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ミュゼオロジーと生涯学習 インタビュー課題のレポート

武蔵野美術大学芸術文化学科1年生の孫娘・後藤みらいが、大学で履修中の「ミュゼオロジーと生涯学習」という授業の課題で、生涯学習を実践している人とインタビューをしてレポートをまとめるように求められました。

「ミュゼオロジー」は博物館や美術館の社会的機能、運営、活動などを対象とする学問・研究領域で、具体的には学芸員やキューレターの育成を目標としています。

孫の廻りには、これに適した人物が見当たらないので、身近な所にいて気の置けない祖父の私に白羽の矢が立てられた次第です。

私の生涯学習が孫から評価されましたのは名誉なことですので、以下にレポートの全文を原文のまま掲出します。

 

ミュゼオロジーと生涯学習 インタビュー課題

1年A組17番 後藤みらい

 

私はこの課題に最も適した大物として、私の祖父を選んだ。その理由は、私の祖父は飽くなき探求心のもと、長年、多岐にわたる分野に関する知識を集めていて、知識欲の塊と言えるからだ。国際経済、資本市場、医療経済、地質鉱物学などの幅広く多様な分野において見識かあり、多くの論文を発表している。私は、そのようにアウトプットをするためには、それを上回るインプットがあるはずと考え、どこから情報を得ているのか疑問に思い、質問してみた。

祖父は、月に本を20冊、雑誌を数冊読み、ネットは一日1時間くらい利用する。人の話も情報源であり、講演会や研究会に週4回は行く。しかし、インプットは量ではなく質であり、物事を批判的に見ることが大事であると、祖父は言った。また、祖父は、学ぶことと習うことはまったく違うもので、学ぶごとは自発的なやる気に重きを置くべきという考えを念頭におき、論語学而編の「学びて時に此れを習ふ」にもあるように、見識を深めるため、上で述べたような学びを生活の一部として長年にわたって続けてきた。私はなぜ、このような学びを長年、続けられるのか、その原動力は何かと疑問に思い、聞いてみた。

それに対して、祖父は、高貴な者にはそれ相応の義務があるというノーブレス・オブリージュの精神が根底にあり、世のため人のために、何かをしなくてはならないという使命感が、日々の学びの原動力となっていると答えてくれた。また。祖父は、学ぶためには健康が大事な要素であると言い、体の健康の維持のためにゴルフをし、頭のスポーツとして碁を習慣的にしている(ちなみに碁は先日、五段となった)。祖父は常に問題意識は持っているが、日本で祖父しか研究していない分野が多いため、それらの分野の人から祖父のアレンジする能力が買われ、問題を見つけてほしいと頼まれることが多く、79歳の今でも世のため人のために奔走している。

  今回の課題から、私か学んだことは、外部の価値観の押し付けに負けず、自分の興味の赴くままに、知識を収集したり、経験を積んだり、思索に耽る大切さである。私は、自意識過剰という病に苛まれている。他人の目から逃れられず、そればかり気にし、意識のすべてがそれに取りつかれているが、今回の課題で一瞬、冷や水に打たれたように、我に返ることができた。自意識が氾濫することにより、他人からどう見られているのか、他人の価値観では自分がどう映っているのか、ばかりが気になり、体の末端から他人の意識に自分の体が乗っ取られていくようで、身動きが取れなくなる。心の中で、雑念が蠢くのを止められなくなり、また、それに支配され思考停止となる。

すると、世界全体から、自由に考えて動く余地がなくなり、世界が狭く貧しいものに変わってしまう。自意識が過剰になるのを抑え込める唯一とも言える方法は、何かに夢中になることである。そのため、何かに夢中になることが、人生を駆け抜けるうえで、重要な鍵となると言える。再び不安や雑念が蔓延る前に心を無にし、何かに没頭する必要があると強く感じた。祖父の場合は、それを無意識に知っていて、目の前の問題や課題に没頭できるのが、祖父の才能なのかなと感じた。

「勉強」の定義はあまりにも相対的である。そのため、長年、あることを続けてきて、それが他人に認められて、実に成るのは数少ない幸運なケースである。それらの特異なケースを授業ではとり上げるために、生涯学習が必ず成功に繋がるような幻想を抱かせるのだと、私は、正直、思っていた。しかし、その考え方は、他人の目を気にし、それに染まった、そもそも間違ったものであったことに気づかされた。

生涯学習は打算や要領などからまったく無縁のところにあるものである。また、我々は気が付いたらしていた、などというもっと直感的で衝動的な行為の積み重ねで生じるものを、生涯学習の産物として認知しているのではないのかと思った。授業全体を通して、ちょっとだけ、生涯学習が何たるかが見えた気がした。

 

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