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エリザベス女王の崩御記念(Her Majesty Queen's Demise)~英国切手の魅力シリーズ72~

 エリザベス女王は2022年9月8日(現地時間)、スコットランドのバルモラル城で息を引き取った。享年96歳。

 これを記念して、女王の肖像写真4枚の切手が、11月10日に発行された。この4枚は、2002年にゴールデン・ジュビリーの記念切手として発行されたものと同一で、今回は切手の上端部に「1926-2022」と在位期間を追加記載しただけである。

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 左上(2nd)は、ドロシー・ワイルディングが1952年に撮影した王位に就いたばかりの若い女王で、エレガントに仕上がっている。

 右上(£2.55)は、1984年にユスフ・カーシュが撮影したショットで、柔らかな笑顔と自信に満ちた様子でカメラを見つめている。

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 左上(1st)は、1968年にセシル・ビートンが撮ったもので、先を見つめる成熟した女王像となっている。

 右上(£1.85)は1996年にティム・グラハムによって撮影された。笑顔の顔立ちの女王である。

 女王は父ジョージ6世が急逝したため、25歳の若さで英国の君主となった。君主として威厳を保つための「公」の顔と、国民から親しみをもってもらう「私」の顔の2つを使い分けてきた。

 女王は「王室外交」に力を入れ、国際政治の重要な局面で大きな役割を果たしてきた。「和解」「平等」という価値観を掲げ、英国内の強い反発の中で敵国・日本の昭和天皇と交流し、また、当時のサッチャー首相と対立しても、南アフリカのアパルトヘイトの撤廃に尽力した。

 大英帝国時代の旧植民地としての暗い歴史を持つアフリカ諸国、1世紀にわたる憎しみの歴史が続く隣国アイルランド、そして敵国だった日本などとの和解。そこには、実権は持たないながら、歴史的局面で大きな影響力を持ってきたエリザベス女王の存在があった。

 英国政府の最大の「切り札」としての自分を冷静に自覚しながら、ここぞというところで歴史を動かしてきた彼女の人生から戦後の世界の歴史が見えてくる。

 女王が亡くなったバルモラル城は、スコットランド東部のアバディーンシャー州にあり、王室の離宮として、王室一家が毎年夏の避暑地に使用されてきた。この城は1852年に30,000ポンド支払って英王室が所有権を買取り、王室にふさわしい宮殿に生まれ変わらせた王室私有財産である。筆者はチャールズ皇太子の招待パーティーで、この城を何度か訪れた。

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