巻末に収録されている膨大な注からもそれは明らかである。執筆にあたり著者は，政治や金融政策において重要な地位にあった人たちに直接会って話を聞くだけでなく、公文書館にある未公表のものを含む多数の資料や著者自身の経験を、正確さを期するために慎重に検討している。著者自身、「真正な歴史的記録として有効であることを自負している」と述べ、長年にわたるファイナンシャル・タイムズの記者･主幹としての経験が遺憾なく発揮されている。
</p>
<p>
　検証はユーロ誕生の物語を19世紀に遡って行なわれ、その後、金本位制、2回の大戦、ヨーロッパ共同体の発足、ドイツ統一などを経て、現在にいたるまでが詳細に描かれている。さらに、今後の課題である南北不均衡への対処や英国の微妙な立場を、ユーロ支持者、懐疑派、そしてユーロ圏外など、様々な立場の意見を広範囲にわたって分析している。ユーロの誕生とその後の発展に重要な役割を果たした人達の発言や書簡が数多く引用され、時にはそのような人達の臨場感満点の会話がシナリオ風に記述されている。
</p>
<p>
　ギリシャ危機に端を発したユーロ危機の収束にはまだ時間を要しようが、ユーロが齎した多大な利益は否定できない。わずか10年あまりの実験でユーロの成否を語るのは時期尚早である。ただ、通貨ユーロを金融や財政の問題に矮小化してはいけない。20世紀の前半に独仏が2度も戦火を交えた反省を踏まえた戦争か平和かという大きな国際政治のうねりが背景にあることを本書は教えてくれている。
</p>
<p>
　評者はマーストリヒト条約調印の1992年までロンドンに13年余駐在し、日本に帰る都度、ECからEUへの発展だけではなく、通貨統合も2000年までに完成すると説き続けたが、ほとんどの方から「そんなことは起こらないでしょう」と冷笑され続けていた。この通貨統合実現に向けてこれだけ多くのドラマが演じられていたことを本書で再認識し、今昔の感にたえない。
</p>
<p align="right">
（評者；元住友銀行専務取締役）
</p>
<p align="left">
（2011年7月1日、外国為替貿易研究会発行「国際金融」第1226号p59所収）
</p>
]]>
      
   </content>
</entry>
<entry>
   <title>＜投資教室＞東電賠償債務問題のポイント</title>
   <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.y-okabe.org/market/post_216.html" />
   <id>tag:www.y-okabe.org,2011://1.396</id>
   
   <published>2011-06-14T15:00:00Z</published>
   <updated>2011-08-16T07:30:27Z</updated>
   
   <summary><![CDATA[ &nbsp; &nbsp; 　 &nbsp; &nbsp; &nbsp; 　政...]]></summary>
   <author>
      <name>okabe</name>
      
   </author>
         <category term="005雑文集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
         <category term="007証券市場論集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.y-okabe.org/">
      <![CDATA[<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110615Japan-Nuclear-Plant-MeltdownLogo.jpg" alt="110615Japan-Nuclear-Plant-MeltdownLogo.jpg" width="320" height="194" align="right" />
&nbsp;
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
　
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
　政府は東京電力福島第一原発事故の損害賠償について東電を支援する「原子力損害賠償支援法案」を6月14日の閣議で決定した。補償負担で東電が債務超過に陥らないよう新法で設立する「機構」が資本注入する。機構には政府が換金可能な交付国債を付与するとともに、原発を持つ電力10社から負担金を納めさせ、相互扶助機能を持たせる。東電株の上場を維持し、社債も保護される。今国会での成立は不透明である。
</p>
<p>
　枠組み決定後に行われた先月の記者会見で、「金融機関などが、東電に行った融資について、一切債権放棄をしない場合でも、東京電力に公的資金を注入することに国民の理解が得られると考えているか」との記者からの質問に対し、枝野官房長官は「到底、得られることはないと私は思っている」と述べ、金融機関などが一切債権放棄を行わない場合には、政府が公的資金の注入をしない可能性もあるという考えを示した。<br />
<br />
　この発言が投じた一石が、各方面に波紋を巻き起こし、銀行株が急落した。銀行からの反発は当然として、閣内からも与謝野経財相が「事故は神の仕業であり、東電だけに責任を負わせ、銀行に貸し手責任が発生することは理論上考えられない」と発言、海江田経産相も「私が損害賠償チームのチーフであり、その意味では私が決める。現状、何も示されていない中で債権放棄にまで言及するのは問題」と不快感を示した。<br />
<br />
　その後、5月20日に発表された東電の2011年3月期連結決算は、下表最右欄のとおり、災害特別損失が1兆円強に達し、最終損益が1.2兆円の赤字に転落、純資産は1.6兆円に減少した。この損失に損害賠償債務はまったく含まれていない。<br />
<br />
　賠償の枠組みだけは決定したが、東電が債務超過に陥らないようにするには、総賠償額を抑えるしかない。要賠償総額の推定額は1.2兆円から10兆円まで幅が大きく、要は風評被害などによる損害をどこまで賠償対象に含めるかの線引きに掛っている。<br />
<br />
　この問題の根因は、ジョン・ハレム米戦略研所長が5月12日付けの日経紙で指摘しているように、<strong><u>東電の賠償額にあらかじめ上限が設けられていないこと</u></strong>にある。<br />
<br />
　東電や他の電力会社に無限の責任を負わせることは政治的にはよいことかも知れないが、原子力政策としては誤りである。いかなる投資家も上限のない賠償責任制度に伴うリスクには耐えられず、政府が現行制度に固執するかぎり、電力株や電力債は売却するしかない。国際的に普遍化している国家賠償ルールを全面否定し、わが国の原子力産業全体の信用を地に落すこととなったこの法制の原点を下記にとりまとめた。<br />
<strong><br />
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110615TodenBaishouHyou.jpg" alt="110615TodenBaishouHyou.jpg" width="600" height="210" />
</strong>
</p>
<p>
<strong><br />
米国のプライス・アンダーソン法（</strong><strong>Price-Anderson Nuclear Industries Indemnity Act</strong><strong>）</strong>
</p>
<p>
　米国は民間主体での原発事業を推進するために、1957年に「民間事業者に無過失責任を課すとともに、事業者が抱えた一定額以上の損害賠償債務はすべて免責し、政府が代わって負担する」という民間債務免責・国家賠償を原則とするプライス・アンダーソン法を制定した。この法律はその後数回延長され、現行法は期限2026年まで、1企業の免責額上限126億ドル（約1兆円）となっている。もっとも、スリーマイル島原発の事故でも免責上限に達せず、国家賠償が行なわれた例はない。また、政府が上限を定めずに民間債務を肩代わりするのは憲法違反であるとの訴訟が提起されたが、1978年に最高裁が合憲との判決を下している。この民間債務有限・国家賠償無限ルールは、民間ベースで原発を手掛けるほとんどの国が採り入れている。
</p>
<p>
<strong>わが国の原子力損害賠償法（1961年6月17日制定）とその立法過程</strong>
</p>
<p>
　わが国の原子力損害賠償法（原賠法）は被害者の保護を通じて、原子力産業の健全な育成を図ることを目的として（第1条）、原子力事業者の無過失無限責任（第3条）、原子力事業者への責任の集中（第4条）、保険付保の義務付け(第10条、原子力保険プールでカバーされる損害の上限は1施設1,200億円、今回は福島第2と併せ2,400億円)、国の支援措置（第16、第17条、全文下掲）などについて定めている。<br />
<br />
　原賠法第3条1項のただし書きでは、原子力災害が「異常に巨大な天災地変または社会的動乱によって生じたものであるときは」原子力事業者は免責されることになっている。しかしながら、政府は今回の事故にこのただし書きは適用されず、あくまでも東電が無限責任を負うとの立場をとっている。法律学者の間には異論もあるが、このただし書き適用で東電が免責されれば、第17条により政府が必要な措置を講ずることとはなるものの、責任を持って賠償を実行する主体が無くなり、救済されない被害者が増えるという不都合を招来する。これは、原賠法の大きな欠陥である。<br />
<br />
　原子力事業者に無限責任を負わせるべきではないとする主張は立法過程からあり、1959年12月に我妻栄東大教授が会長を務めた「原子力災害補償専門部会」の答申では『損害賠償措置によってカバーしえない損害を生じた場合には<u>国家補償をなすべき</u>である』と明記されていた。この答申に対し、委員の一人であった大蔵省主計局長が態度を留保した。その結果、国会に上程された法案では、「国家補償」という表現自体が抹消されて下欄第16条の「必要な援助」という曖昧な文言にすり替えられ、国会審議の過程でもほとんど議論されていない。この過程は「原子力損害賠償法を検討して見るブログ　<a href="http://genbaihou.blog59.fc2.com/">http://genbaihou.blog59.fc2.com/</a>」に詳述されている。<br />
<br />
<strong>「原子力損害賠償法」抜粋；　　第四章　国の措置</strong>&nbsp;
</p>
<p>
<strong>第十六条</strong>　<strong>政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力事業者（外国原子力船に係る原子力事業者を除く）が第三条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行なうものとする。</strong>
</p>
<p>
<strong>２</strong><strong>　前項の援助は、国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内において行なうものとする。</strong>
</p>
<p>
<strong>第十七条</strong><strong>　政府は、第三条第一項ただし書の場合又は第七条の二第二項の原子力損害で同項に規定する額をこえると認められるものが生じた場合においては、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにするものとする。</strong>
</p>
<p>
<strong>（参考）　プライス・アンダーソン法の規定&quot;Any claims above the $12.6billion would be covered by a Congressional mandate to retroactively increase nuclear utility liability or would be covered by the federal government&quot;(as of 2011)</strong>
</p>
<p align="right">
<strong>（日本個人投資家協会　理事　岡部陽二）</strong>
</p>
<p align="left">
（2011年6月15日、日本個人投資家協会発行「きらめき」2011年6月15日号所収）
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
]]>
      
   </content>
</entry>
<entry>
   <title>＜書評＞日本福祉大学教授・副学長二木立著「民主党政権の医療政策」</title>
   <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.y-okabe.org/medical/post_217.html" />
   <id>tag:www.y-okabe.org,2011://1.398</id>
   
   <published>2011-06-09T15:00:01Z</published>
   <updated>2011-09-06T12:02:06Z</updated>
   
   <summary><![CDATA[ &nbsp; &nbsp; 　 　民主党政権誕生から1年半余が経過したが、20...]]></summary>
   <author>
      <name>okabe</name>
      
   </author>
         <category term="008医療経済論集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.y-okabe.org/">
      <![CDATA[<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610Minshutounoiryouseisaku.jpg" alt="110610Minshutounoiryouseisaku.jpg" width="229" height="320" align="right" />
&nbsp;
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
　<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
　民主党政権誕生から1年半余が経過したが、2009年7月総選挙時の民主党マニフェストが破綻しているのは明らかである。医療分野でも廃止を決定した高齢者医療制度の見直し作業一つ遅々として進んでいない。その一方で、混合診療全面解禁論の復活、医療ツーリズムの推進など、当初のマニフェストには盛り込まれていなかった市場原理導入の動きが出ている。
</p>
<p>
　2月に出版された「民主党政権の医療施策」は政権交代後の民主党の医療政策を時系列的にリアルタイムで追跡して、医療経済学の立場からの評価を行なった貴重な分析である。その結論は「政権交代そのもの歴史的意義は高く評価され、医療分野以外では評価すべき政策もあるが、医療に関する限り評価すべき点がまったく見当たらない」という手厳しいものである。<br />
<br />
　一般には2010年4月の診療報酬プラス改定が民主党政権の成果と喧伝されている。しかし、これは自民党の約束でもあり、薬価の隠れ引下げを勘案すると実質ゼロ改定であった。また2010年度以降の社会保障費の自然増2,200億円の抑制廃止も自民党時代に事実上すでに棚上げされていた。いずれも、民主党の手腕によるものではない。<br />
<br />
　逆に、手続き民主主義を無視した乱暴な「政治主導」と混合診療原則解禁論の蒸し返しは、マイナスの評価しかできない。さらには、公的医療費増加のための財源を見いだせなかったことに政権行き詰まりの主因がある。
</p>
<p>
　この背景には、二大政党の一翼を担うべく1998年に成立した「オリジナル民主党」の政策が、当時与党であった自民党よりもはるかに「構造改革」志向であったという事実がある。当時の民主党「基本方針」には「医療・医療保険制度は、市場原理を活用しながら、情報公開を徹底し、基本的な制度改革を行なう」と宣言されていた。小泉政権よりも医療費抑制志向が強かったのである。この方針では選挙に勝てないとの「政策より選挙」を持論とする小沢一郎党首の鶴の一声で、医療費増額へ180度方針を転換するに至った経緯が、本書では具に検証されている。<br />
<br />
　菅政権では、この「オリジナル民主党」幹部が主導権を握った結果、「新成長戦略」にメディカル・ツーリズムの振興など幻想に過ぎない「公的保険制度の枠外」での医療産業育成をぶち上げたのである。<br />
<br />
　政治家や官僚、利害関係者の思惑が絡み合う具体的な政策に関わる意思決定のプロセスを、どこで誰がどういう舞台で演じたのか、それぞれの役割と政策選択のメカニズムを学問的に解明する作業は、緻密な分析力と根気が続かなければ為し得ない。<br />
<br />
　二木立教授の講演は、論旨明快、立て板に水。紙芝居のようなパワーポイントなどは使われないので、スーと頭に入って聴衆の気分を爽快にさせる。毎回中身が変わっているので、何回お聞きしても飽きない。本書「民主党政権の医療政策」も、ご講演同様にことの次第を緻密に分析されながら、文体は「2009年の政権交代の意味を考えます」「民主党の医療政策は底が浅いことを指摘します」といった「です・ます」調でじつに懇切丁寧、しかも「仕える相手に合わせて主張を平気で変える研究者を『曲学阿世』と呼ぶのではないでしょうか」と小気味よい。学術論文の常である文意が分からなくて読むのに骨の折れるような箇所は一つもない。読み返すほどに味わい深い達意の文章である。
</p>
<p align="right">
<strong>（評者；　医療経済研究機構</strong><strong>副所長　岡部　陽二）</strong>
</p>
<p>
（2010年6月10日、医療経済研究機構発行「医療経済研究機構レター&quot;Monthly&nbsp; IHEP&quot;」　No.198　p56　所収）
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
]]>
      
   </content>
</entry>
<entry>
   <title>南アフリカ共和国の医療(2)</title>
   <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.y-okabe.org/medical/2_3.html" />
   <id>tag:www.y-okabe.org,2011://1.397</id>
   
   <published>2011-06-09T15:00:00Z</published>
   <updated>2011-09-06T11:50:46Z</updated>
   
   <summary><![CDATA[ &nbsp; &nbsp; ３、南アフリカ共和国の医療費と医療政策 (1)南ア...]]></summary>
   <author>
      <name>okabe</name>
      
   </author>
         <category term="008医療経済論集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.y-okabe.org/">
      <![CDATA[<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610SouthAfricaStampLogo.jpg" alt="110610SouthAfricaStampLogo.jpg" width="388" height="150" align="right" />
&nbsp;
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
<strong><br />
<br />
<br />
<br />
<br />
３、南アフリカ共和国の医療費と医療政策</strong>
</p>
<p>
<strong>(1)</strong><strong>南アの医療システムと総医療費</strong>
</p>
<p>
　南アの医療システムは総人口の84%を占める約41百万人を対象とする公的医療と16%を占める約8百万人を対象とする私的医療（いずれも2008年）に大別される。公的医療はほとんどすべてが財政資金によって賄われ、医療サービスの提供は公的医療機関のみが行なっている。一方、私的医療は非営利医療保険のメディカル・スキーム（Medical Schemes）加入者と全額自費の患者が民間医療機関からの濃密な医療サービス提供を享受している。このように南アにおいては公的医療と私的医療に二極分化し、医師をはじめとする医療資源の過半が私的医療に集中している。
</p>
<p>
　南アの総医療費は表1に掲げたとおり2008年度の実績値で2,030億ランド（約2.6兆円）、一人当り平均では4,160ランド（約53千円）となっている。しかしながら、財源別内訳では、公的負担が846億ランド（総医療費の42%）、私的負担が1,132億ランド（総医療費の56%）と私的医療が過半を占めている。①　　
</p>
<p>
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610SouthAfrica2Hyou1.jpg" alt="110610SouthAfrica2Hyou1.jpg" width="600" height="406" />
</p>
<p>
　公的医療の対象となる低所得の無保険者数は表2に見られるとおり、最近5ヵ年間でも若干ながら増加している。人口一人当りの医療費で見ると、2008年実績では公的医療費は一人当り2,068ランド（約26千円）、私的医療費は一人当り14,329ランド（183千円）となっている。私的医療費の水準は、物価水準が低いことを勘案すれば、先進国並みに高い。<br />
<br />
　私的医療享受者層と低所得者層の間には7倍もの大きな医療費格差がある。これはきわめて大きな所得格差の結果であって医療だけの問題ではないが、医療格差の縮小が南ア最大の政策課題となっている。もっとも、最近4年間で見ると、一人当り私的医療費の年間平均6.5%増加に対し、一人当り公的医療費は年16.5%のハイ・ペースで増加している。このように公的医療の充実は顕著であるが、水準としては依然としてきわめて劣悪な状況下にある。<br />
<br />
　高水準の医療を誇る私的医療部門と貧しい公的医療部門に截然と区分されていることが、アパルトヘイト時代に形成された不公平医療の解消を遅らせるだけではなく、南アの保健医療全体の発展にとっても大きな障害ともなっている。かつてアパルトヘイト時代に存在した教育や社会生活面などあらゆる分野におけるアクセスの不平等は大方解消しているにもかかわらず、医療分野においてのみ厳然として残存しているのは南ア国民にとっての大きな不幸である。
</p>
<p>
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610SouthAfrica2Hyou2.jpg" alt="110610SouthAfrica2Hyou2.jpg" width="600" height="233" />
</p>
<p>
　私的医療のレベルは高く医療費が嵩むため、南アの総医療費の対GDP比は8.7%（2008年）と高く、今後も上昇を続けるものと予測されている。この水準は表3に見られるとおり欧州諸国の平均並みであり、BRICSの中では格段に高い。公的医療費の総財政支出に占める比率も表1に示したとおり12.8%（2008年）と高い。表2では、この比率がWHOの共通計上基準で10.8%となっているが、BRICSの中では高い。総医療費に占める私的負担が過半を占めるのは、ロシアを除きBRICS共通である。一人当りの公的医療費年間支出額$340は、公的医療が主体のロシアを下廻るものの、ブラジルと並び、中国・インドよりは格段に多い。②　
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610SouthAfrica2Hyou3.jpg" alt="110610SouthAfrica2Hyou3.jpg" width="600" height="168" />
</div>
<p>
<strong><br />
(2)</strong><strong>公的医療の資金使途と重点施策</strong>
</p>
<p>
　公的医療の財政規模や重点施策は中央政府の財務省と保健省が決定するが、予算の執行は州政府の保健局や市町村の責任で行なわれている。医療サービスの提供は原則として公立病院、公的診療所、地域保健センターなどの公的医療機関を通じて、低所得者には原則として無料で提供されている。
</p>
<p>
　2008年度の歳出に占める医療関連支出の規模846億ランド（約1.1兆円）は、表1に示したように総歳出の12.8%（2008年）を占める。公的医療費は社会保障費全体の40%強を占め、この割合は先進国の水準並みに高い。2008年度医療関連支出の大部分を占める州政府支出750億ランドは、表4最下段のとおり2008年度までの3年間年平均16.8%増という高い伸びを示している。
</p>
<p>
　これを、主要な医療サービス別にみると、表4に掲げたように、全体の40%強を占める地域保健サービスが最大の支出項目となっている。これは公営の診療所や地域保健センターを通じて行なわれているエイズ、結核の感染予防対策としてのワクチン供与、抗HIV薬投与などをはじめとする予防と初期治療の活動に使われている。
</p>
<p>
　次に大きい支出は国公立病院409施設（約89千床、2009年）の運営費用で、全体の40%弱を占める。国公立病院の増設も進み、近代化も図られているが、医師をはじめとする医療職の数が絶対的に不足しており、医療の質も低い。<br />
<br />
　2009年度に南ア政府が格別に注力する公的医療の重点施策として、保健省から次の8項目が示されている。③　
</p>
<p>
①予防ワクチン3種を追加するなどの施策で、乳幼児の死亡率を引下げる。<br />
②治療が中途半端に終わっている結核患者を再治療するプログラムを発足させる。<br />
③HIV感染者対策を、母子感染の予防などを中心に、一段と強化する。<br />
④医師をはじめ医療関連職の待遇改善を進める。<br />
⑤インフレに対応して病院、救命救急施設への投資額を増やす。<br />
⑥看護師不足に対処する予算を増やす。<br />
⑦医療の質を管理するための組織を新設する。<br />
⑧医薬・医療機器の規制機関を新設する。
</p>
<p>
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610SouthAfrica2Hyou4.jpg" alt="110610SouthAfrica2Hyou4.jpg" width="600" height="251" />
</p>
<p>
　公的医療サービスの提供権限は州政府に委ねられているため、中央政府の指示が必ずしも医療現場まで行き届かず、表5に見られるように、9州間のサービス内容に大きな開きが生じている。
</p>
<p>
　1人当り公的医療費について見ると、ムプマランガ州の1,162 ランド（約19千円）から西ケープ州の1,933 ランド（約33千円）まで5割以上の開きがあり、人口10万人当りの公的医療機関医師数についても14.1人から37.9人まで3倍近い差が存在する（日本の医師数は東京都の264人から埼玉県の129人まで2倍弱の差、平均201人、2004年）。絶対数が不足している病床数については大きな差は存しないものの、医師不足の州は不足の度合いに応じて病床稼働率が低くなっている。HIV感染率も州によって大きく異なり、12.5%から40%まで3倍以上の差がある。診療所への年間受診回数も1.9から3.1回と開きがある。
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610SouthAfrica2Hyou5.jpg" alt="110610SouthAfrica2Hyou5.jpg" width="600" height="397" />
</div>
<p>
<strong><br />
（3）民間医療保険（メディカル・スキーム、Medical Schemes）</strong>
</p>
<p>
　きわめて脆弱な公的医療システムとは対照的に、南アの民間医療部門は近代的に組織された先進病院を中心に診療所や専門施設も幅広く整備されている。医療費の面でも、表1および表2で示したように、私的医療費が1,216億ランドと総医療費の56.7%を占めている。表6に示したように、このうちの62.8％に当たる763.2億ランドがメディカル・スキームと称する非営利の民間医療保険でカバーされており、残余は自己負担と営利の民間保険で賄われている。<br />
<br />
　問題は、私的医療費が総医療費の過半を占めているにもかかわらず、この対象となる国民が約8百万人と全国民の17%弱（2009年）に過ぎないことである。
</p>
<p>
　メディカル・スキームは、医療保険のみに特化した民間の非営利保険である。純粋の民間団体として自然発生的に生成されてきた保険システムではあるが、拡大につれて問題も出てきたため、1967年にはその共助の原則を定めた&quot;Medical Schemes Act&quot;が制定された。その後改正を重ねて、1998年の改正では、①最低限の強制的給付パケッジの法定、②年齢や健康状態による差別の禁止、③収入額と被扶養者数以外の条件での保険料の差別化禁止など強い規制措置が盛り込まれている。一方で、メディカル・スキームへの保険料支払は所得控除され税制面で優遇されている。④　このようにユニークな非営利の民間医療保険システムが広範にカバーしている国は先進国にも類例がなく、公的保険の補完機能を果たしているフランスの共済組合やオーストラリアの医療専門の民間保険に近い。<br />
<br />
　メディカル・スキーム（Medical Schemes）による支払額全体の伸び率は年率12%強とインフレ調整後でもGDPの伸びをかなり上回っている。これを医療費支払項目別に見ると表6のとおり、2009年度では医師への支払が33%、病院への支払が37.1%、薬剤費が17.4%となっている。この比率を10年前と比べると、歯科医師への支払が3.1%減少、薬剤費が11.3%減少、逆に病院への支払が7.9%増加と、病院費用の高騰が顕著である。受益者一人当りの年間医療費は9,605ランド（約11万円）、自己負担分を含めると、表1のとおり15,012ランド（約17万円）と先進国並みに高い。
</p>
<p>
メディカル・スキームへの加入率を人種別に見ると、表7のとおり白人は3/4と大多数が加入しているのに対し、黒人の加入率は徐々に向上はしているものの、2009年時点では10%にも達していない。インド人の加入率は42.7%、カラードは21.4%と比較的高い。
</p>
<p>
　南アにおける最初のメディカル・スキームとされている&quot;De Beers Consolidated Mine Ltd&quot;は1889年に設立され、1940年には48社のメディカル・スキームが存在していた。メディカル・スキームの数は、1945年から1960年の間に大幅に増えて、当時加入資格のあった白人の80%をカバーするに至った。⑤　民主化後は、対象が全国民に拡大された結果、白人以外の加入者が増加、逆に白人の加入率は低下傾向にある。⑥　
</p>
<p>
　メディカル・スキームの総数は1974年には252社あったが、順次統合や淘汰が進み、表6下段のとおり、1999年末には160社、2009年末では105社となっている。このうち、75社は加入者を特定の企業や職域団体に限定した閉鎖型(Restricted)で、残余の30社が希望すれば誰でも加入できる開放型（Open）である。閉鎖型、開放型ともにカバーの限度などの条件が異なる複数のオプションを用意しており、オプションの総数は332（2009年末）となっている。　
</p>
<p>
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610SouthAfrica2Hyou67.jpg" alt="110610SouthAfrica2Hyou67.jpg" width="600" height="423" />
</p>
<br />
<p>
<strong>（4）国民皆保険（National Health Insurance、NHI）への取組み</strong>
</p>
<p>
　南アでは1994年の民主化直後から医療の国民皆保険を求める動きが活発化してきたが、政権与党であるANC（アフリカ民族会議）が2009年5月の総選挙で「5年以内の国民皆保険化実現」をマニフェストに盛り込んだことで、にわかに現実味を帯びてきた。この選挙公約を実行に移すべく、2010年9月に開催されたANCの総会で2012年までに皆保険実現に向けての計画策定に全力で取り組む方針が決定された。政府としての具体的な計画はまだ公表されていない。
</p>
<p>
　ANCの計画によると、NHIは全国民に原則として無料での医療サービス供与を保障する。そのための追加費用として1年目に1,280億ランド（約1.5兆円）、2025年には3,760億ランド（約4.6兆円）を要するとしている。計画は14年間をかけて段階的に進められ、2012年にはおもに健康状態が比較的悪い地域から限定的に展開していく方針を示している。財源は企業や個人にも保険料負担を求めるが、基本的には増税によって賄われる。国民皆保険は全国民をカバーするものの、すでにメディカル・スキームや他の民間保険に加入している国民の選択権は残される。⑦　
</p>
<p>
　これに対し、皆保険への参加を要請されている民間病院協会や医師会は、正面切っての反対は表明していないものの、研究者などを動員してネガティブ・キャンペーンを展開し、皆保険導入は時期尚早であるとの消極姿勢を示している。その論拠としては、医師・看護師をはじめとする医療職の増員・待遇改善が先決であること、ANCの費用見積もりは過少であり財源的に持続可能ではないことなどを挙げている。民間病院業界の本音は、公的保険の導入で低い公定の診療報酬タリフが押しつけられるのは真っ平御免というところであろう。⑧　<br />
<strong><br />
4</strong><strong>、南アフリカ共和国の医療提供体制</strong>
</p>
<p>
<strong>（１）医療提供施設</strong>
</p>
<p>
<strong>　</strong>南アの医療提供機関には、公・民合わせて病院約620施設（約110千床）のほかに公営の診療所（Clinics）3,057軒、公営の地域保健センター280カ所（いずれも2004年）と民間の診療所が存在する。ほかに、車で移動する公営のモービル・クリニック（Mobile&nbsp; Clinics）が899輌ある。民間の診療所は、通常総合病院とも契約している一般医（10,498人）、専門医（5,996人、いずれも2008年）の個人経営で、実数は公表されていない。<br />
<br />
　病院は国立・州立などの公的病院と民間病院に大別される。公的病院の数は、1990年代からは増えているが、表8に見られるとおり、病床数は漸減傾向にある。しかも、病床稼働率は表5に示したとおり、60%台の州も多く、全国平均でも71%（2006年）と低い。これは、需要はきわめて大きいものの、医師・看護師の確保ができず診療制限を行なっているためであり、常時大混雑で待ち時間も長い。病院協会の調査によると、医師免許取得後5年未満の未熟な医師は8割が公的病院に勤務、逆に経験20年以上の医師の70%以上は民間病院と契約している。公的病院は多忙を極め、指導医も少ないので、医療の質も民間病院と比べると格段の差があると言われている。⑨　病床不足を反映して、公的病院の平均在院日数は4.3日（2009年、District Health Information System Database）と短い。
</p>
<p>
　公的病院の中にもヨハネスブルグやケープタウンには大学付属病院など近代的な先進病院も存在する。1938年に創設されたケープタウン医科大学付属のグルート・スキュール（Groote Schuur）病院は、1967年12月3日にクリスチャン・バーナード(Christiaan Neethling Barnard)教授が世界初の心臓移植手術を成功させた病院として知られている。この世界初の心臓移植は、医学の発展史上に刻まれた画期的な快挙として有名である。⑩　第1号の心臓移植を手掛けた南アは臓器移植の先進国と目され、その後も毎年30件から40件の心臓移植が行なわれてきたが、最近10年間はドナーの不足から年間20件台に減少している（臓器移植全体も2004年の1,047件から2008年には633件に減少、心臓移植は2004年の28件から2008年には22件へ減少）。⑪　
</p>
<p>
　もう一つ世界的に知られている南アの公的病院に首都ヨハネスブルグの黒人居留区ソウェット地区に1939年に建造されたクリス・ハニ・バラグァナス病院（Chris Hani Baragwanath Hospital）がある。この病院は当初英国王立軍事病院としてスタートしたが、1948年に南ア政府の所管となり、この地区がネルソン・マンデラ大統領の出身地であることから、1997年には暗殺されたアパルトヘイト反対運動活動家クリス・ハニの名を冠した州立病院となった。この際に一挙に3,400床に増床され、同年のギネスブックで世界最大規模の病院として紹介されたために一躍有名になった。この病院はWitwaterstrand大学などの教育病院でもあり、教育病院としても世界最大である。私的医療保険適用の患者も20%ほど受入れている点も公的病院としては珍しい。もっとも、病床数はその後削減されて2009年には2,964床となっているうえ、病床稼働率も65～80%と低い。⑫　
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610SouthAfrica2Hyou8.jpg" alt="110610SouthAfrica2Hyou8.jpg" width="550" height="301" />
</div>
<p>
　<br />
　一方、民間病院では先進医療機器も充実しており、提供されている医療の質も欧米先進国に遜色のない高いレベルにある。メディカル・ツーリスト患者の受け入れが年間2万人（2008年）と多く、しかもその過半は英国からの来訪患者で、近隣諸国からの患者は少ないのは、その証左の一つである。⑬
</p>
<p>
　病院・クリニックともに公的医療機関へのアクセスは自由であるが、民間病院にはメディカル・スキーム加入者（全国民の16.9%、2009年）か治療費全額自己負担の患者しかアクセスできない。このように、南アにおける医療提供体制は、所得格差を反映した完全な公私分離システムとなっている。ただし、民間医療機関は大都市に偏在し、数も限られているため、地方ではメディカル・スキーム加入者であっても公的診療所にかかっている患者も多い。<br />
<br />
　南アの民間病院においては、病院への支払(Hospital Fee)と医師への支払(Doctors Fee)は峻別されており、私的医療費の40%近くが病院への支払となっている。しかしながら、最近では医療費の高騰からメディカル・スキーム加入者数が伸び悩み、つれて民間病院利用者数も頭打ちとなっている。
</p>
<p>
　民間病院の数は公的病院の1/2、病床数は4割程度であるが、医業収入では公的病院を上回っている。また、民間病院の病床数は、表4のとおり漸減している公的病院とは逆に漸増している。南アの民間病院は、表9に見られるように大規模な株式会社形態のチェーン病院3社（うち2社は上場会社）が全体の8割を占め、残余の2割の市場に小規模な株式会社と非営利法人の52病院が分立するという極端な寡占状態になっている。このようにほとんどの民間病院が株式会社化している国は世界でも珍しい。<br />
<br />
　最大のNetcare Holdingsは急性期に特化した病院が合併を重ねてチェーン化し、1996年にヨハネスブルグ市場に上場した。同社は英国でもBMI Healthcareの名称で58病院（2,894床）を経営、英国のプライベート病院業界で最大のシェアを確保している。第2位のMedi-clinicもスイスに13病院（1,365床）、ドバイに2病院（336床）、ナムビアに3病院を保有している。この上場2社は引続き急性期病院の国際展開に注力する方針を明らかにしている。この事実からも、南アの大手民間病院は欧米先進国に引けをとらない高い質の医療を提供しているものと判断される。<br />
　
</p>
<p>
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610SouthAfrica2Hyou9.jpg" alt="110610SouthAfrica2Hyou9.jpg" width="600" height="207" />
</p>
<p>
　南アの国民が病気になった場合に、まず受診する医療機関についてのアンケート調査結果によると、国民の59%が公的クリニックと回答、次いで民間クリニック25%、公的病院10％となっており、民間病院はわずか2%と少ない。公的医療機関での受診時に治療費を支払ったという回答は回答者の35%に留まり、65%は診療費も薬剤費も支払っていない。クリニックから病院への紹介は支払能力に応じて、公的病院と民間病院に振り分けられている。⑭　
</p>
<p>
　1995年の家計調査の結果によれば、民間病院全病床の半数が所得階層上位5%の階層の居住地域にあり、全病床の90%が都市部に集中している。医師の分布においても、専門医の77%、GPの53%、医師免許取得16年以上の医師の70%が民間病院に集中している。⑮　この比率は、やや旧いものの、1980年代から変化はなく、最近時においてもほとんど変わっていないものと思われる。
</p>
<p>
<strong>（2）医師・看護師など医療関連職</strong>
</p>
<p>
<strong>　</strong>南アの医師数は、表10に見られるとおり、最近2ヵ年では年間1,000人以上増加しているが、慢性的に絶対数が不足しており、医療を巡るもっとも深刻な問題となっている。南アではかつてはほとんどが白人医師で黒人はごく少数であったが、民主化後は黒人医師の養成が進み、表11に見られるように、最近では非白人が医師の過半を占めている。
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610SouthAfrica2Hyou10.jpg" alt="110610SouthAfrica2Hyou10.jpg" width="500" height="237" />
</div>
<p>
　<br />
　この南ア政府公表の医師数統計を巡っては、南アの経済界が設立したEconexという政策研究所から疑義が提起されている。Econexの調査によれば、2010年現在の医師数36,912人は、公的診療所などで働いている一般医（GP）の数と病院の勤務医および契約医の数をそれぞれの団体からの報告に基づいて単純に合算したものである。ところが、南アでは公的診療所の給与は安いためにほとんどの医師が病院とも契約して2ヵ所で働いており、この二重計上された医師が2010年では9,481人とじつに総医師数の1/4以上を占めている。この二重計上を排除すると、2010年の医師実数は、表11に示したとおり27,431人となる。このような医師数水増しは、民間病院には医師が余っており、医師不足が国民皆保険実現に向けての障害とはならないことを国民に説明するための意図的な計数操作であると、Econexは主張している。⑯　
</p>
<p>
　Econexの医師数をそのまま信じるわけにもいかないが、これに対する政府の釈明は為されていない模様である。同レポートは医師の流出がさらに加速し、医師の実数は2020年に向けてさらに減少するものと予測している。同レポートの真偽はともかくとして、南アの医師不足がきわめて深刻であることは間違いない。
</p>
<p>
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610SouthAfrica2Hyou11%2612.jpg" alt="110610SouthAfrica2Hyou11%2612.jpg" width="600" height="273" />
</p>
<p>
　医師不足の要因は、一つには南アには医学部が国立大学8校にしかなく、定員を増やして対応しているものの、年間の新規医師免許取得者は最大でも1,400人程度で、医師養成が追いつかないことにある。加えて、折角養成した優秀な医師が農村地帯の公的病院から大都市の民間病院へ激しく移動している。さらに、南アの医師教育は英語で行なわれているため、海外勤務にも抵抗感がなく、医師の海外流出が跡を絶たない。民主化後は海外への流出が毎年150名を下らないとされ、国内の医師不足を一段と悪化させている。これには政府も打つ手を欠いている。
</p>
<p>
　人材の流出は、公的病院と民間病院間の給与・待遇格差が大きいために起こっているが、エイズの蔓延を嫌っての海外逃避も多いと言われている。南ア保健省の医師海外流出状況についての調査によれば、表13のとおり主要な英語圏5ヵ国だけでも8.921人（2006年）に上っている。この5ヵ国以外への流出を加えると、海外で働いている医師の総数は1万人以上となり、国内に留まっている医師数の半数近くに達する。今後とも毎年新規に養成される医師の25%以上が海外へ流出するものと、Econexは予測している。⑰　
</p>
<p>
　地方にある公的病院の医師不足を補うために、政府は1995年にキューバと協定を結んでキューバ人医師の受け入れを始めたほか、チュニジアと2,000名受け入れの契約を結び、イランからの医師派遣も受け入れている。また、南アの学生をキューバの医科大学に派遣して医師教育を受けさせている。⑱　
</p>
<p>
　歯科医師・薬剤師も医師同様に極端に不足しているが、表10に見られるように看護師数は比較的多い。そこで、公的医療機関における医師不足を軽減するために、看護師に若干の医学教育を施して、医師の監督下で医療行為の一部を代行できる「クリニカル・アソシエイツ」と称する職種が2007年に新設された。⑲　
</p>
<p>
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610SouthAfrica2Hyou13jpg.jpg" alt="110610SouthAfrica2Hyou13jpg.jpg" width="600" height="185" />
</p>
<p>
<strong>　<br />
　</strong>南アの医師不足を国際比較で見ると、表14のとおり人口1万人当り8人とBRICS5ヵ国の中でも、ロシアの1/5以下で、インドと並び少ない。さきに述べたEconexの指摘が正しいとすれば、実数ではインドよりも少ないということになる。南アの看護師数は、BRICS5ヵ国中ではロシアに次いで多く、先進国との国際比較でもさして見劣りしない。<br />
<br />
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610SouthAfrica2Hyou14.jpg" alt="110610SouthAfrica2Hyou14.jpg" width="600" height="205" />
</p>
<p>
　南アには公立大学8校に医学部があり、おおむね英国の教育制度をそのまま踏襲している。医学教育は大学5～6年間で、卒業して医学士(MBChB)の資格を取得したのち、臨床医になるには教育病院で2年間のインターンシップと場合によってはさらに地域医療サービスに従事したのちに、Health Professions Councilに登録しなければならない。その後は7割程度がFamily Medicineを専攻してFamily Physician（家庭医）となり、残りが臓器別専門医の道を進む。いずれも5～7年間のResidencyで専門技能を修得し、試験に合格して専門医になる。また、インターンシップ終了後に一般医（GP）として開業することもでき、開業後に専門医のコースに戻る選択肢もある。開業医だけではなく、病院勤務医や民間病院との契約医についても、表12に示したとおり、一般医の数が専門医の約2倍と多い。⑳　
</p>
<p>
<strong>５、南アフリカ共和国の医薬品・医療機器市場</strong>
</p>
<p>
　南アの医薬品・医療機器市場全体の規模に関する統計は、輸出入統計を除いて、政府の公式統計、業界団体の公表統計ともに存在しない。複数の民間団体が推定値を発表しているが、その間の乖離はきわめて大きい。その理由は、私的医療分野の業界団体であるPharmaceutical Industry Association of South Africa(PIASA)が販売統計を公表していないことに加え、公的医療分野では政府が買い上げて無料で配布される医薬品が多いため、そもそも小売価格が存在しないことにある。政府の財政統計では医薬品支出の分別管理が行なわれていないのも一因となっている。<br />
<br />
　推定値では、表15に掲げたSouth Africa Pharmaceuticals and Healthcare Reportの計数がIMSの計数に近く、信憑性が高いものと判断される。これによると、工場出荷価格ベースでの2009年の医薬品総売上高は224.8億ランド（約2,500億円）であり、この5割増しを小売価格と仮定すると、同年の総医療費2,142億ランドに占める薬剤費の比率は16%程度となる。表6に示したメディカル・スキームの支払項目中に占める薬剤費比率17.4%は、安価な薬剤に限定して使用している公的医療部門の比率よりは高いものと考えられ、全体での薬剤費率は総医療費の16%程度が妥当なところであろう。　公表されているいくつかの調査レポートは、南アの医薬品市場は向う数年にわたって年率10%内外の高成長を続けるものと予測している。<br />
<br />
　医薬品の市場規模が影響を受ける最大の要因は、南ア政府の価格政策である。南アの薬価はかつては自由価格であったところ、高騰する市場価格への国民の反発に対応すべく、南ア政府は2004年にすべての処方薬について流通ルートの如何にかかわらず、工場出荷価格に上限（キャップ価格）を設定する&quot;Single Exit Price（SEP）&quot;制を導入した。公的医療保険制度を持たない国が、私的医療分野の商品価格を末端価格ではなく、ランド建てで工場出荷価格の上限を設けて時限を定めずに固定するのはきわめて異例であり、これに対する内外からの批判も大きかった。この規制はあまりにも業界への悪影響が大きかったため、政府はこのキャップ価格を2007年と2008年にそれぞれ6% 、2009年には高インフレに対応して13%引上げた。その結果、業界の不満は今のところ収まっている。21　
</p>
<p>
　南アでのジェネリック薬比率（IMS推計）は、数量ベースで2003年には60%であったが、2006年には50%に下落している。価格ベースでは20%程度かと推測される。SEP制の影響もあり、今後は大幅に高まるものと予測されている。22　
</p>
<p>
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610SouthAfrica2Hyou15.jpg" alt="110610SouthAfrica2Hyou15.jpg" width="600" height="154" />
</p>
<p>
<strong>&nbsp;</strong>南アの医薬品、医療機器の輸出入規模は表16のとおり医薬品。医療機器ともに輸入額が急増している。一方、輸出の規模は輸入の1/10程度であるものの、ランド高のために逆に減少している。南アで消費される医薬品の7割以上がかつては輸入品で占められていたが、国内メーカーが力をつけてきたことから、近年輸入の比率は6割程度に低下している。医薬品の輸入相手国別シェアは表17のとおり、米英独仏が拮抗、インドがジェネリック薬で第3位に食い込んでいるが、日本メーカーは50位内に1社も入っていない。<br />
<br />
　医療機器の輸入も急増して、2009年には医薬品の1/2の規模に達している。この分野も欧米のメーカー主体であり、日本のメーカーではテルモが現地に事務所を開設して、人工心肺装置で25%、血液パックで40%のシェアを確保しているのは異例である。23　　
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610SouthAfrica2Hyou16%2617.jpg" alt="110610SouthAfrica2Hyou16%2617.jpg" width="600" height="347" />
</div>
<p align="left">
　<br />
　処方薬では欧米の大手メーカーが高いシェアを維持しているが、OTCの分野では表18に見られるとおり、英米の大手メーカーに伍して南アの地場製薬メーカー2社が1位と5位を占めている。Adcock Ingram Ltdは創業120年の老舗で、2010年度には売上44億ランド、利益9億ランドを計上した。Aspen Pharmacare Holdings Ltdは年間売上100億ランド、利益18億ランドと処方薬部門で圧倒的に強く国内シェア20%を抑えている南ア最大の製薬メーカーである。本年1月にはオーストラリアのジェネリック薬市場でシェア25%を抑えているSigma Pharmaceuticals Ltdを61億ランドで買収、業容を一段と拡大した。
</p>
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610SouthAfrica2Hyou18jpg.jpg" alt="110610SouthAfrica2Hyou18jpg.jpg" width="500" height="168" />
<p align="left">
　エイズの予防・治療に必要な抗HIV薬（抗レトロウイルス薬）を巡っての大手製薬メーカーと南ア政府との係争は特許権の保護と薬剤を購入する資金のない途上国国民の生命とを天秤にかけた国際的な大論争となった。HIV感染の予防やエイズの治療には複数の薬剤が必要であり、米国では1人当たり1年間に約150万円の薬剤費がかかる。一方発展途上国の1人あたりの年間薬剤費は400円と言われており、アフリカ諸国に多いエイズ患者が年間に150万円もの薬剤費を支払うことは不可能である。このような状況下で、南ア政府は、抗HIV薬の安価な複製品を並行輸入したり、特許権を無視して国内生産したりすることを認める法律を制定した。　　　
</p>
<p>
　この複製品はブラジルでは強制実施権（途上国などの政府が先進国の大企業などによって独占使用されている特許ライセンスを国家の緊急事態などの際に強制的に自国で使うことを認めるという権利）のもとで合法的に生産され、インドでは物質特許が認められていなかったために、製法特許に抵触しない範囲で合法的に生産されていた。こういった複製品は特許に対するライセンス料を支払わずに生産されるため、生産費用のみしか掛らず、通常よりもかなり安い値段で提供される。南ア政府は特許侵害行為を免責する法律を制定したうえで、これらの複製品輸入や国内生産を奨励したのである。<br />
<br />
　この南ア政府の動きに対し、米国の大手製薬メーカー41社はこの免責法廃止を求める裁判を起こした。これに対し、WTOの条約でも保護されている特許権優先の主張と途上国のエイズ患者の生命を考えた場合、後者のほうが重いという国際世論の高まりは凄まじかった。その結果、大手製薬メーカーの動きは強者のエゴとして国際的な非難を浴び、メーカー側は2001年に訴えを取り下げただけでなく、逆に途上国に対して無償や原価に近い価格で抗HIV薬を提供することを約束させられた。このような経緯で、抗HIV薬は現在南アにおいては格安の価格で提供されている。だが、この特許に絡む争いは将来的には難しい問題を抱えている。それでも、抗HIV薬の需要が拡大したことで、大手製薬メーカーのこの分野での売上は2009年には118億ドル（約1兆円）に達し、利益も増加している。24　
</p>
<p align="left">
　そこで、南ア政府は抗HIV薬の価格をさらに引下げるべく、入札による大量購入を行なっている。2010年7月には向う2年分の35億ランドの入札が行なわれ、強制特許による国内生産や並行輸入での価格引下げを実現した上記の国内大手2社（Aspen社とAdcock Ingram社）が潤っている。25　<br />
<br />
　一方で、抗HIV薬の開発においては、南ア国民の人権を無視した無秩序な治験が行なわれて、副作用による多くの死者が出るなど大きな社会問題を惹起した。箒木蓬生の小説「アフリカの瞳」は日本人外科医が南アの女性活動家と結婚して、南アの市民病院とクリニックに勤め、エイズ撲滅運動に献身的に尽す姿を活写した感動的な物語である。この2人は、南ア政府が国産化した抗HIV薬ヴィロディンが何の効能もなく副作用だけが強いことを、HIVウイルスに感染した多くの母子を追跡調査して突きとめる。この調査結果の公表を阻止すべく政府が動くが、住民の力でそれを跳ねのける。さらには、抗HIV薬の新薬開発を急ぐあまり、正規の段取りを踏まずに一足跳びに南アで違法な治験を行なっていた米国の大手製薬メーカーを大量殺人の廉で告発し、和解の代償として先進国で製造された安価な抗HIV薬を手に入れる。小説ではあるが、南アの現実に基づいたノンフィクションに近く、考えさせられる多くの問題を提起している。26
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110610SouthAfricaLast.jpg" alt="110610SouthAfricaLast.jpg" width="240" height="344" />
</div>
　<br />
<strong><br />
<br />
参考引用文献一覧<br />
<br />
</strong>①　2009年9月、南ア財務省&quot;Provincial Budgets and Expenditure Review 2005/06-2011/12&quot;、　 http://www.treasury.gov.za/publications/igfr/2009<br />
②　2010年度WHO&quot;World Health Statistics　2010&quot;Table 7 &quot;Health Expenditure&quot;③　2009年9月、Provincial Budgets and Expenditure Review 2005/06-2011/12 Chapter　4&quot;Health&quot;p50<br />
④　2000年,&quot;Impact of Changes to the Medical Schemes Act&quot; by Debble Pearmain, HASA, http://www.hst.org.za/sahr<br />
⑤　&quot;Overview of the Medical Schemes Industry&quot;、http://www.bhfglobal.com/files/bhf/overview<br />
⑥　Health and Related Indicators,2008 ,http://www.hst.org.za/uploads/files/chap16_08.pdf , Health services indicators, Table 49　　&quot;Medical Schemes coverage by ethnic group&quot;<br />
⑦　2010年9月22southafrica.infohttp://www.southafrica.info/news/business/807708.htm<br />
⑧　2010年3月、Econex &quot;Financial Implication of a National Health Insurance Plan for South Africa-Study 　commissioned by the Hospital Association of South Africa (HASA)&quot;<br />
⑨　 2000年12月、瀧澤邦雄著JICA、南部アフリカ援助研究会報告書第２巻第5章p77<br />
⑩　Groote Schuur Hospital-Wikipedia, the free encyclopedia<br />
⑪　2009年1月15日、IOL News&quot; SA Heart transplant rate drops by half&quot; http://www.iol.co.za/news/south-africa<br />
⑫　http://www.chrishanibaragwanathhospital.co.za<br />
⑬　2007年5月27日、日経ビジネス・オンライン「門倉貴史のBRICｓの素描」<a href="http://www.iol.co.za/news/south-africa/sa-heart-transplant-rate-drops-by-half-1.431421">http://www.iol.co.za/news/south-africa/sa-heart-transplant-rate-drops-by-half-1.431421</a><br />
⑭　2009年9月、Statistics South Africa&quot;General Household Survey, July 2009 &quot;p16<br />
⑮　 2000年12月、瀧澤邦雄著「JICA、南部アフリカ援助研究会報告書」第２巻第5章p81～82<br />
⑯　2010年11月、Econex　Health Reform Note 8 &quot;The Human Resource Supply Constraint: The Case of Doctors&quot;p1～10<br />
⑰　2010年11月、Econex; &nbsp;Health Reform Note 8 p7&quot;Distribution of SA health professionals abroad,2006&quot;<br />
⑱　峯陽一編著「南アフリカを知るための60章」p200～201<br />
⑲　Healthcare in South Africa-MediaClubSouthAfrica.com, http://www.MediaClubSouthAfrica.com<br />
⑳　Medical school-　Wikipedia、http://en.wikipedia.org/wiki/Medical_education_in_South_Africa#South_Africa<br />
21　2010年8月1日、Economist Intelligence Unit Industry Briefing&quot;South Africa pharma and biotech: Sub-sector update&quot;<br />
22　Health and Related Indicators,2008 p132,Utilization of Medicines　Figure 1,http://www.hst.org.za<br />
23　2010年5月、日経ビジネス・オンライン「世界初の心臓移植から40年目の本格参入」<br />
24　2010年12月1日、The Independent UK&quot;Big Pharma and the business of HIV/AIDS&quot;　　　http://www.independent.co.uk/news/business/analysis-and-features<br />
25　2010年8月1日、Economist Intelligence Unit Industry Briefing&quot;South Africa pharma and biotech: Sub-sector update&quot;<br />
26　2004年7月、講談社刊、箒木蓬生著「アフリカの瞳」（2007年7月、講談社文庫に収録）
<p align="right">
<strong>（医医経済研究機構　副所長　岡部陽二）</strong>
</p>
<p align="left">
（2010年6月10日、医療経済研究機構発行「医療経済研究機構レター&quot;Monthly&nbsp; IHEP&quot;」　No.198　p41～55　所収）
</p>
]]>
      
   </content>
</entry>
<entry>
   <title>＜投資教室＞日本型総合証券会社モデルに未来はあるか</title>
   <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.y-okabe.org/market/post_214.html" />
   <id>tag:www.y-okabe.org,2011://1.383</id>
   
   <published>2011-05-14T15:00:00Z</published>
   <updated>2011-07-09T07:15:51Z</updated>
   
   <summary><![CDATA[ &nbsp;&nbsp;&nbsp; &nbsp; 　 &nbsp; &nbs...]]></summary>
   <author>
      <name>okabe</name>
      
   </author>
         <category term="007証券市場論集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.y-okabe.org/">
      <![CDATA[<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110515NihonnkataShoukenLogo2.jpg" alt="110515NihonnkataShoukenLogo2.jpg" width="500" height="254" align="right" />
&nbsp;&nbsp;&nbsp;
<p>
<strong><br />
<br />
</strong>&nbsp;
</p>
<p>
　
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
　証券会社の2011年3月度決算は惨憺たる結果であった。主要20社のうち、10社が減益、7社が赤字に転落した。業績不振の理由として、東日本大震災や欧州危機の影響が挙げられているが、赤字転落各社の業績を見るかぎり、そのような一時的な要因ではなく、日本型総合証券のビジネス・モデル自体が破綻しているように思える。<br />
<br />
　三菱UFJモルガン・スタンレー証券は1,400億円に上る巨額の赤字を計上した。この損失の主因は「スワップション」と呼ばれるデリバティブのディーリングで、想定元本ベースで130兆円という大きなポジションを張ったのが裏目に出たもので、そもそもリスク管理がなされていなかった結果という。当社は幸い大手銀行の傘下に入っていたので救済されたが、独立系であれば間違いなく倒産していた。<br />
<br />
　大和証券グループも373億円の最終赤字に転落、震災に伴う東電株の評価損などが150億円近くに上ると説明されているが、赤字の過半は株式引受部門などホールセール部門での法人取引の不振によるものである。
</p>
<p>
　証券会社の業務は、株式や社債の引受、M&amp;Aのアドバイザリー業務、自己勘定によるディーリング業務などのいわゆる投資銀行業務（ホールセール部門）とおもに個人を対象とする株式や投信などの販売業務（リテール部門）に大別され、大手・中堅の証券会社は両者を併営して、シナジー効果を期する日本型の総合証券を指向する経営方針で臨んできた。それぞれの業務についての現況と将来展望を考えてみたい。
</p>
<p>
<strong>１、投資銀行業務（ホールセール部門）</strong>
</p>
<p>
　投資銀行業務の中核である株式引受額とM&amp;A主幹事の昨年度ランキングは、表1のとおり、証券専業では野村と大和、それに外資系のゴールドマン・サックスがベスト10に入っているだけで、あとの7社はすべて銀行系が占め、とりわけ3メガ邦銀が上位に食い込んでいる。大和は株式引受で5位、M$Aで4位と前年比後退している。
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110515SougoushoukenHyou1.jpg" alt="110515SougoushoukenHyou1.jpg" width="600" height="251" />
</div>
<p>
　<br />
　かつてのメリルリンチのように、証券専業でホールセールとリテールを兼業していた独立の証券会社は、金融危機を経て、米国でも姿を消した。大銀行の傘下に入らずに独立を保っている投資銀行はゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーの2社だけになってしまったが、両社とも投資銀行業務への特化を指向していると見られる。独立系証券会社として残っている兼業大手は、世界中で日本の野村と大和の2社だけである。投資銀行業務には、豊富な資金力と強固な法人顧客基盤が不可欠であるが、BBB＋以下に格付けされているこの2社の帰趨は注目されるところである。<br />
<br />
　投資銀行業務の目的は、本来法人顧客の金融ニーズに応えて多角的なサービスを提供することにあり、銀行の付随業務と位置付けるのが本来妥当な姿である。今回の金融危機で、自己勘定で大儲けを企むのは企業倫理として邪道であり許されない、ということを学んだ。まさに独立した投資銀行のあり方そのものが問われている。
</p>
<p>
<strong>2</strong><strong>、支店販売業務（リテール部門）</strong>
</p>
<p>
　全国に営業拠点網を展開して、個人顧客を中心に株式・社債や投信を販売するリテール営業は、欧州では銀行が行ない、米国ではおもにリテール専門の証券会社が行なっている。主要なリテール証券としては、Ameriprise Financial、Edward Jones、Charles Schwab、E-Trade、TD Ameritradeがあり、Charles Schwab以下の3社はネット販売に注力しているもののネット専業ではない。米国では歩合給の販売員に加えて独立したアドバイザーが顧客を証券会社と結び付ける営業形態が発達している。<br />
<br />
　これに対し、わが国の大手・中堅証券では、手数料自由化後も旧態依然たる株式の委託手数料に依存した支店営業で臨んでおり、ネット証券に顧客を蚕食されている。対応策としては、取扱商品の多様化が考えられるが、為替、デリバティブ、商品といった投機性の高いものは、必ずしも収益増には結び付かない。<br />
<br />
　証券会社にとっても、中核商品はやはり「投資信託」であるが、わが国は表2に見られるように、米国の1割にも満たない投信後進国である。その肝心の投信販売においても、表3に示したように証券会社はまったく振るわない。証券会社が販売した投信の純資産残高はこの10年間ほとんど増えず、この間に4倍以上に増やした銀行にシェアの過半を抑えられ、完全にお株を奪われてしまった。これは証券会社が投信会社を併営してパーフォーマンスの劣悪な投信を顧客に押しつけてきた咎である。
</p>
<p>
　投信の信用回復には、自社の営業への収益寄与を優先して運営してきた証券会社兼営の投信運用会社を切り離し、自社運用の投信は販売しないといった抜本策を講じるしかない。このような自己改革を怠っておれば、投信分野においても引受やM&amp;A業務同様に、外資系投信に日本市場が席巻されることは間違いない。
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110515SougoushoukenHyou2.jpg" alt="110515SougoushoukenHyou2.jpg" width="600" height="246" />
</div>
<p align="right">
<br />
（日本個人投資家協会　理事　岡部陽二）
</p>
<p align="left">
（2011年5月15日発行、日本個人投資家協会発行「きらめき」2011年5月号所収）
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110515SougoushoukenLast.jpg" alt="110515SougoushoukenLast.jpg" width="240" height="320" />
</div>
]]>
      
   </content>
</entry>
<entry>
   <title>南アフリカ共和国の医療(1)</title>
   <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.y-okabe.org/medical/1_2.html" />
   <id>tag:www.y-okabe.org,2011://1.382</id>
   
   <published>2011-05-09T15:00:00Z</published>
   <updated>2011-09-06T11:20:46Z</updated>
   
   <summary><![CDATA[ &nbsp; &nbsp; &nbsp; &nbsp; &nbsp; &nbs...]]></summary>
   <author>
      <name>okabe</name>
      
   </author>
         <category term="008医療経済論集" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.y-okabe.org/">
      <![CDATA[<p>
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110510SouthAfricaLogo.jpg" alt="110510SouthAfricaLogo.jpg" width="217" height="150" align="right" />
</p>
<p align="left">
&nbsp;
</p>
<p align="left">
&nbsp;
</p>
<p align="left">
&nbsp;
</p>
<p align="left">
&nbsp;
</p>
<p align="left">
&nbsp;
</p>
<p align="left">
&nbsp;<strong>１、南アフリカ共和国の政治経済概観</strong>①
</p>
<p>
　南アフリカ共和国（以下、南アと略称）はアフリカ大陸最南端に位置する共和制国家。東にスワジランド、モザンビーク、北にジンバブエ、ボツワナ、西にナミビアと国境を接し、レソトを四方から囲んでいる。南アフリカは首都機能をプレトリア（行政府）、ケープタウン（立法府）、ブルームフォンテーン（司法府）に分散させているが、各国の大使館はプレトリアに置かれているところから、国を代表する首都はプレトリアとされている。南アは1910年から1994年まではケープ州、オレンジ自由州、ナタール州、タランスヴァール州の4州で構成されていたが、1994年に表1および図1に示したとおり9州に分割された。
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110510SouthAfricaHyou1.jpg" alt="110510SouthAfricaHyou1.jpg" width="600" height="295" />
</div>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110317SouthAfricaZu1.jpg" alt="110317SouthAfricaZu1.jpg" width="473" height="410" />
</div>
<p>
<br />
　国土面積は122万平方キロ（日本の3.2倍）で、国土の2/3は内陸高地である。高地の大部分を占めるハイ・ベルト地域は標高1,200～1,800米で、ヨハネスブルグもこの高地にある。内陸高地と東部から南部にかけての海岸線との間には山地が続いている。内陸高地の北西側はカラハリ砂漠、西側はナミブ砂漠に連なっている。気候は地域によって差があるが、総じて年間を通じて温暖、内陸高地の年間平均降水量は502ミリと少なく乾燥しているが、高い山の山頂には積雪も見られる。
</p>
<p>
　総人口は50百万人（2010年央の推計値）で、多人種、多部族から成っている。人種構成はアフリカ人（黒人）79.4%、白人9.2%、カラード（混血）8.8%、アジア人2.6%となっている。アフリカ人はルーズー族（22%を占め最大）、コサ族など9部族から成り、白人はオランダ系（アフリカーナーまたはボーア人と呼ばれ、白人全体の2/3を占める）、英国系、ドイツ系などが多い。　ズールー語（話者人口比率；23.8%）、コサ語(17.6%)、アフリカーンス語(13.3%)、北ソト語(9.4%)、英語(8.2%)など11の言語を公用語として採用している。宗教は80%がキリスト教で、ほかにヒンズー教徒、イスラム教徒も存在する。<br />
<br />
　政治体制は大統領(2009年5月から第11代ジェイコブ・ズマ大統領)を元首とする共和制を採っている。　国民議会（下院、400議席）の総選挙後、下院が下院議員の中から大統領を選出する。このようにユニークな大統領選出方式は世界で南ア1カ国のみである。任期は下院議員と同様に5年、3選まで認められている。議会は国民議会と全国州評議会（上院、90議席）の二院制を採っている。
</p>
<p>
　2001年にゴールドマンサックスが生み出したBRICsはブラジル、ロシア、インド、中国（sは複数形）を指していた。その後、一部の投資銀行などの間で複数を意味する&quot;ｓ&quot;が南アを指すとする用法も定着しつつある。さらに、2009年6月にはBRICｓ4ヵ国の首脳会議が初めて開かれたが、2010年12月には中国が2011年の首脳会議に南アを招待したいと発言,本年4月に中国南部の三亜で開催された第3回の新興国首脳会議に南アのズマ大統領が参加してBRICS5ヵ国の首脳会談が実現した。②<br />
<br />
　もっとも、南アは資源国としての経済発展のポテンシャリティーは大きいものの、BRICsで最小のロシアと比べると、人口50百万人はロシアの1/3弱、経済規模でもロシアの1/4以下と小さい。保健医療分野では、南アの医療費はGDPの8.7%（2008年、2007年は8.5%）と割合としては先進国並みに高く、BRICs 4ヵ国（ブラジル:8.4%、ロシア：5.4%、中国：4.3%、インド：4.1%（いずれも2007年）よりもかなり高いが、一方で妊産婦死亡率や結核罹患率などの健康度指標は、後掲の表4および表6に見られるとおり、BRICs 4ヵ国に比べるとかなり劣悪である。③　また、南アの平均寿命は51歳で、これも中国の73歳、ブラジルの68歳、ロシアの64歳と大きな差がある。④　このような一見矛盾した現象がどのようにして起こっているのか、医療経済の研究対象としては注目に値する国である。
</p>
<p>
　かつての南アはアパルトヘイトと呼ばれた白人による有色人種に対する人種差別で知られ、国際社会では孤立していた。アパルトヘイト（Apartheid、アフリカーンス語で分離、隔離を意味する）は白人と非白人（黒人、インド、パキスタン、マレーシアなどからのアジア系住民や、カラードとよばれる混血）間の諸関係を差別的に規定する人種隔離政策であった。
</p>
<p>
　19世紀に2回にわたって戦われたボーア戦争で勝利した英国の直轄植民地となっていた南アは、1910年5月に4州からなる南アフリカ連邦として統合され、大英帝国内の自治領としてオランダからの移民を中心とするアフリカーナーによる自治を確立した。翌1911年には、この自治政府により鉱山における白人・黒人間の職種区分と人数比を全国的規模で統一して白人労働者の保護を図る最初の人種主義法「鉱山・労働法」が制定され、その後もアパルトヘイトを徹底する方向での人種差別法の制定が続いた。
</p>
<p>
　1948年にはアフリカーナーの農民や都市の貧しい白人を基盤とする国民党が政権を握り、国際連合の抗議やアフリカ人民評議会（ANC）などの団体の抵抗にもかかわらず、国民党はアパルトヘイトの維持に固執した。イギリスからも人種主義政策に対する非難を受けたため、1961年には英連邦から脱退して共和制を採用、国名を「南アフリカ共和国」に改めた。
</p>
<p>
　1980年代後半になると、この隔離政策は国際社会から激しい非難を浴び、貿易禁止などの経済制裁を受けて経済的に行き詰まった。その結果、1991年に当時のデクラーク大統領はアパルトヘイト法撤廃を打ち出し、ANCなどの非白人解放勢力との長期にわたる交渉の末に、1994年に全人種による初の総選挙が行われて新憲法が制定された。ANC のネルソン・マンデラが民主化後初の大統領に選出されて、アパルトヘイトは完全に撤廃された。
</p>
<p>
　南アはこの隔離政策のために1960年のローマ・オリンピックを最後に1992年にバルセロナ・オリンピックで復帰するまで長期間にわたってオリンピックからも追放されていたが、2010年にはサッカーのFIFAワールドカップを主催するほどに国際社会への復帰に成功している。
</p>
<p>
　アパルトヘイトが撤廃された21世紀になっても、アパルトヘイトが生み出した教育格差が残っており、依然として人種間の失業率格差は解消されていない。アパルトヘイト時代に教育を受ける機会を得られなかった国民は、炭坑労働者など、雇用が不安定な業種にしか職を求めることができなかったからである。しかしながら、撤廃後16年以上が経過し、教育を受ける世代が一巡したことで、白人・黒人間の失業率格差は縮小しつつある。一方で、隣国のジンバブエからの移民が急増し、国内に住む黒人の失業率が増加したため、大規模な移民排斥運動が起こっている。さらに、黒人優遇政策により、これまで要職に就いていた白人が押し出されて、白人の失業率が上昇するといった現象も起きている。
</p>
<p>
　南アはアフリカ大陸では最大の経済大国であり、アフリカ唯一のG20参加国である。南アの主要経済指標は表2に掲げたとおり、実質経済成長率は1994年の民主化以降徐々に高まり、2008年まで4年余りは5％前後で推移した。先進国と比べるとかなり高い成長率であったが、BRICS5ヵ国の中では、ブラジルをやや上回っているものの、10％を超える中国と7％前後のインドやロシアなどに比べれば見劣りする。<br />
<br />
　南アの経済成長の原動力のひとつは、豊富な天然資源の輸出にある。金の生産量は中国に抜かれ世界2位になり、ダイヤモンドも世界5位に落ちているが、金よりも希少なプラチナでは世界生産量の約77パーセントを占めている。これらの天然鉱物資源は、近年の商品価格高騰の恩恵もあって、南アの外貨獲得源となっている。資源をベースにした経済成長という点では、ロシアやブラジルと同じタイプの国である。<br />
<br />
　もう一つの原動力は、南ア国内の内需拡大にある。これは、20世紀には貧困層であった黒人層からも富裕層や中間所得層が増えてきており、彼らの購買力増加が経済成長に寄与している。また、海外から南アフリカへ進出する企業も増えており、経済拡大に寄与している。もっとも、内需拡大は現状では富裕層中心に限られているが、大量の貧困層の人々が職にありつけば、南アの内需は爆発的に拡大する。そのためには、25％を超える高い失業率を改善することが急務であり、この失業対策が政策の柱となっている。<br />
<br />
　2010年通年の経済成長率は前年比＋2.8％のプラス成長であったが、2010年10～12月期の実質GDP成長率は前期比年率＋4.4％と加速、景気先行指数からも先行きの生産の回復が期待され、今後も堅調な景気拡大が見込まれている。サッカーＷ杯後の大規模ストで景気は足踏みしていたが、スト収束後の生産拡大や資源価格高騰による交易条件の改善が景気を押し上げている。<br />
<br />
　金融面では、ランド高による輸入物価の下落により、物価上昇率は鈍い基調にあり、金融当局は2010年中に計３回の利下げを実施して景気を下支えしてきた。他方、昨年春よりマネーサプライは拡大に向かい、国際商品市況高騰による食料品やエネルギー価格の上昇から、足元の物価上昇圧力は高まりつつある。<br />
<br />
　政府は今年度も拡張型予算を継続する方針で、今後3ヵ年でインフラ投資などを通じて雇用拡大を図る一方、中長期的な潜在成長率向上を主眼に置いた歳入拡大で財政赤字の圧縮を目指している。⑤
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110510SouthAfricaHyou2.jpg" alt="110510SouthAfricaHyou2.jpg" width="600" height="364" />
</div>
<p>
<br />
<strong>２、南アフリカ共和国の人口問題</strong>
</p>
<p>
　1996年に40,583千人であった南アの総人口は、表3にみられるとおり、その後14年を経て、2010年央に49,991千人となり、同年末には50百万人を超えた。年間の増加率は表4のとおり、2002年の1.4%から2010年には1.06%へと漸減、増加のペースは鈍っている。これは表3にあるとおり出生者数が減少傾向にある一方、死亡者数は増加傾向にあることが主因であるが、総人口には自然増減に加えて移民の流入増が大きく影響している。
</p>
<p>
　移民については、近隣諸国おもにジンバブエからの不法移民が1970年代から活発化し、民主化後は政府が比較的寛大に難民を受入れてきた。南ア政府の発表では、1999年から2010年までの累計で、アフリカ人（黒人）の純流入が1.3百万人、白人の純流出が0.4百万人となっているが、実際にはこの間年間10万人以上の規模での流入が続いたものと見られている。人口統計にはその一部しか含まれていないので、総人口の実数はもっと多いとの見方が強い。
</p>
<p>
　不法移民数についての南ア政府推計は一切発表されていないものの、いくつかの機関の推計では2百万人から4百万人と言われており、米国のCIAは3.6百万人と推定している。さらに、CIAは南ア国内での不法移民排斥運動が激化したため、昨年からはジンバブエからの大量流入が流出に逆転したため、2011年には人口減になるものと分析している。⑥　南アの国勢調査は2001年以降行なわれておらず、2011年に行なわれる調査の結果次第で総人口は大きく修正される可能性がある。
</p>
<p>
　平均寿命（出生時の平均余命）は1996年には57歳（男女合算）であったが、表3および図2に見られるとおり、その後は低下を続け、2006年以降は若干改善傾向にあるものの、2010年には男性53.3歳、女性55.2歳となっている。この水準より低い国はナイジェリア、ジンバブエなどアフリカ諸国以外にはほとんど見当たらない。男女間の性別平均寿命格差はロシアでは13歳と大きく、OECD平均で6歳弱であるのに対し、南アでは2歳程度と小さい。図3に示した南アとロシアとの顕著な男女間の違いが、どのような社会環境の差違によるものか、興味深い課題である。
</p>
<p>
　年間の出生者数は減少傾向にあるものの、一人の女性が生涯に出産する合計特殊出生率は、表4のとおりいまだに2.4と日本の2倍近く高い。15歳未満・65歳以上の小児・高齢者率は表4（歳右欄）のとおり16%にまで高まってきたものの、15～64歳の労働力人口は84%と依然として高い。南アの人口問題は乳幼児期と若年層の死亡率が異常に高い点に絞られる。
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110510SouthAfricaHyou3.jpg" alt="110510SouthAfricaHyou3.jpg" width="600" height="333" />
</div>
<div style="text-align: center">
<img style="width: 481px; height: 268px" src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110320SouthAfricaHealthcareZu2.jpg" alt="110320SouthAfricaHealthcareZu2.jpg" width="480" height="313" />
</div>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110510SouthAfricaHyou4.jpg" alt="110510SouthAfricaHyou4.jpg" width="600" height="321" />
</div>
<p>
<br />
　国民の健康水準や平均寿命は狭義の医療セクターの充実度だけではなく、社会インフラや教育の状況に大きく左右される。教育水準については、2000年当時においても南アの成人識字率84%、初等教育総就学率100%、中等教育総就学率95%と極めて高い水準にあるうえに、顕著な男女格差も見られない。<br />
<br />
　また、感染症に影響する安全な水および適切な衛生設備へのアクセスについても、全国民の9割近くは不便を感じていない。さらに、国民の栄養状態に影響を与える食糧も豊かで国民一人当りのカロリー摂取量は2,900カロリーを超えている。このように平均値は高いにもかかわらず、健康水準全体の改善に繋がらない理由としては、社会階層間の格差が大きいことが指摘されている。⑦
</p>
<p>
　南アが直面する最大の人口問題は総人口比の死亡者数が多過ぎ、かつ2000年に入って死亡者数が漸増傾向にあることである。その原因の第一は、表4（第3欄）に掲げた「新生児千人当たりの1歳までの乳幼児死亡数」の多さである。この乳幼児死亡数46.9人(2010年)は、若干改善傾向にはあるものの、先進国でもっとも低い日本の2.6人は別としても、ロシアの8.5人、トルコの17.0人（いずれも2008年）などと比べても異常に高い。問題の第二は、図3に見られるとおり、30歳から34歳の成年期にかけて死亡者数が急増、この若年層の30歳前半世代が死亡者数のピークとなっていることである。図3の下に＜参考＞として掲げた日本では、この死亡者数のピークは85歳前後となっており、南アとは50歳もの開きがある。
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110321outhAfricaZu3.jpg" alt="110321outhAfricaZu3.jpg" width="600" height="412" />
</div>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110321SouthaAfricaZusannkou.jpg" alt="110321SouthaAfricaZusannkou.jpg" width="400" height="270" />
</div>
<p>
<br />
　南アにおいて若年層での死亡がきわめて多いのは、エイズや結核罹患率がきわめて高いことにあるが、その眞因として挙げられているのは所得格差の大きさである。図4に掲げたとおり、南アの所得格差はジニ係数で0.7と世界主要国の中でもっとも大きい。同じ新興国のブラジル、中国、インドに比べても格段に大きく、OECD平均の2倍以上の大きな格差となっている。ジニ係数は不平等さを客観的に比較する際の代表的な指標の一つで、0から1の範囲で、係数の値が0に近いほど格差が少なく、1に近いほど格差が大きい状態であることを意味する（日本のジニ係数は上昇傾向にあるが、2000年代では0.2以下でスエーデンと並んでOECDでもっとも低い）。⑧
</p>
<p>
　しかも、南アの所得格差は1990年代に比して2000年代にはさらに拡大している。このように大きな所得格差が生じる最大の要因は若年層の高失業率にあるものと見られている。21歳から30歳の階層の失業率は1993年の20%から2008年には33%にまで上昇している。人種間の失業率格差は縮小傾向にあるものの、それでも全体の失業率で見ると2008年にはアフリカ人27%に対し、白人10%と大きな差があった。所得格差に起因する若年層の高死亡率は生活環境や医療体制とも密接に関連している。
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110323SouthAfricaZu4f.jpg" alt="110323SouthAfricaZu4f.jpg" width="499" height="269" />
</div>
<p>
<br />
　統計が入手可能な最近3年間の主要な疾病別の死亡者数は表5のとおり、主要10疾患が総死因の約1/2を占めている。この主要疾病名は、表6に見られるように日米などの先進国とはもとより、ブラジル・ロシアなどの新興国とも顕著な違いがある。ロシアとの対比で見ても、南アの結核は7倍、エイズは40倍と多く、逆に南アのがんはロシアの1/3、自殺は1/50と少ない。以下におもな疾病についてその要因を観察したい。
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110510SouthAfricaHyou5%266.jpg" alt="110510SouthAfricaHyou5%266.jpg" width="565" height="512" />
</div>
<p>
<br />
（１）エイズ（Acquired Immune Deficiency Syndrome, AIDS、後天性免疫不全症候群）<br />
<br />
　エイズはヒト免疫不全ウイルス（HIV）が免疫細胞に感染し、免疫細胞を破壊して後天的に免疫不全を起こす伝染力の強い疾患で、1980年代以降に急増した。<br />
<br />
　HIVウイルスの感染経路は性行為や出産時の母子感染、輸血時や麻薬のまわし打ち時の血液感染などであるが、多くの人は急性感染期を過ぎると症状が軽快し、5～10年は無症状で過ごした後に発病する。この病気の原因となるウイルスがHIV であり、感染してからおよそ10年で免疫機能を壊し、いろいろな病期を経てエイズという最終病期にいたる。つまり、エイズはHIV感染の結果、微生物や病原体に対する体の抵抗力が機能しなくなる疾病で、HIVウイルス保有者が発病した最終状態ということである。<br />
<br />
　これまでに様々な抗HIV薬が開発され、薬効も著しく向上しているが、完治・治癒に至ることは困難とされ、抗ウイルス薬治療は一生継続する必要がある。⑨　もっとも、体内のウイルス量を低く保ち、免疫機能を正常に近いレベルにまで回復させることはできるようになり、HIV感染を「死刑宣告」から「共に生きることの出来る病」に変えたといわれる抗レトロウイルス薬（ARV、anti-retroviral drugの略）のジェネリック化も進んでいる。先進国ではエイズによる死亡者を激減させたこのARVを南アでも低価で大量に供給できるようになれば、エイズ治療が劇的に改善される可能性がある。⑩<br />
<br />
　エイズは1981年に最初の症例が報告されてからわずか10年程度で、世界中の感染者数が1.0百万人にまで広がり、2009年現在では33.3百万人に達したものと推定されている。ただし、HIV感染者数33.3百万人に対し、エイズによる年間の総死亡者数は1.8百万人程度に留まっている。また、世界的なエイズの流行は2000年までにピークを迎え、新規感染者数は2001年の3.1百万人から2009年の2.6百万人へと19%ほど減少している。⑪<br />
<br />
　南アのHIV感染者数は、表7のとおり人口の10.9％を占める5,318千人と、全世界の16%を占め、一国として最大の規模である。南アにおいてもHIV感染者数は、2000年まで増え続けたが、2000年代に入ってようやく横這いないしは若干減少に転じている。ことに表8の最上段にある母子感染による14歳以下の小児の感染比率が大きく低下しているのは注目される。この感染比率推計は、南ア政府が15千所帯、約34千人を対象に対象者の64%からHIV検査の同意を得て3年ごとに行なった悉皆調査によるもので、推計値の信頼度は高いものと見られている。<br />
<br />
　しかしながら、南ア保健省が2009年に行なった全妊産婦検診時の検査結果をとりまとめたHIV感染者比率は表8に掲げたように、全国平均で30%弱と表7の感染比率よりかなり高い。表8は対象者を15歳から49歳の妊産婦に限定した調査結果であり、全国民についての比率よりはかなり高くなるのは当然ではあるものの、それにしても表7の全国民平均10.9%(2008年)は過小推計との見方も強い。国連は独自に南アの感染者数を5.7百万人、人口の12%（2007年）と推計している。⑫<br />
<br />
　南アのエイズによる年間死亡者数については、大きく異なった公式統計が二つ存在する。HIV感染者の死亡をすべてエイズによる死亡と見なした表3の統計では、毎年300千人内外がエイズにより死亡、総死亡者数の40%強を占めている。この統計によると、南ア国民の疾病別死因としては「エイズ」が他の疾病を大きく引き離して断然首位である。全世界のHIV感染者数33.3百万に対し年間死亡者数1.8百万人（感染者18.5人に1人）という国連エイズ計画推計の比率を南アに当てはめて算出すると、やはり年間300千人前後となり、このエイズによる死亡者は妥当な数字である。<br />
<br />
　これに対し、表5に掲げた医師の死亡診断書をベースとした疾病別統計でのエイズによる死亡者数は、15千人前後とあまりにも少ない。<br />
<br />
　いずれも南アの公式統計であるエイズ死亡者数が20倍も大きく食い違っているのは、エイズという疾病の特性にある。一つには、エイズは直接の死因となる疾病名ではなく、その前提となる免疫不全の後天的体質であって、死因として一つの主病名を特定できない事情がある。HIV ウイルスによって免疫不全となり、その結果として肺炎とか結核といった通常の疾病に罹患して死に至るのである。たとえば、肺炎の場合、若者は肺炎に罹っても肺炎球菌に対する強い免疫力を持っているために、肺炎で死亡に至るケースはきわめて少ないが、HIV感染によってこの免疫力が奪われると、肺炎球菌に感染すると簡単に亡くなるという構図である。<br />
<br />
　したがって、HIV感染者が肺炎で亡くなったケースの診断病名を「肺炎」とすることは必ずしも間違いではない。また、医師自身、患者がHIV感染者であることを認識していないケースも多い。エイズによる特徴的症状としては、肺炎や結核、一部のがんなど23の疾患が挙げられており、複数の合併症が重なることも多い。<br />
<br />
　もう一つは、エイズの烙印を避けてほしいという家族などからの強い要望があり、さらにはHIV感染の事実を生命保険会社に告げていなかった場合には、死亡診断書に死因をエイズと明記されると保険金が支払われないという切実な不都合もある。Medical Research Council of South Africa(MRC)という医療調査機関が2000年と2001年に交付された死亡診断書の12%について再検証を行なったところ、診断書上の死因が結核のうち43%、呼吸器疾患のうち32%の主病因はエイズであったとする調査報告書を出しており、ほかにも同様の推計が報告されている。⑬
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110510SouthAfricaHyou7%268.jpg" alt="110510SouthAfricaHyou7%268.jpg" width="600" height="507" />
</div>
<p>
　エイズが南アにおいて他の新興国や途上国以上に急速かつ広範に蔓延した背景として、南アの大きな所得格差や性風俗の乱れ、生活環境整備の遅れなどが挙げられている。これらの理由はそれぞれもっともではあるが、一方で南アの医療水準は高く、医療費支出のGDP比も高いので、適切な政策対応がなされていれば、これほど酷い状況に陥ることはなかったであろうとの指摘も多い。<br />
<br />
　南アにとって不幸であったのは、民主化後初のネルソン・マンデラ大統領に次いで1999年6月から2008年9月まで9年余にわたって国家元首であったタボ・ムベキ大統領がエイズ否認主義者であり、さきに述べた抗レトロウイルス薬（ARV）治療の普及や公費支援に否定的であったことである。エイズ否認主義者は、エイズがHIVウイルスによって発症するという科学的知見を認めず、逆にエイズに効くARVは有害で、HIVウイルス原因説はその薬を作っている大手製薬会社の陰謀であると主張している。<br />
<br />
　最近出版された米国の心理学者セス・C・カリッチマン著「エイズを弄ぶ人々」によれば、この著者はムベキ元大統領がエイズ否認主義者であったことにより増加したエイズによる死亡者数を2.6百万人以上と見積もっている。⑭　否認主義者の中には、優れた研究者やジャーナリストも多く、このような理不尽な主張が罷り通ったのは、迫害や差別が日常茶飯であった南ア社会で陰謀説が流行し易い土壌があったという不幸な歴史的背景があったとはいえ、人類の悲劇としか評しようがない。<br />
<br />
　2009年5月に元首となったジェイコブ・ズマ大統領は、就任後ただちに「2011年までに国内のHIV陽性者の80%がARV治療を受けられるようにし、同年末までに新規感染者数を半減させる」というエイズと闘う南ア政府としての明確な政策目標を表明した。このための追加予算を9億ランド(約113億円)計上、モツォアレディ保健相がHIV/エイズの予防・治療・管理についての具体計画を発表している。⑮　このような施策が強力に進められれば、南アのエイズ撲滅作戦もようやく軌道に乗るものと期待される。
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110510SouthAfricaLst.jpg" alt="110510SouthAfricaLst.jpg" width="240" height="359" />
</div>
<p>
（２）結核
</p>
<p>
　表6にあるとおり、南アの結核による死亡率は人口10万人当り149.3人と、ロシアの21.5人、ブラジルの3.0人に比しても格段に高い（日本は1.8人）。これを結核罹患率で見ると、南アは10万人当り960人と、ロシアの107人、ブラジルの46人に比して群を抜いて高くなっている。<br />
<br />
　南アには、全世界でHIVと結核に二重に感染している人々の50%が住んでいると言われている。しかも、従来の結核治療薬に耐性を持つ結核菌が流行し始めており、これは免疫系がHIVウイルスによってダメージを受けると結核菌に感染し易くなるという事実とも関連している。結核は適切な治療を行なえば完治する疾病となっているにもかかわらず、南アでは結核発病後平均25日で死亡するといった地域があることも報告されている。これはHIV感染者のケース以外には考えられず、結核はエイズ同様にHIV感染の結果にほかならない。<br />
<br />
　したがって、南アにおいては結核とHIV感染とは同時に対策を講じなければならない特殊な疾病となっている。これを踏まえて、これまで別個に対応してきたHIV感染と結核を統合するための新政策も打ち出されている。⑯
</p>
<p>
（３）肥満
</p>
<p>
　南アには飢餓で栄養失調に陥っている人も存在するが、国民全体としての健康上の問題はむしろ肥満の増加にある。表9の国際比較に見られるとおり、南アの過体重成人は男性59%、女性67%と米国並みに多く、BMI30以上の肥満者（日本の呼称では超肥満者）も女性では35%とやはり米国並みに多い。エイズや結核に加えて、心疾患、糖尿病、高血圧などの慢性疾患が死因の上位にランクされているのは、この肥満の多さが原因となっている。<br />
<br />
　肥満の増加は都市化の急進展により、これまでの自然食中心から安価なファーストフードや油脂分の多い食べ物が多くなってきたためと考えられている。これに加えて、南ア人は肥満を健康によくないとは認識せず、豊かさと権力が体のサイズにも反映し、むしろ「太り過ぎはよいことだ」という意識が根強いことが肥満の増加を助長している。ことに黒人女性は肥満体を美しくて魅力的と考えているため、成人女性の過体重の比率は67%と世界一高い。さらには、エイズや結核はやせ細って死に至る病であるため、太っていることは「エイズに罹っていないことの証明」となるといった誤った意識が蔓延しているのも問題である。⑰
</p>
<div style="text-align: center">
<img src="http://www.y-okabe.org/images/upload/110510SouthAfricaHyou9.jpg" alt="110510SouthAfricaHyou9.jpg" width="500" height="239" />
</div>
<p align="left">
<strong><br />
参考引用文献一覧</strong><br />
<br />
①　ウィキペディア　　http://ja.wikipedia.org/wikiの記述などから筆者が構成<br />
②　2010年12月24日、ロイター記事http://jp.reuters.com/article/worldNews ③　WHO, World Health Statistics 2010、 http://www.who.int/whosis/whostat/2010/en/index.html<br />
④　2010年2月4日、毎日新聞国際欄「中国経済」<br />
⑤　2011年3月2日、第一生命経済研究所「経済レポート」　http://www3.keizaireport.com/report<br />
⑥　CIA Fact-book　https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook<br />
⑦　2000年12月、瀧澤邦雄著JICA、南部アフリカ援助研究会報告書第２巻第5章p93<br />
http://www.jica.go.jp/jica-ri/publication/archives/jica/country/2002_01.html<br />
⑧　2010年、OECD報告書　&quot;Tackling Inequalities in Braｚil, China, India and South Africa&quot;<br />
⑨　ウィキペディア「後天性免疫不全症候群」、http://ja.wikipedia.org/wiki<br />
⑩　オックスファム・ジャパン・スタッフ・ブログ、http://www.oxfam.jp/staff_blog/2010/05/post_103.html<br />
⑪　2010年11月、国連合同エイズ計画（UNAIDS）レポート「世界のエイズ流行」2010年版<br />
⑫　国連合同エイズ計画（UNAIDS）レポート、http//data.unaids.org/pub/Global Report/2008<br />
⑬　HIV and AIDS statistics for South Africa, http://www.avert.org/safricastats.htm<br />
⑭　2011年1月31日、化学同人社刊セス・C・カリッチマン著野中香方子訳「エイズを弄ぶ人々」p283<br />
⑮　2009年6月3日、Bus News,　http://allafrica.com/stories/200906030837 html<br />
⑯　2010年11月3日、BUSINESS Day&quot;New one-roof policies on TB,HIV/AIDS are challenging&quot;<br />
⑰　2009年11月2日、Newsweek、http://news.goo.ne.jp/article/newsweek
</p>
<p align="right">
<strong>（医</strong><strong>療経済研究機構　副所長　岡部陽二)</strong>
</p>
<p>
（2011年5月10日、医療経済研究機構発行「医療経済研究機構レター（&quot;Monthly　IHEP&quot;）」No.197号　2011年5月号　ｐ23～35所収」
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
<p>
&nbsp;
</p>
]]>
      
   </content>
</entry>

</feed>

