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ユーロトンネル(英仏海峡トンネル) ~英国切手の魅力シリーズ(33)~ 

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   1994 5月に英国とフランスを結ぶChannel Tunnel(英仏海峡トンネル)開通を記念する記念切手4枚が発行された(上掲)。このトンネルは運営会社の名前を採って、ユーロトンネルと呼称されるのが一般的である。

  左側の2枚は、British Lion(英国のライオン)とFrench Cokerel(フランスの雄鶏、右側は左右の両手が、英仏海底トンネルの中央部で結び合った情景のイメージ図である。

  ユーロトンネルの掘削は1986年に着工し、1990121日に貫通、199411月に運行を開始した。

   このトンネルは直径7.6米の鉄道トンネル2本とその真中にある直径4.8米のサービス用トンネルの3本から成り、3本のトンネルを繋ぐ連絡通路が各所に設けられている。自動車用の道路はなく、シャトル列車に車を載せて運ぶ方式を採っている。

海底部の総距離では青函トンネルを抜いて世界一の37.9キロ、陸上部を含めた全長は50.5キロで、スイスのゴッタルド・ベーストン・トンネル、青函トンネルに次いで世界第3位の長さとなっている。

一般乗客用のユーロスターは英国のフォークストンとフランスのカレー間を35分で結び、ロンドン―パリ間やロンドンーブラッセル間を乗換えることなく直行する列車が運行されている。ロンドン―パリ間の所要時間は2時間45分で、格安チケットは6,000円ほどで買える。飛行機の所要時間は1時間であるが、市街地から空港への所要時間などを加えると最低4時間は掛かるので、列車の方が早いケースが多い。昨年にはユーロトンネルを通過した年間乗客者数が1,000万人、車両数は4百万台を超えた。

ユーロトンネルの保守管理を担当するGroupe Eurotunnel SEは、英仏双方に設立された運営会社の持ち株会社で、パリに本社を置き、パリ市場に上場されている。トンネルを通過する列車はユーロ・トンネル社に列車1本当り平均で3,000ポンドまたは4,500ユーロの線路使用料を支払う。

ユーロトンネルの経営は操業18年目に黒字に転換して以降、最近は極めて順調である。昨年度は1億ユーロの純益を挙げて、株価も堅調である。

  

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ユーロトンネルの建設総要資は100億ポンドと当初予想の2倍に膨れ上がり、その20%が株式発行、80%がシンジケート・ローン借入で賄われた。操業開始当初は客足が伸びず、大幅な赤字で、操業開始後わずか3年で債務不履行に陥った結果、銀行借入80億ポンド(当時の為替レート換算で約1.7兆円)の1/2を当時は無価値の株式への転換が強制される債務のリスケジュールが行われた。残存貸金も簿価の2~3割で売買され、シンジケート・ローンに参加した銀行の多くが巨額の損失を蒙ったのである。

このファイナンスは1986年にサッチャー首相とミッテラン大統領が両国ともに政府保証を付けない民間ベースの資金のみで賄うことを条件に承認したもので、将来の線路使用料収入のみで担保されるプロジェクトクト金融であった。

筆者の勤めていた銀行の分析では、このプロジェクトが見込む収益予測はあまりにも甘く、計画通りの返済は見込めないと判断し、このシンジケート・ローンには参加しない方針で臨んでいた。

ところが、サッチャー首相が来日して、中曽根首相や竹下蔵相に邦銀の参加を働き掛けたため、実質的には政府のバックアップがあるものと誤解して邦銀の大勢が積極参加を決めたため、筆者の銀行も金額を絞ってやむなく参加せざるを得ない状況に追い込まれた。

案の定、このローンは数年後には損切りを強いられ、シティーで盛大に国際業務を展開させてもらったお返しと割り切るしかない後味の悪い結末となった。 

 

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