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バッキンガム宮殿 ~英国切手の魅力シリーズ~(4)~

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   19世紀初頭に活躍した建築家・John Nash1752年~1835年)によって設計された壮麗なバッキンガム宮殿の変遷と内部の4室をデザインした10枚の記念切手が20144月に発行された。

  上部下段・右端は1702年に建てられたBuckingham Houseで、これはバッキンガム公ジョン・シェフィールドが邸宅として購入した粗末な居宅であった。中央は1714年の改造後、左端は1819年のものである。1825年からナッシュが12年かけて建替えに着手、1837年に即位したヴィクトリア女王がここに居を移した。上段右端は完成後の1846年、中央が1862年の外観である。1913年には外壁と屋根のデザインが大幅に改造され、左端が2014年現在の姿である。

  下部の内装4枚は、宮殿内に775室ある中から、The Throne RoomThe Grand StaircaseThe Blue Drawing RoomThe Grand Drawing Room4室が紹介されている。これらの部屋の内装はナッシュが設計したデザインが当時のまま残されている。

   バッキンガム宮殿はエリザベス女王の公邸であると同時に国家的な行事の中心でもある世界でも数少ない執務が行われている王宮の一つである。バッキンガム宮殿の内部は永きにわたって一般人には非公開であったが、1992年に女王が週末を過ごすウインザー城が火事で損壊したため、その修復費を賄うために翌年から一般公開された。ただし、公開は女王がスコットランドのパルモラル宮殿で過ごす夏場の7~9月に限ってState Roomと呼ばれる国賓室、叙勲などに使われるThrone Roomほか19室が対象となっている。

   筆者に在英中には前庭での衛兵の交代を外から眺めることができただけであったので、公開直後に早速観に行った。在英中には英皇室の夏の離宮であるパルモラル宮殿をチャールス皇太子の招きで訪れたが、これは260平方キロ米の広大な敷地に建てられた重厚な造りで、狭い街中のバッキンガム宮殿とはまったく異なった趣があった。

  バッキンガム宮殿を設計したナッシュは破産と離婚を経験した後、1798年にはジョージ4世のの愛人と言われた女性と再婚して再起、宮廷都市計画家として成功した。ロンドンの中心部にあるリージェント・パーク界隈の開発はナッシュが60歳を過ぎてから情熱を傾けて完成させた壮大な建造物群である。

  ナッシュはリージェント・パークを囲んで同じ色の化粧漆喰仕上げのファサードを持った宮殿のような広大なテラス・ハウスを建築した。筆者はロンドン在勤の8年間Chester Terraceという1825年に建てられたこのナッシュ・ハウスの1軒に住んでいた(下掲)。この邸宅は280米にわたり42軒が一連の長屋として連なり、すべて地上4階・地下1階で各戸内にエレベーターが付いていた。朝はかつかつと蹄の音を響かせてリージェント・パークを駆け巡る乗馬のギャロップの音で目が覚めるという田園的な雰囲気に包まれた豪邸であった。

 

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