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競争なくしてサービス向上なし~外国通貨業務進出からの教訓

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 私は平成9年6月から平成11年9月まで2年3ヶ月SIBUS会長を務めさせて頂き、引続き平成14年5月まで相談役、その後は非常勤の特別顧問として、当社のお世話になっております。

 その間に、五十川社長から恩田社長への社長交代がありましたが、五十川社長は平成10年の3月半ばに転出、後任の恩田社長は発令時にはサンフランシスコでご活躍中であったため、着任は8月までずれ込みました。その結果、この約五ヶ月間は私が実質的に社長兼任ということで、我ながらよく働いた記憶が今も鮮明に残っております。というのも、ちょうどこの間の平成10年4月に、当社業務の新しい柱として計画してきた外国通貨の地銀向け卸業務を開始したからです。

 当社では、外国通貨の取扱い自体は平成8年から住友銀行の本支店向けに業務代行という形で手掛けてきました。銀行から受託した当初は、厄介な仕事を押し付けられたといった受け身の姿勢で対応していたようですが、社内で討議の結果、どうせやるのであれば前向きに大きく展開しようではないかという五十川社長の決断で、私の会長着任時には、翌年4月からの卸売業務への進出方針がほぼ固まっておりました。T/Cに加えて外国通貨も取扱うことにより、まさに「旅行マネーの総合卸商社」としての第一歩を踏み出したのです。

 外国通貨の卸売買業務は、このDデーに向けて、一年以上に亙って周到な準備をして来たものの、やはり実際に始めてみると種々の問題が明らかになってきました。そこで、内部事務体制の再編、東西での販売戦略打合せ、顧客先全地銀の往訪などに全社を挙げて邁進しました。何事も最初が肝心と思い、大袈裟にいえば最高責任者として現場指揮の先頭に立った次第です。外国通貨売買の新規売込みに的を絞って、北海道から沖縄までほとんどの地銀・大手信金を廻り、旧知のトップともお会いできたことが懐かしく思い出されます。

 当社がこの業務への進出を決めた最大の理由は、外国通貨の供給が当時リパブリック・ナショナル銀行(現香港上海銀行)一行に独占されており、同行の顧客サービスが悪化の一途を辿っていたことにありました。かなり以前は、シティー・バンク、バンク・オブ・アメリカ、UBSなどの外銀がこの業務を手掛け、競争原理も働いていたようですが、マネー・ロンダリング防止に要するコスト高などを嫌って順次撤退し、シティー・バンクから業務を譲受けたリパブリック・ナショナル一行が残ったものです。その結果、住友銀行も同行に仕入・売却を依存していたのですが、同行のサービスの悪さに対しては、苦情や不満が鬱積していました。

 取扱手数料が高いうえに、仕入れ時の最低ロットが定められていて在庫保有リスクが大きいといった問題に加え、買取分に偽造紙幣が混入していた場合には6ヶ月以上も経ってから返却されても文句が言えないといった、同行側の都合本位での無茶苦茶な取引条件を呑まされていました。偽造紙幣は同行が買取時にしっかり点検すれば、すぐに判ることであり、米国の連銀へ持ち込んでから返却されてくるというのは、あまりにも身勝手な主張でした。これでは、当初の買取銀行は対処のしようがありません。そこで、偽造紙幣の返却期限を一週間内とする条件で買取銀行をバンク・オブ・アメリカに変更するとともに、当社でも水際でチェックする体制を完璧なものにしました。リパブリック・ナショナルは、どうやら水際での自らのチェックを怠っていたようです。

 当社は仕入先もバンク・オブ・アメリカに変更し、米国の連銀からの直接仕入れルートも開拓、さらには事前パック・サービスを開発するなど顧客からの要望をとり入れた改善を重ね、顧客先地銀からの注文には肌理細かく対応できる体制を早期に整えました。当社の新規参入により、取扱手数料が競争で下がったうえに、サービス内容が格段に改善されたことによる顧客の利益には計り知れない大きなものがありました。

 当社も厳しい採算を強いられはしましたが、これをサービス向上によって販売量を拡大するという販売戦略を樹て、全職員ご奮闘のお陰で何とか採算ベースに乗る新しい業務の柱を打ち立てることができたのは幸いでした。サービス業における競争原理の重要性を、肌身で実感することができたのは、私にとっても大変貴重な勉強になりました。

 一言で申せば、この外国通貨の卸業務開始から身をもって体験できた教訓は、「競争なくして、サービスの向上なし」というサービス業の原点です。これは至極当たり前のようではありますが、競争原理が有効に働いてサービスの改善に繋がり、延いては社会全体の生産性向上にも資するプロセスは、さほど簡単ではありません。また、競争があれば、必ず勝者と敗者が生まれます。当社も顧客サービスの向上に不断の努力を続けなければ、勝者であり続けることは難しいのも、競争原理の帰結です。皆様方の一層のご奮闘に期待しております。

 (2003年12月発行、SMBCインターナショナル・ビジネス㈱創立20周年記念論集所収)

 

 

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