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大学教員は競争せよ~実績を相互評価・任期制・年俸制を導入、国公立は法律で強制も~<2007年6月18日付け「日本経済新聞」教育欄>

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元住友銀行専務岡部陽二

住友銀行(現三井住友銀行)専務から大学界に転じた岡部陽二元広島国際大学教授は、大学改革には相互評価による教員評価と任期制・年俸制の導入が欠かせないと指摘する。

銀行退職後、2000年5月までの7年間、広島国際大学教授を勤めた。国際経営論などを担当、フルタイムの大学教員として働きながら、多くの大学の現状を見た。

大学で感じたことは、勤務環境の急激な変化だった。銀行では国際金融マンとして営業一筋であったこともあり、緊張度の高い競争社会を経験してきた。これとは逆に、大学は競争のまったく存在しない無重力の世界のようだった。教育実績がまったく評価されることがない微温的なシステムに保護されているからだろう。

産業界を参考に

だが、教育者の使命は学生に自ら考えて行動する力をつけさせ、厳しい競争社会を生き抜けるような人材を育てることだ。それには、教育の質を高める必要があるが、教育の質の向上は教員間の切磋琢磨(せっさたくま)による激しい競争によってのみ実現するのは、産業界のサービス競争による品質向上と何ら異なるところはない。

したがって、教育改革のキーワードは、「教育現場への教員間の競争原理導入」である。大学間・学生間での競争を促進するには、まず大学教員間の競争環境を作ることが肝要である。

そこで、結論として、四年制大学の教育現場に導入すべきシステムは、

①教育実績についての相互評価(ピア・レビュー)を中心とする教員の相対評価実施

②この評価の仕組みを活用しての大学教員への「任期制」「年俸制」の導入

の二点であると確信している。

ここでの問題意識は、教育職としての大学教員の資質確保が中心であって、大学院や研究所の研究職は対象としていない。

大別すると、大学教員の責務には大きく分けて、教育と研究があるが、日本の大学教員は大学の種別を問わず、研究重点志向である。

世界一四ヵ国で行なわれたカーネギー教育振興財団の大規模調査の結果でも、日本の大学教員(研究専門職は除く)の七〇%が教育よりも研究が大切と自己判断している。他国より格段に高い比率だ。

こうした教員の意識は、研究実績は評価されるが、教育でいくら頑張ったところで、誰からも評価されず、昇進や増収にも直結しないという雇用形態に由来するものと考えられる。研究の場合には、学会発表、研究誌への論文掲載、出版、研究助成などを通じた評価がなされ、学内での処遇にも大いに影響するが、学生の教育については評価が完全に欠落している。

教育面での教員評価システムが欠落する一因は、教育者としての責務をどの程度果たしているのかを客観的に評価することが難しいからだ。

悪習を放置状態

そもそも、大学では評価をする上司や人事責任者が誰であるのかも不明確だ。採用時には、専門の部局が審査をし、教授会の承認を得て決定する大学が多いが、評価対象は主に研究業績などであり、教育者としての資質はあまり論議されない。

その結果、いったん採用されれば、教育にかける時間を極力抑えて、研究のみに精を出したり、学外活動に専念したりするような不心得な教員も出てくる。評価システムが存在しないので、十年前に廃れた経営理論を十年一日のごとく講ずる先生や実用英語の授業でシェクスピアや聖書を教える教員が現れるのも不可避である。一コマの授業は15回と決っているのに,12回程度で止めてしまう悪習も放置されている。

教員の評価方式には、自己評価、相互評価(ピア・レビュー)、第三者評価の三類型がある。独立性が高い教育職は、医師や看護師などと同様、「相互評価」が重視されるべきであろう。要は、緊張感のある相互監視の下で、教育方法に絶えざる自己研さんを積み重ねる努力を強いるシステムを確立するのだ。

相互評価は全教員の授業を同僚教員が聴講し評価をする方式が基本となるが、教育者としての日常の活動振りは同じ職場で働いていれば、よく分かる。他の教員の授業を聴くのは、教授法の勉強としても極めて有効である。学生から評判を聴くだけでもかなり的確な評価が可能だ。教員相互の評価を集計すれば、優秀な教員と劣悪な教員との見分けが容易にできる。

次に評価結果は、学長直轄の審査委員会で集計分析し、人事考課に随時反映させることが重要だ。教員に競争意識を持たせ、真に学生の学力や品性向上に役に立つ教育をする優れた教員に報い、教育には不熱心で不向きな教員を排除することが可能になるからだ。

首都大に高評価

評価結果を勤務評定に反映させるには、「任期制」と「年俸制」の導入が欠かせない。

最近では、首都大学東京が四年制大学で初めて任期制と年俸制を全面的に採り入れる決定をした。任期制導入で、従来の講座制や年功序列型の体制を廃し、能力や業績評価により弾力的な昇進の道を開くことを狙った。年俸制は基本給、職務給、業績給の三本柱とし、教員評価委員会による「教員評価基準のマトリックス」を作成して、これに準拠した評価を行なうというものである。

首都大学東京は、昨年のリクルート大学評価で、「将来大きく発展しそうな大学のナンバーワン」に選ばれたが、任期制、年俸制、評価制度の導入で教育に熱心な経営姿勢が評価されたものだろう。

さらに、任期制を原則としながらテニュア(終身在職権)制度を導入している英米の大学制度は、導入を検討するに値する。テニュア制度とは、教員の自由な教育研究活動を保障するため、教授昇格時に終身または定年までの教員身分を保障する制度だ。

大学教員の任期制、年俸制、テニュア制、相互評価を軸とした評価基準の導入は、国公立大学では、法律で強制すべきだと考える。私立大学についても、補助金算定にこれを考慮すれば、急速に拡大しよう。

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(2007年6月18日付け「日本経濟新聞」p27教育欄所収)

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