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アジアと共生するための三つの提案 

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複雑なアジア諸国の対日感情

 共生、とりわけ海外との共生については、従来、欧米企業との競争においてわが国企業が貿易・投資摩擦回避のためにいかに自己抑制を図るかといった観点から主に論じられ、アジアとの共生の重要性は軽視されてきた。

 確かに、今日では、生産拠点のアジア諸国への移転が顕著になっているが、その狙いは、超円高の下での高労働コスト対策として、生き残りを賭けた企業の自己防衛的な国際競争力の回復といった面が強く、アジア諸国の経済発展や民生安定に協力していくといった理念は極めて薄いように思われる。

 しかしながら、アジア諸国の対日感情は複雑で、わが国企業が経済的論理だけで現地進出を推し進めれば、欧米諸国との軋轢よりも遥かに大きな政治的・文化的摩擦にまでエスカレートする危険性を孕んでいる。

 このような事態を避けるには、今こそ発想を転換して、これまでのわが国の欧米偏重の経済・行政・教育システムを、アジアにも均等に配慮したバランスのとれたものに改め、アジアとのイコール・フッティングで共生が可能となるようなシステムの構築に直ちに取りかかるべきではあるまいか。 

中国・韓国語などを義務教育の必須科目に

 そこで、21世紀を展望したアジアとの共生に向けて次の三点を提言したい。

 第1はアジア諸国語の教育。英語教育に加え、中学生からの必須の第2外国語として中国語・韓国語・タイ語などアジアの言語習得を課する。ビジネスは英語で充分だが、アジアの人々の心情を理解するには現地語の習得なくしては困難であろう。同時に、アジアの学生が国内で日本語を習得できる施設の大量創設に官民挙げて協力すべきである。

 第2はアジア重視の歴史教育。それぞれのアジア民族が置かれてきた歴史的状況やその国民性の違いから、歴史観が国により異なるのは避け難いが、少なくとも19世紀以降、アジアで起こった重大な歴史的事実については、共通の事実認識を持つことが不可欠である。それには、何らかの中立的・客観的作業を通じてアジア史を集大成し、各国教科書の事実認識の共通化を図るべきである。

 第3は文化・スポーツ交流。アジアの伝統芸術の日本での公演やアジアの若者との親善試合を飛躍的に増やす努力を惜しむべきではない。同時に、わが国文化のアジアへの紹介、例えば大相撲のアジア巡業や歌舞伎や能のアジア公演も、経済界が音頭をとって欧米向け以上に頻繁に実現すべきであろう。

おかべ・ようじ

  • 生年月日;1934年(昭和9年)8月16日
  • 出身地;京都府
  • 経歴;住友銀行専務を経て1993から現職
  • 趣味;囲碁、読書、鉱物切手収集

(1995年12月25日、社団法人・経済団体連合会発行、「月刊KEIDANREN増刊号」第43巻増刊号(通巻518号)「私の共生論・経済人135人のオピニオン」第6部「国境を越えた共生」所収)

 

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